株式会社三菱UFJ銀行は、企業市民としての自覚や多様性理解、社会貢献の意識を育むため、新入行員を対象にした研修「コーポレート・シチズンシップ・プロジェクト(以下、CCP研修)」を実施しています。
近年、企業における多様性の推進や人的資本への投資が注目される中、同社ではDEIの推進を人的資本経営およびサステナブルな社会の実現に向けた重要な経営戦略と位置付けています。
CCP研修は、新入行員が法人営業・窓口業務・本部業務など多様な職種で活躍する前に、自身の価値観を見つめ直し、多様な社会や顧客のニーズに応えるための基盤を築くことを目的としています。
635人の新入行員を対象に午前と午後の2部制で実施され、会場には最先端の研修設備を備えた「MUFGグローバルラーニングセンター(神奈川県横浜市)」が使用されました。
今回の取り組みについて、人事部のご担当者さまにお話を伺いました。
新入行員635人が参加した「体験型の多様性研修」
株式会社三菱UFJ銀行
ユニバーサルマナー研修導入の背景と狙い
聞き手
今回、ミライロのユニバーサルマナー研修を導入した背景には、どのような課題や狙いがあったのでしょうか?
本研修は2006年から実施しており、高齢者施設や保育施設でのボランティア活動を通じて、多様性に触れる機会を提供してきました。今年度は実施方法を見直し、ミライロが提唱する「ユニバーサルマナー(※)」の考え方を取り入れたプログラムに変更。
※ユニバーサルマナーとは、障害の有無や年齢、国籍にかかわらず、すべての人と向き合うために必要な“マインドとアクション”を身につけるための考え方です。

今回の研修では、さまざまな立場や背景を持つ方々の困りごとやニーズに関する気づきを得ながら「体験を通じて学ぶ」ことを大切にしました。
自身の思い込みや無意識の偏見に気づくこと、そして年齢や国籍、性別、障害の有無といった多様性を理解し、尊重しながら、誰に対しても適切な対応ができる人になってほしい──そんな思いを込めて、ミライロと一緒に今回の研修を設計しました。
自身の思い込みや無意識の偏見に気づくこと、そして年齢や国籍、性別、障害の有無といった多様性を理解し、尊重しながら、誰に対しても適切な対応ができる人になってほしい──そんな思いを込めて、ミライロと一緒に今回の研修を設計しました。
他者の立場に気づく体験を重視
聞き手
具体的な研修プログラムの内容について教えてください。
ミライロに依頼した研修パートは「座学による基礎研修」「体験型の実技研修」、そして「カスタマージャーニーマップ作成ワーク」の3部構成となっています。
① 基礎研修|人との違いを知り、多様な人々との向き合い方を学ぶ
基礎研修では、新入行員が自分とは異なる価値観や背景を持つ人々の存在に気づき、多様性を正しく理解することを目的に構成されています。講義やグループワークを通じて、日常生活では気づきにくい偏見や固定観念を見つめ直し、多様な視点を学びました。

② 実技研修|体験を通じて、適切なサポートを考える
実技研修では、障害のある方や高齢の方が日常生活で直面する不便や制約を模擬的に体験するプログラムが実施されました。車いすの操作方法や視覚障害のある方の誘導方法など、実際に身体で感じることを通じて「相手の立場に立つとはどういうことか」を考える貴重な機会となりました。
実技研修では、障害のある方や高齢の方が日常生活で直面する不便や制約を模擬的に体験するプログラムが実施されました。車いすの操作方法や視覚障害のある方の誘導方法など、実際に身体で感じることを通じて「相手の立場に立つとはどういうことか」を考える貴重な機会となりました。

③ カスタマージャーニーマップ作成ワーク|お客さま視点で気づきを深める
研修の締めくくりとして実施されたのが、「カスタマージャーニーマップ」の作成ワークです。お客さまが銀行サービスを利用する際の体験プロセスを“見える化”するこの手法を用いて、お客さま視点で課題を洗い出し、自分たちで解決策を考えるワークショップに取り組みました。視点を変えて物事を見る力を育む、実践的な学びの場となりました。

「当たり前」に問いを立てる
聞き手
研修を通じて、どのような変化や気づきが生まれていたと感じていますか?
実際に研修に参加した新入行員からは、気づきや変化を感じたという声が多く寄せられました。実際の声を一部ですがご紹介します。
<新入行員の声>

今回学んだのは、配慮が必要な方への対応の一例に過ぎないということ。多様性やバリアフリーへの理解が進む中で、機械的な対応にならないよう、相手の意向を汲み取った柔軟な対応が求められると感じました。

障害のある方や高齢の方の視点に立った体験を通じ、日常生活の困難さとサポートの難しさを実感しました。サポートは過剰でも無関心でもなく、相手の声に耳を傾け、求められる支援を見極める姿勢が大切だと学びました。

今後、行員として多様なお客様に対応するためには、今回学んだような知識や内容をまずは行員全員がしっかり理解することが店舗、会社全体として障害のある方や高齢の方に寄り添った対応につながると感じました。
自分とは違う誰かの視点に立ち行動できる人へ
聞き手
今回の研修を通じて新入行員の皆さんにどのような意識や行動の変化を期待していますか?

株式会社三菱UFJ銀行 人事部の皆様 (左から 土屋様/吉川様)
人に寄り添い、社会に貢献する姿勢は、銀行員の前に社会人、一人の“人”として求められることです。当然、これから銀行員として業務するうえでも、欠かすことのできない資質のひとつだと考えています。金融機関は、単に商品やサービスを提供するだけでなく、地域や社会とのつながりの中で信頼を築き、より良い社会の実現に貢献する責任があるからです。
今回の研修では、そうした意識を育むために、知識の習得にとどまらず「体験を通じて感じ、考える」プロセスを重視しました。自らの価値観を問い直す機会は、新入行員一人ひとりの心に深く残ったのではないかと思います。
他者の立場に立って物事を捉える力は、日々の業務はもちろん、チーム内でのコミュニケーションやお客さまとの信頼関係を築くうえでも、極めて重要です。今回の学びが、行内での具体的な実践につながっていくことを、大いに期待しています。
今回の研修では、そうした意識を育むために、知識の習得にとどまらず「体験を通じて感じ、考える」プロセスを重視しました。自らの価値観を問い直す機会は、新入行員一人ひとりの心に深く残ったのではないかと思います。
他者の立場に立って物事を捉える力は、日々の業務はもちろん、チーム内でのコミュニケーションやお客さまとの信頼関係を築くうえでも、極めて重要です。今回の学びが、行内での具体的な実践につながっていくことを、大いに期待しています。
聞き手
本日は貴重なお話をありがとうございました。