お客さま一人ひとりの声に、耳を傾け続ける企業でありたい

ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社は、カサつく肌のかゆみ治療薬として30年以上も愛用されている「メンソレータムAD」ブランドのパッケージを、2022年7月にリニューアルしました。

長年にわたり製品を使用されているお客さまも年齢を重ねておられ、加齢とともに容器のフタを開けづらくなってきたという、実際に届いた声がリニューアルのきっかけでした。

この問題を解決するため、製品評価のプロセスに上肢障害がある方々の視点を取り入れ、製品の試験を検討しました。

製品のユーザビリティを改善するために行なわれた今回のプロジェクトについて、製品企画管理部 容器包材開発グループのご担当者さまにお話をうかがいました。

きっかけは「フタを開けづらくなった」お客さまからの声

聞き手

30年以上のロングセラー製品を、初めて容器設計からリニューアルした背景について教えてください。

画像 新旧パッケージ比較

 

ロート製薬ではシーズン商品も多く販売しているため、大きく年に2回ほどリニューアルが集中する時期があります。製品によって5年〜10年、短い場合は1年ほどでリニューアルを行う場合があります。これまでは主に社員の協力を得てモニター試験を実施し、製品評価を行っていました。

しかし「メンソレータムAD」は、処方改良によって効果を高めたり、パッケージデザインをリニューアルしお客さまにわかりやすい特長をお届けするといった側面から、ブランド価値を高める改良は行なっていましたが、容器に関しては初代の容器でも滑り止めを搭載するなど、その当時の使いやすい設計を踏襲してきたこともあり、30年以上ものあいだリニューアルの機会が見送られていました。

製品の使い勝手に関して、お客さまから「欠かせない商品なのに、力が入らなくなってきて容器のフタを上手く開けられない」との声が届いたことをきっかけにリニューアルに向けたプロジェクトがスタートしました。

他にも「少しでも開けやすくなるよう、ふきんを使って開けている」「寝ている時に突発的に塗りたくなるが、寝ぼけながらだと開けづらいときがある」といった、こちらが想定していなかったお声もいただきました。

こうした声をもとに、だれもが使いやすい製品を目指して、容器や紙箱を担当するチームをはじめ、関連部門が一丸となってプロジェクトに取り組みました。

お客さま視点を突き詰めた、ユーザビリティ視点へ

聞き手

ミライロに依頼をした経緯や期待を教えてください。

他社の事例をみている際に、はじめてミライロの存在を知りました。その際にみた事例がお客さま視点でよく考えられており、他のメンバーとも関心し弊社から問い合わせました。

当初は、自社で介護支援センターなどに協力を仰いでヒアリングすることも考えましたが、介護する側の視点がメインとなるため、もっと利用者ご本人の声を詳しく聞き、理解したいと考えていました。

そのため、日常生活で不自由を感じている方の製品に関する「生の声」を聞くことができ、しっかりとしたデータを収集することができる会社を探すことになりました。

弊社の企画部門を中心に調査し、これまでのご実績、またユーザビリティへの知見や社会に向けた想いへの一致から、ミライロに調査協力を依頼することにしました。

ユーザビリティを共通言語に、細部へこだわり

聞き手

具体的にどのように製品のリニューアルを進めましたか?

これまでは中身の機能的な価値向上に注力し開発が進めてまいりましたが、今回はそういった点はもちろん、ユーザビリティにまで目を向けてリニューアルを行いました。

<容器開発から考えたリニューアルポイント>
①容器のフタの開け閉めや、箱の開封・解体が容易にでき、問題なく使用できること
②製品を工場で適切に製造でき、輸送時に箱が壊れないなど生産性および輸送適正をクリアできること

写真 容器のリニューアルについて話す担当者さま

容器においては握りやすく滑りにくい形状を追求しました。容器に丸みを持たせることで手のひらにフィットするようにし、開けるときに力を入れやすいようにフタを大きくして掴みやすくしました。

また、フタがすぐ開けられるように、ねじの構造自体を変更したことで、ひとひねりで開閉しやすいフタを作ることに成功しました。

紙箱は小さい力で開封しやすいように、押して開ける開口部を大きくしました。また、捨てるときに解体しやすい工夫もしています。一方で開けやすくすればするほど輸送時に箱が壊れてしまうことがあり、調整に苦労しました。

完成に向けて3Dプリンタを使用してさまざまな形状の試作品を作り、試作と輸送テストを何度も何度も行いました。試作段階から完成までの過程で、障害のある方の声も聞きながら細部まで妥協なく取り組むことができました。

金型や工場、輸送など関係者が多岐に渡ったことで調整は大変でしたが、このプロジェクトではメンバー全員がお客さまの使いやすさを最優先に考えて取り組むことができたことも良かったと感じています。

こうした取り組みを進めていく際は、物事を点ではなく、線や面で捉えて、取り組むことが重要かもしれません。

画像 新旧パッケージ比較

 

容器を変えたら、意識も変わった

聞き手

今回のプロジェクトを通じて感じたことがあれば教えてください。

今回のプロジェクトを通じて感じたことは、メンバーの意識が変わったことです。障害のある方がどのように製品を使っているのかを知り、試作段階や完成のタイミングで実際の感覚を聞くことを通じて、ユーザビリティを理解し、よりお客さま視点を追求したものづくりの大切さに気づかされました。

お客さまからお寄せいただいた実際の声からはじまったプロジェクトでしたが、障害がある方やご高齢の方に使ってもらえることは、すべての人の使いやすさにつながっていくことを実感しています。

販売後「大変開けやすいです。こんなに改良がされるんだと驚きました。」というお声をいただいた時は、本当にうれしかったですね。

写真 ロート製薬ご担当者さま2名

多くの社員の励みになりました。

自分で容器を開けられたときに、とてもうれしそうに話してくれたモニターさんの声が今でも忘れられません。

今後もロート製薬は、お客さま一人ひとりの声に耳を傾け続ける企業でありたいと思います。そして、一人でも多くのお客さまにより良い商品や価値をお届けし、ウェルビーイングな社会を創っていけるよう一層努力していきます。

聞き手

本日は貴重なお話をありがとうございました。