多様な人財が活躍できる社会を目指して

住友林業株式会社

住友林業株式会社では、2022年1月に住宅業界初となる、全社員がユニバーサルマナー検定3級を取得しました。

高齢者や障害のあるお客さま・取引先への接遇の向上、障害者雇用の促進と定着を目指して、2018年度から取り組んできました。

今回の取り組みについて、人事部働きかた支援室のご担当者様にお話をうかがいました。

※育児休業者、長期休業者、海外駐在等を除く5,430名が対象。以降も新入社員等への受講を進め、全社員の検定取得を継続中。

 

全社員のさらなる意識向上が必要

聞き手

ユニバーサルマナー検定を導入した当時の課題感があれば教えてください。

人事部働きかた支援室 マネージャー根津千春 様

人事部働きかた支援室 マネージャー
根津千春 様

社内の障害者雇用とその定着に課題を感じていました。当時はまだ障害者を積極的に受け入れようという部署が少なく、またせっかく入社されてもすぐに退職してしまうケースも少なくありませんでした。

法定雇用率がそれまでの2.0%から2018年に2.2%へ引き上げられることが発表され、このまま法定雇用率達成を維持できるのか危機感を抱きました。障害者雇用をさらに進めるためには、社員の障害に対する理解や、それぞれの障害の特性に応じた対応などが重要で、そのためには、全社員のさらなる意識向上が必要だと感じました。

また、障害のある社員が定着しづらいという風土は、もしかすると「障害のあるお客さまにも適切な対応ができていないかもしれない」といった、漠然とした不安もありました。

多様なお客さまへの接遇向上のためにも

聞き手

全社員のユニバーサルマナー検定取得に取り組んだきっかけを教えてください。

障害者雇用の課題を抱えていた時期にユニバーサルマナー検定のご提案をいただきました。まずは、2018年に弊社の役員および部長・支店長全員が受検したところ、大変好評でした。

講義の中で「私が今からできること」を考える課題があったのですが「障害者や高齢者に向き合う際、迷わず、素直に、すぐ行動する」「”特定の人のために”という意味のバリアフリーではなく、”すべての人のために“という意味のユニバーサルデザインという言葉を使う」「全設計担当者にユニバーサルマナー検定を受講してもらう」といった前向きな決意表明が数多くありました。

障害者雇用促進の側面だけではなく、多様なお客様への接遇向上といった面でも「ユニバーサルマナー検定は全社員が受けた方が良い」ということになりました。多様な方々の視点を理解し、適切なコミュニケーションを行うためには、やはり一人ひとりが直接学ぶべきだと考えたのです。

オンライン実施で効率的に取得

聞き手

全社員の取得は大変だったのではないでしょうか?

ユニバーサルマナー検定におけるグループワークの様子(2019年11月)<br>出典:住友林業HP 障害者雇用の推進より

ユニバーサルマナー検定におけるグループワークの様子(2019年11月)
出典:住友林業HP 障害者雇用の推進より

5,000人ほど社員がいますので、とにかく計画的に進めていこうという感じでした。2022年度までに全社員の取得完了を目標に、まず、2019年に首都圏と名古屋で、集合研修スタイルで実施しました。2020年にコロナ禍となったことでやむなくオンライン研修に切り替えましたが、かえって一度に多くの社員が受講できるようになり、結果として目標より1年早く2021年度に全社員の受講を達成できました

もちろん全社員が取得を完了するには大変な面があったことも事実です。日々の業務に追われるなか、日程が合わない社員もいて、達成に向けてあと数名の未受講者が残る状況でした。そこで最終段階ではメールや電話などあらゆる手段で研修の意義や重要性を伝え、受講を促しました。


※全社員の受講は2021年に完了しましたが、社外リリースは認定証の発行時期に合わせ、2022年3月に掲出しました

チーム一丸となったプロジェクト

聞き手

お客さまへの対応などで何か変化はありましたか?

