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2020年08月27日

バリアフリー法って?知っておくべき法律や制度のポイント

木田 樹

日本には、ユニバーサルデザインやバリアフリーに関係する法律や制度があります。
直接関わったことがない限り、法律のことを知る機会は少ないかもしれません。

今回は法律や制度のポイントをもとに、障害者への対応を紹介します。

すべての基本は障害の社会モデル

障害の社会モデルという言葉をご存じでしょうか。
障害の社会モデルとは、障害は人ではなく社会にあるという考え方です。

例えば、車いすユーザーがお店に入りたいけれど、入口に階段があり入店が難しい場合。

写真 車いすユーザーがドアの前で困った顔をしている

 

お店に入れないのはなぜでしょうか。
「歩けない」という機能の障害によるものでしょうか。

そうではなく、「お店の前に階段がある」といった社会に存在するバリア(障壁)が原因であると、捉えることができます。

このように、「障害は人ではなく社会にある」という考え方が、障害の社会モデルです。
今回ご紹介する法律や制度は、障害の社会モデルに則って施行されています。

それでは、ここからいくつかの法律についてみていきましょう。

1.バリアフリー法

正式名称は、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」と言い、従来のハートビル法と交通バリアフリー法を一体化させたものです。
2006年に施行され、東京オリンピック・パラリンピックに向け、2018年に一部改定されました。

この法律では、高齢者や障害者が建物や交通機関における移動を円滑にするため、利用者数や施設の規模により、駅や空港・ビル・ホテル・飲食店など、様々な施設でハードとソフトのバリアフリー化が義務づけられています。

さらに2018年の改正では心のバリアフリーが国民の責務となりました。

これにより、アクセスの利便性が上がり、また適切なサポートを受けることができる施設が増えています。
街に出やすくなることで、高齢者や障害者が外に出る機会が増えることにつながるのです。

 

2.障害者差別解消法

ソフト面のバリアフリーを実現する法律として、障害者差別解消法が施行されています。

障害者手帳の有無にかかわらず、障害があり生活に制限を受けている人に対して、行政機関や民間事業者(非営利団体含む)は以下の対応をとる必要があります。

表 不当な差別的取り扱いの禁止について、行政機関・民間業者ともに義務。合理的配慮の提供について、行政機関は義務。民間業者は努力義務。

 

この法律には、

・不当な差別的取扱いの禁止
・合理的配慮の提供

という、2つのキーワードがあります。
ひとつずつご紹介します。

①不当な差別的取扱いの禁止


障害があるから
というだけで、サービスの提供を拒否・制限・条件を付けたりする行為は、不当な差別にあたる場合があります。

行政機関・民間事業者ともに、不当な差別をしないことは義務となっています。
いくつか例を挙げてみましょう。

▶障害があることを理由に、窓口の対応を拒否する
▶障害があることを理由に、事業への参加を拒否する
▶介助者の同行を入店の条件とする

②合理的配慮の提供


障害者から、社会に存在するバリアに対してサポートを必要とする意思表示があった場合に、事業者の負担になりすぎない範囲で、必要かつ合理的な配慮を提供することです。

差別の禁止と異なり、行政機関は義務ですが、民間事業者は努力義務となります。
例えば、配慮としては以下のようなものがあります。

▶段差があるから、車いすユーザーの介助やスロープの設置に取り組む
▶視覚障害者を誘導する
▶聴覚障害者が希望したコミュニケーションツールを用意する(筆談・手話等)

写真 筆談をしている

 

バリアは人により異なり、どのような配慮が適切かは場合によります。
完全なマニュアル化はできず、希望している本人と向き合うようにしましょう。

もし、希望に対して負担が大きすぎる場合は、なぜ負担が大きいのかを説明し、別の方法を提案することも考え、理解を得ることが重要です。

 

まとめ

ここまで、障害がある方を取り巻く法律や制度について紹介しました。
一人一人の意識が変化することで、障害者を含む、すべての人々が過ごしやすい社会が実現します。

お伝えしたポイントが、障害がある方への理解をより深めていただくきっかけとなり、
今後の生活や仕事においてもお役に立つと幸いです。

 

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