グループビジョン「でかける人を、ほほえむ人へ。」の実現に向けて

西武鉄道株式会社

西武鉄道株式会社では「サステナビリティアクション」のアジェンダの1つに「ユニバーサルデザイン対応」を掲げ、すべての方々がハード、ソフトの両面において、安全かつ安心して利用できるようにさまざまな取り組みを行っています。

その一環として、日々の駅業務に則した「ユニバーサルマナー検定(鉄道)」をミライロと共同開発しました。2023年3月から駅係員を対象に受講を開始し、ユニバーサルマナーの向上を図っています。

今回の取り組みについて、運輸部お客さまサービス課のご担当者さまにお話をうかがいました。

社会的要請が高まる中、駅係員の対応をどう充実させるか

聞き手

鉄道の利用シーンに即したユニバーサルマナー検定をミライロと共同で作成した背景と目的を教えてください。

西武鉄道担当者さま

企業に対する社会的要請は、時とともに多様化かつ複雑化しています。2024年4月には改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者においても合理的配慮の提供が法的義務化されます。

当社においても、バリアフリー環境が変わってきている中で、これらの変化を踏まえ、ハードの整備と並行して、特に駅係員の対応をどのように充実させていくかに課題を感じていました。

鉄道事業に特化したユニバーサルマナー検定で高いお客さま満足度を目指す

聞き手

既存の取り組みでは、変化に対応するのは難しかったのでしょうか

ユニバーサルマナー鉄道版ロゴ

西武鉄道では長年にわたり、他の資格取得を通じて駅係員向けの研修を行なってきました。これまでの資格も満足のいく、必要十分な内容でした。ただ、これから先を見据えたとき、多様化かつ複雑化するニーズに応えるためには、さらなる取り組みが必要だと感じていました。

鉄道のご案内は、他の業界ではないようなものがあります。ホームのご案内なども一歩間違えれば事故につながる可能性もありますし、危険と隣り合わせの業務もあります。そうしたシーンをより深掘りして、ソフト面の対応を充実した内容にしたいと思い、ミライロとのユニバーサルマナー検定(鉄道)の共同開発に至りました。

私たちは「よりお客さま側の心情に寄り添う」「よりお客さまのことを理解したご案内をする」ことが、最終的に高いお客さま満足度の実現に繋がっていくと考えています。その先にあるのが改正法等が目指す社会像であり、私たちが目指すグループビジョンである「でかける人を、ほほえむ人へ。」の実現であると思っています。

「1人ひとりと向き合う」ことの大切さ

聞き手

ユニバーサルマナー検定(鉄道)を導入した感想はいかがでしたでしょうか。

検定スライド

ユニバーサルマナーという切り口自体が新鮮で、新しい概念でした。「車いすのご案内の方法はこうしましょう」であるとか「視覚障害者の対応はこうして」のようなテクニカルなことの学習はこれまでも充実しており、それももちろん役立つのですが、そこに人の気持ちを乗せるのがなかなか難しい。

一方、ユニバーサルマナーは名称にもあるように、マナーの一環として捉えられています。テーブルマナーのように「相手の人がこう思っているかもしれないから、こうしたほうがいいですね」という教え方をしていて、理解がしやすい。私も実際に受検しましたが、終わった後にはとても納得感がありました。

ユニバーサルマナー検定では「一対一で人として対等に接する際のマナーである」という捉え方なので、”スッ”と頭に入ってくる感じでした。

狙いは「定期教育」の枠組み作りと情報のアップデート

聞き手

今回、鉄道独自のユニバーサルマナー検定を作成するにあたって重視された点はどこでしょうか。

講義風景

重視したのは「枠組み作り」です。

「新入社員への教育としての検定」、さらに「駅などで働いている1,700人あまりの係員への定期的な教育としての検定」という2つの枠組みを作ったことがポイントです。新人教育に加えて、3年に1回の定期教育で最新のアップデート情報を伝える機会を設けました。

これにより多様化するお客さまのニーズや法改正など刻一刻と変わっていく情勢に対応できる、教育体制づくりを意識しました。

検定内容は、既存のユニバーサルマナー検定に鉄道利用に特化した内容をアレンジしました。検討する中で「正解って何だろう?」と悩んでいたのですが、ユニバーサルマナー検定の場合、障害のある当事者の声をもとに気づきを与えてもらうことができます。障害の有無に関わらず、自分とは違う誰かからの視点に立って考えて行動できる係員の教育は、全体の底上げやレベルアップに必要であると思いました。

またユニバーサルマナー検定(鉄道)は当社だけではなく、他の鉄道会社にも活用してもらえる内容にしています。ぜひ全国の鉄道事業者に広がってほしいと思います。

対応で悩む現場からは「分かりやすい」「実態に沿っている」との声

聞き手

駅係員の方の感想はいかがでしたでしょうか。

受講後アンケート

駅係員からは「実態に沿っている」「とても分かりやすい」といった声が上がってきており、手応えを感じています。

変化が出てくるのはこれからだと思いますが、新入社員に実施したというのは1つの大きなポイントです。新入社員は次の新入社員の教育係になるため、OJTで指導する際に使う言葉は、自分が受けた教育の中身から生じるものになると考えています。ユニバーサルマナー検定を受検したことで「今まで出てきていた言葉と変わるのだろうな」と期待をしています。

現場は大きく分けて、駅係員と乗務員(運転士や車掌)のグループがあります。ユニバーサルマナー検定を受講した駅係員は乗務員に異動していき、全体的に広がっていくことになります。将来的には現場の全員がユニバーサルマナー検定(鉄道)を取得している状態にしたいと思います。

満足度の高いサービスを提供することででかける人を応援する

聞き手

西武鉄道は多様性の実現、障害者への対応について今後どのように対応されていくのでしょうか。

最初にもお話したように、西武グループでは「でかける人を、ほほえむ人へ。」というスローガンを掲げていて、そこには”でかける人を応援したい”という思いが集約されています。

ハード面は費用もかかるので直ちに取り組みができない部分も多くありますが、ソフト面でお客さまに対して満足度の高いサービスをいかに提供できるかは今後も考えていきたいと思います。その中で、ミライロとの協働はキーになっていくと感じています。

聞き手

本日は貴重なお話をありがとうございました。