人事部働きかた支援室 チームマネージャー 吉川恵祐 様

人事部働きかた支援室 チームマネージャー
吉川恵祐 様

とある支店での話です。病気の後遺症のために発話の不明瞭な高齢の方が住宅の建替えを希望されており、ヘルパーさんと車いすで来店されました。普段は寝たきりの生活をしているとのことでしたが、対応した社員はユニバーサルマナー検定を受講していたことで、お客さまに適切な接客をすることができ、契約を頂くことができました。お客さまから「10社ほど見たが、こんなにしっかり私の話を聞いて、真面目に対応してくれたのは初めて」と言われたそうです。

契約後は設計やインテリアコーディネーター、さらに施工管理などさまざまなメンバーがチームを組んで進めていきます。チーム全員がユニバーサルマナー検定を受けているため、共通の認識を持ちながらプロジェクトを推進することができ、全社員取得のメリットを感じることができたということです。

また別の支店では、聴覚障害のあるお客さまが来場されるアポイントがあった際、事前にスケッチブック1冊を用意し、紙芝居形式で展示場の各エリアを案内した社員もいます。コロナ禍でマスク着用のため、表情も口元の動きも分かりづらいなか、このように相手の立場に寄り添って準備をしたためか、お客さまはこの社員の初めての接客の時点で、弊社との契約を決められたそうです。

弊社の住宅事業は注文住宅を主体としておりますので、元々、お客さま一人ひとりと向き合い、ご要望に応えるサービスを提供するよう心がけていますが、全社員がユニバーサルマナー検定を取得したことで、その心構えや対応力が一層強まったように感じます。

障害のある方だけではなく、すべての人に対して大切なこと

聞き手

検定の取得後に意識が変わったと思うことはありますか?

 吉川様と根津様

社員の意識は少なからず変わってきていると思います。これまでの障害に関する研修は、人権の視点からの堅いイメージのものでした。身近なシーンを想定しているユニバーサルマナー検定を受けているのと受けていないのとでは、いざというときの対応に差がでます。

ユニバーサルマナー検定は障害のある方だけでなく、高齢者やベビーカー利用者など、多様な方への関わり方をテーマにしています。社内にも様々な社員がおり、個々の状況に配慮するための気づきのきっかけになると思います。また、思い込みで対応するのではなく、まず「何か私にできることはありますか?」と相手の意向を聞くことは、障害のある方だけではなく、困っている方へ接する場合、大切だということを学びました。

初めての部署での雇用が進みはじめた

聞き手

検定導入前の課題であった障害者雇用面での変化はありましたか?

はい。現在、障害者雇用は着実に進んでいます。最新の状況ですと障害者雇用率は2023年4月1日時点で2.40%。住友林業単体で102名の障害者の方が働いています。一昨年あたりから初めての部署での雇用が進んだと感じています。例えば2022年は8名の障害者を雇用しましたが、半数が部署として初めての障害者雇用です。現場からは「戦力になってくれてありがたい」「部内に協力体制が構築され、一体感が創出された」等の言葉をいただきました。

グループ会社に波及

聞き手

住友林業様はグループ会社も多いですが、そういった会社への波及はいかがでしょうか

吉川様と根津様

グループ会社で住友林業ホームテックという会社があります。主にリフォーム事業を行っているのですが、昨年からユニバーサルマナー検定に取り組み始め、営業・設計部門を中心に約200名が受講しました。 

リフォームをされるお客さまは高齢者の方も多く、バリアフリーを意識したリフォーム提案はもちろんですが、対応の仕方やマインドについて学ぶことができるこの研修の意義は大きいと考えています。

障害者の雇用促進とユニバーサルマナーの定着支援

聞き手

今後に向けて期待すること、取り組むべきことがあれば教えてください。

2026年度までに法定雇用率2.7%への段階的引き上げが発表されていますので、社内の障害者雇用を一層推進する必要があります。ユニバーサルマナー検定を全社員が取得しましたが、まだ障害のある社員を雇用することに不安を感じている部署もあるように思われます。働きかた支援室として、障害のある社員が活躍していることを社内に継続的に情報発信して、受入部署の促進を図る必要があります。また、障害を特別な事ではなく一つの個性として見て、必要な配慮を適切に行い、その社員の能力を引き出す支援を行います。

またユニバーサルマナー検定を取得した社員に対しての継続的なフォローも考えなくてはいけないでしょう。「マインド」や「アクション」というものは一度の研修で身に付くものではないので、eラーニング等の反復学習による定着支援を検討しています。