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2021年02月17日

荒野に道を編む「点字ブロック」

藤原 修

点字ブロックは道しるべ

障害のない方が街へ出るときは、市街図の看板や案内表示、信号等、方向を示す「配慮」が十分になされています。しかし視覚に障害のある方の中には、それらだけでは安心して移動ができない方もいます。そんな中、視覚に障害のある方が頼りにする点字ブロックは、まさに道しるべです。

点字ブロックが世界で初めて岡山県内に設置され、半世紀を超えました。今では、視覚に障害のある方の安全な歩行を支える「道しるべ」として海外にも活用が広がっています。

点字ブロックが誕生したのは1967年。岡山の発明家、三宅精一さんが考案し、県立岡山盲学校近くの交差点に設置されたのが始まりです。

1970年に大阪市のJR阪和線(旧国鉄)我孫子町駅のホームに設置されたのをはじめ、全国の施設にも普及。国土交通省によると、現在は省令で道路や駅など必要な場所への設置が定められています。

2001年には進行方向を表す「誘導ブロック」横断歩道や階段など危険箇所での注意を喚起する「警告ブロック」の2種類が日本工業規格(JIS)として規定されました。

写真 誘導ブロック

誘導ブロックの写真

写真 警告ブロック
警告ブロックの写真

まだまだ不足している!?

このように、視覚に障害のある方の「道しるべ」となった点字ブロックですが、まだまだ案内が不足している状況は続いています。特に課題となるのは、「室内」の案内やガイドです。

施設などの室内において、インターフォンやインフォメーション前までは点字ブロックが設置されています。まずは受付等にたどり着けるかが重要になりますが、ショッピングモールなどのように、広範囲にわたり移動をする場合は移動が困難なケースがあります。かといって、室内に点字ブロックを敷き詰めればいい、という話でもありません。

点字ブロックの凸凹により、ベビーカーや車いすのキャスターが取られたり、台車やキャリーケースにあるキャスターの通行時の音が問題になることがあります。

また点字ブロックの黄色い色が、室内では目立ちすぎて、インテリアに調和しないことがあります。一方で床の色と点字ブロックのコントラストが確保できなくなると、つまずきや転倒等の危険も発生します。

あちらを立てればこちらが立たずと言った事態の解消方法は無いものでしょうか?
そして、それらを理由に点字ブロック自体を設置しないという施設もあり、視覚に障害のある方は困っています。

近年、このような課題を解消する製品づくりも行われています。

その製品のひとつが、「HODOHKUN Guideway」です。

HODOHKUN Guidewayは、視覚に障害のある方が白杖を使ってやわらかいマットを確認し、目的地にたどり着ける、歩行誘導ソフトマットです。

弱視の方も認識しやすいカラー展開のため、周囲とのコントラストに関する問題も解決します。

設置した際に周囲がスロープ状になるため、車いすやベビーカー、ハイヒールでもスムーズな通行が可能となります。

写真 マットの上を車いすが通る様子 写真 暗い色の地面に赤色のマットを敷いている様子

歩行誘導ソフトマット敷設のメリット

設置された方向へ静かに視覚に障害のある方を案内し、キャスターの通過もスムーズで静かです。さらには室内でも一人で移動できる可能性が高まります。

既存の床の上に両面テープで固定するため、専用工具などは不要で、施工が簡単なことも特徴の1つです。

取付が簡単なため、福祉避難所に指定されている施設では、用意をしておくことでいざという時に対応することが出来ます。


◇「HODOHKUN Guideway」について詳しくはこちら

 

あとがき

道のない荒野に一人立つことを想像してみてください。

どこに行ったらよいか、途方に暮れると思います。

もし道があったとしても、行き先が無かったらそれも安心してその道を行くことはできません。

道案内が大切なことであることは皆さんもご存じの通りですが、そのことを吉田兼好(鎌倉時代)がその有名な随筆「徒然草」(~つれづれなるまゝに、日くらし)に、記述しています。

その、徒然草(第五十二段 石清水八幡)にこんな言葉があります。
「すこしの事にも、先達はあらまほしきことなり。」
こんな話の締め言葉です。

仁和寺というお寺にいるお坊さんが、年をとるまで石清水八幡宮という有名なお寺に参拝したことがなかったので、思い立ってひとりで参拝してみます。石清水八幡宮は山の上にあるのですが、そのお坊さんはふもとの極楽寺や高良というお寺に参拝して、これが石清水八幡宮だと勘違いして帰ってしまいました。

帰ってから同僚に、「長年八幡宮を拝みたいと思っていたのを、ついに達成しましたよ。聞いていた以上に素晴らしかったです。しかし、参拝していた人がみんな山に登っていたのは何かあったんでしょうかね?気になったのですけど、お参りすることが本来の目的なので、山までは行きませんでした。」と話したのだそうです。

そこで、「すこしの事にも、先達はあらまほしきことなり。」

「些細な事であっても、ガイドや導く人が必要ですね。」とのことです。

道があっても、情報が無ければ、目的を果たせないとの逸話です。

「先達」は、現代の観光ガイドさんですね

しかし、だれもがガイドを雇える訳でもなく、通信機器の無い時代には、旅人や商人が安心して旅ができる、目的地に誘導する方法が考え出されました。

それがビジネス用語にもなっている「マイルストーン」(一里塚)です。マイルストーンは、ローマ帝国が、主要な街道に1ローマ・マイル(1000歩)ごとに設置したのが始まりとされます。アッピア街道にはそれが現在でも残っています。

一里塚は、江戸幕府が全国の主要街道に、一里(およそ3.9キロメートル)ごとに道の両側に塚を築かせ、その上に、主に榎(エノキ)の木を植えさせました。街道を旅する旅人にとって一里塚は、旅の長い道のりの目安となり、関東では板橋区志村一里塚が移設されずに中山道の当時の姿を残しています。

点字ブロックはまさに、マイルストーンですね。

誰もが安心して目的地にたどり着くため、必要なものです。

写真 一里塚の目印
写真 志村一里塚
「HODOHKUN Guideway」について
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