障害のある当事者が参画したユニバーサルデザインガイドを策定

野村不動産株式会社

野村不動産株式会社は、創業から60年以上にわたり、総合デベロッパーとして柔軟な思考で新しい事業への挑戦を続けています。

都市開発事業においては、大型オフィスビルだけでなく、中規模で高機能かつ高品質のオフィスビル「プレミアム・ミッドサイズ・オフィス(※以下、PMO)」、サービス付きの小規模オフィス、サテライト型のシェアオフィスなど、多様なオフィスのポートフォリオ戦略を積極的に推進しています。

今回、ミライロでは「PMO」のユニバーサルデザインガイド(以下、ガイド)作成をサポートいたしました。プロジェクトの内容や今後の展望について都市開発部門のご担当者にお話をうかがいました。

多様なビジネスニーズに応える次世代オフィスビル

聞き手

まずは「PMO」について教えてください。

PMOは中規模ながら大規模ビルに匹敵する機能性、快適性、デザイン性を兼ね備えたオフィスビルで、優秀な人材の確保、セキュリティ強化、事業継続計画など企業の多様なニーズに応えることを目指してスタートしました。

近年の感染症拡大や自然災害を背景に、企業が直面する経営課題はより複雑化しており、PMOは社会環境の変化とお客さまのニーズに向き合い、質の高い働く場所と時間を提供し続けることを目指しています。

【公式】野村不動産PMO
画像_PMOイメージ素材

「使いやすい」から「使いたい」と感じられる施設へ

聞き手

プロジェクトを始動した背景と取り組みへの想いを教えてください。

本間様

(当時)
都市開発第一事業本部
技術管理部 技術課
本間 統 様

今回のガイド作成の背景には、野村不動産グループのダイバーシティ&インクルージョン方針の存在がありました。

「事業活動を通じて社会の多様化したニーズにお応えしていくために、社内外のさまざまな属性の人々が参画し、多様な視点を活かす取り組みを推進し、まだ見ぬ価値を創造する」。これらの方針や考え方は、ユニバーサルデザインの重要性を再認識する契機となりました。

方針を具体化する商品計画において、ユニバーサルデザインの原則を踏まえ、「当たり前にこうする」「ここまで工夫する」といった、知識や経験から得られる暗黙知を明確化して、組織全体で一貫した価値を創出することに課題がありました。

これらの課題を解消するために、プロジェクトメンバーとの議論や障害のある当事者からのユーザーインタビューを通じて得た気づきをもとに、組織共通の理解を築くためのガイドを作成することにしました。

ガイドの作成により、ユーザーの満足度とブランド価値の向上を図りながら、ただ「使いやすい」だけではなく、「使いたい」と感じられるオフィスビルの実現を目指しました。

使ってもらえるユニバーサルデザインガイドにするために

聞き手

ガイド作成にあたって、大変だったことはありますか?

今回のプロジェクトは従来の枠組みを超えた挑戦でした。核心にあったのは、成果物を先にイメージし、その実現に向けた手順を計画するアプローチ。

単に「こういうものができた」というプロセスではなく、「どういうもの(ガイド)が必要か?」を社内で探求しました。プロジェクトの進行には調整の難しさが伴い、方針が何度も変更される中で、手戻りが大きな課題となりました。

プロジェクトを進めるにあたり、どこまで対応できるかは、最初は私も手探りでした。逆に、ミライロから見れば、「どういったガイドが求められているのか」を探る必要があったと思います。

ガイドが完成したとき、経験豊富な人は意図を理解できたとしても、経験が浅い人は理解が至らず、図面への反映がされないのでは意味がありません。そのため、凡例やイラストなども用いながら視覚的に理解できるように工夫しました。

画像_ユニバーサルデザインガイド表紙画像_ユニバーサルデザインガイド構成

 

法令や条例の遵守を超えた努力を評価する仕組み

聞き手

プロジェクトを進めるうえで大切にした視点があれば教えてください。

ガイドは、法令等の基準だけではなく、インタビューなどで得られた、困りごとや望ましい状態を実現するための配慮や対応の選択肢も盛り込みました。だれがどのようなことに困るのか、なぜ必要なのかなど、利用するユーザーをイメージすることができ、気づきを得られることが重要だと考えたからです。

画像_配慮事項の基準

ガイドは、法令等の基準だけではなく、インタビューなどで得られた、困りごとや望ましい状態を実現するための配慮や対応の選択肢も盛り込みました。だれがどのようなことに困るのか、なぜ必要なのかなど、利用するユーザーをイメージすることができ、気づきを得られることが重要だと考えたからです。

そして配慮基準は、法令として遵守しなければいけない「必須レベル」から、さらに「準必須レベル」、「望ましいレベル」、「より望ましいレベル」に項目を分けました。これらの基準は、従来の点数化システムを避け、「Goodボタン」という形で表現しました。

そうすることで、努力の度合いを「Good」の数で表すことができ、「おぉ、よく頑張った!」という評価を視覚的に示すことが可能になりました。法令や条例を遵守するだけでなく、それを超えた努力が評価されるよう工夫した結果です。

たとえば、「スロープの勾配を法令よりも緩やかにする」といった取り組みは、Goodボタンの数で評価されるようにすることで、ガイドを受け入れやすく、かつ、使われやすい形を模索しました。

結果的にガイドは、当初予想していた倍以上のボリュームになりました。プロジェクトメンバーをはじめ、関係者の皆さんのより深い洞察と協力によって、価値ある成果物に仕上げることができました。

障害のある当事者との対話から関係部署の理解が向上

聞き手

プロジェクトを通じて何か変化はありましたか?

野村不動産ホールディングス内で、こうした取り組みにおける役員の理解は進んできています。ただ、それが各部署に行き渡っているか?というとなかなか難しいです。まだまだ時間をかけて取り組んでいかなくてはならないという気がしています。

しかし、業務施設やオフィスビルなどに関係するメンバーの意識は少しずつ変わってきている実感を得ています。ミライロに協力いただいて、障害のある方にさまざまなお話を伺う機会を設けた場には、技術管理部だけじゃなく、建築部、ビルディング事業部のメンバーも来てもらい、体験してもらったり、実情を知ってもらったりしました。こうした活動を通じて少しずつ理解の土壌はできつつあります。

画像_フィールドワーク

 

職場環境の快適性に対するニーズが高まりを実感

聞き手

今後に向けて取り組むことがあれば教えてください。

いま障害者雇用や職場環境の快適性に対するニーズが高まっています。これは不動産業界に限らず、高齢化や多様化が進む中で社会全体の傾向と言えるでしょう。例えば、障害のある従業員が多い企業からは「このビルは障害のある方も働きやすいか?」といった問い合わせが入ることもあります。
このようなニーズに応えるためには、私たちも適切な対応を検討しなければなりません。入居を希望する企業からの要求も年々高まっており、可能な範囲での取り組みが求められています。
今後は、完成した図面に対して「ここをもう少しこうするといいですよ」といったご意見をミライロからいただくような関わり方など、これからも一緒に仕事をしていけたらと思います。

本間様

最後になりましたが、今回のプロジェクトはメンバーに恵まれたと思っています。とても仕事がやりやすかったです。

建設的な議論が行え、また障害のある方との出会いも含めて、私自身、今までなかったような経験をすることができました。

今後も、このような取り組みの輪を社内外に広げるなど、引き続き尽力していきたいと思います。

聞き手

本日は貴重なお話をありがとうございました。