“細部”こそ大切に。――多様な方々が、本当にくつろげる場所を目指して

株式会社デベロップ

これまでにない新たな価値を創造する建築として注目が高まる、コンテナ型モジュール建築(コンテナハウス)。2007年に創業した株式会社デベロップは、そのリーディングカンパニーとして、住宅から店舗、大型施設まで様々な用途の建築を展開しています。

千葉県長生郡一宮町にある、コンテナ型モジュール建築のホテル「Casual Resort COFF Ichinomiya(以下COFF)」では、2018年8月3日の開業一周年前に、ミライロの監修のもと、ユニバーサルデザインの視点を取り入れたバリアフリー対応ルーム3棟とカフェスペースを増築し、多様なお客様が快適に過ごせる施設づくりを実現しました。

取組みのきっかけや、取組みの内容について、デザイン担当の亀田様にお話をお聞きしました。

ユニバーサルデザインの視点を、施設づくりに

COFFの全体写真

COFFの全体写真

亀田

従来のCOFFの客室は、コンテナモジュールを2段に積み上げたタイプだったため、客室内の移動に階段の昇り降りが生じ、車いすユーザーやご高齢の方にとっては不便でした。
今回増築した客室は、幅広い年代の方にご利用いただけるように1階建てとし、設計にバリアフリーを取り入れました。部屋を広くし、段差を解消するなど、できる限りの配慮は考えたものの、多様なお客様にとって、本当に利用しやすいのだろうか……と、不安も感じていました。

そんな時テレビで、ミライロがユニバーサルデザイン監修をした施設を見ました。そして、法律で決められた基準を満たせば良いというわけではなく、設計段階から当事者の視点を取り入れることが大切だと気づきました。放映後、すぐに「弊社のバリアフリー対応ルームを監修してほしい」とミライロへ問い合わせをして、取組みが始まりました。

“細部こそ”大切に

障害のある当事者モニターが施設調査を行う様子

障害のある当事者モニターが施設調査を行う様子

亀田

監修いただく前は、「安全を確保するために、動線には手すりがあった方が良い。お風呂には腰掛けスペースを設置した方が良い」と、使用イメージを想定しながら、設計を進めました。しかし、バリアフリーの設備が多くなれば病室を連想する方もいるのではないか、この空間で本当にくつろいでもらえるだろうかと不安もありました。
“安全”と“くつろぎ”のスペースを両立するのは難しいかもしれない……。そう思っていましたが、ミライロと打ち合わせをする中で、少しのデザインの工夫で両立できることを知りました。また、オープン前に障害のある当事者の方に施設調査をしていただき、アドバイスをもらうことで、疑問点をすぐに解決することができました。

機能性とデザイン性を両立した新たな空間

亀田

アドバイスを活かして、以下のような設備を取り入れました。
機能性はもちろん、デザイン性も追求し、多様な方々が快適に過ごせるような工夫があります。

[1]お風呂
完成したバスタブと手すりの画像
▲湯船で立ち上がる際に使える手すりを、窓際のデザインに調和するようにしました。

画像 車椅子ユーザーがシャワーを持つ様子
▲シャワーの位置は、手が届きやすいよう手前に設置しました。

シャワーヘッドの拡大画像
▲シャワースイッチは、握力の弱い方でも、簡単にON/OFFしやすくなっています。

[2]洗面台
画像 洗面台を利用する様子
▲洗面台のシャワーは、握力が低下している方でも顔が洗いやすいよう、蛇口が伸びるタイプに変更しました。

画像 車椅子ユーザーが洗面台を利用する様子
▲洗面台下は車いすで近づきやすいように奥行があります。

[3]ベッド
画像 車椅子ユーザーがベッドへ移る様子
▲ベッド間の幅は、通常の2倍にして、移動や移乗がしやすいスペースを確保しました。

[4]ハンガーラック
画像 車椅子ユーザーがハンガーラックを利用する様子
▲ハンガーラックは、車いすユーザーも簡単に衣類をかけられるよう、高さを2段式にしました。

[5]照明スイッチ
画像 車椅子ユーザーが照明スイッチを押す様子
▲照明スイッチは、車いすユーザーも簡単に押せるよう、低めに設置しました。

試泊していただいたモニターさんからは、「調査で出た改善案を反映してくださったおかげで、ゆっくりくつろぐことができました」という感想をいただけました。

COFF一ノ宮から、憩いの場を広げていく

低めの高さの受付カウンター

低めの高さの受付カウンター

亀田

“多様な方々なお客様が、本当にくつろげる場を作りたい”という思いから、バリアフリー対応ルームの建築を試行錯誤で進めていましたが、今回、設計段階から障害のある当事者の視点を取り入れることができ、今まで想像したことがなかったアイディアを得られました。
COFFがある一宮町は、2020年の東京オリンピックのサーフィン会場となっています。国内外問わず様々な方々が訪れ、当ホテルも多くのお客様にご利用いただくことになります。COFFに泊まって良かった、また泊まりたいと思ってもらえるよう、今後は、ハード面はもちろん、ソフト面でのサービスの向上を目指し、お客様にくつろぎの場を提供していきたいです。
また、COFFを起点として、ユニバーサルデザインの視点を取り入れたコンテナハウスを、広く展開していきたいと考えています。