共生社会の実現と合理的配慮の提供に向けて

東京ガス株式会社

東京ガス株式会社(以下、東京ガス)は、経営理念に「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を掲げています。

共生社会の実現に向けて、サステナビリティ上のマテリアリティ(重要課題)としてお客さまや従業員へのウェルビーイングなくらしとコミュニティーへの貢献の推進を掲げる中、改正障害者差別解消法の施行を機に、障害のあるお客さまへのさらなるサービス向上に向けた取り組みを開始しました。

今回は、この法改正への対応に関する具体的な取り組みについて、サステナビリティ推進部の皆さまにお話をうかがいました。
イラスト SDGsのイメージ

企業における合理的配慮の提供義務化

聞き手

ミライロとの取り組みをはじめた経緯について教えてください。

2024年4月に施行された改正障害者差別解消法には「不当な差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が定義されています。今回の法改正により、企業における合理的配慮の提供が努力義務から法的義務に変わりました。

東京ガスでは法改正を重く受け止め、障害があるお客さまのニーズに対して適切な対応を提供するために、東京ガスグループ全体で対応の見直しを図ることにしました。現場や各グループ企業が個別に対応することは難しいことが予想されたため、サステナビリティ推進部がグループ全体の取り組みを主導することになりました。

しかしながら、社内には専門的な知見がなく、どのように進めたらよいか分からない状況でした。そこで、ユニバーサルマナー検定の資格取得などで、以前からお付き合いがあったミライロに相談することにしました。

ミライロは国や大手企業の仕事を手掛けていることに加え、垣内社長や障害のある従業員が、専門的かつ真剣に社会のバリアと向き合っている印象があり、信頼性がありました。

合理的配慮の提供義務化に向けた5つの取り組み

聞き手

2024年4月の法改正に向けて具体的にどのような取り組みを行ないましたか?

<STEP①> ミライロサーベイの実施

ステータス 会社全体の現状把握

画像 ミライロサーベイ
まずはじめに、現状把握に着手しました。具体的には、ミライロが提供している「ミライロサーベイ」を利用して、会社全体を俯瞰して、障害のあるお客さまへの対応状況を明らかにしました。

このミライロサーベイでは「経営層のコミットメント・環境・意識・情報・制度」といったカテゴリーごとにスコア化されます。

どういった取り組みができていて、できていないかを具体的に把握すると同時に、他の企業の取り組み状況を参考にしながら、優先順位を付けることができました。
ミライロサーベイの結果を各部所に共有したところ、共通の課題認識を持つことができ、もっとお客さまへ向き合うことに焦点を当てようとする意識が会社全体で高まりました。

<STEP②> カスタマージャーニーマップの作成

ステータス オペレーションの可視化・見直し

表 カスタマージャーニー
会社全体の対応状況を把握したあとは、現状のオペレーションを可視化し、発見された課題に対して見直しを行いました。

ここでは障害のあるお客さまが東京ガスのサービスを利用する際の具体的な体験を時系列に沿って書き出し、カスタマージャーニーマップを用いて改善すべきオペレーションや配慮すべきポイントを整理しました。

現場でお客さまと接点のあるスタッフにヒアリングしたところ、できていることも多くありましたが、それぞれのスタッフの工夫や努力に依存していることも明らかになりました。このような属人化された対応では一貫性に欠け、サービスの質がばらつく可能性があります。

<STEP③> ユニバーサルマナーBOOKと障害者差別解消法の研修動画の作成

ステータス 対応の標準化に向けたツール作成

属人化している対応が標準化されれば、スタッフ間における対応の差異を減らし、すべてのお客さまに対して均一で高品質なサービスを提供することが可能となります。

そこで、属人化している対応を標準化するためにマニュアル「ユニバーサルマナーBOOK」を作成しました。このマニュアルは、管理者や現場スタッフが具体的な対応方法を理解し、実践するための指針となります。東京ガスグループのオリジナルページを挿入することで、より一層自分ごととして捉えてもらえるようにしました。

さらに、改正障害者差別解消法のポイントと合理的配慮の提供事例をまとめた研修動画も作成しました。基礎編・実践編・管理者編のパートに分けることで、対象や目的別に学習してもらいやすいように工夫しました。
画像 マニュアル素材

画像 研修素材

 

<STEP④> 説明会とワークショップの実施

ステータス 社内浸透に向けた管理者向け研修

ただし、教育動画やマニュアルを提供するだけでは、内容が十分に浸透しない可能性があるため、管理者を対象に説明会とワークショップを実施しました。

管理者が積極的に学び、実践することで主導的な関与を促し、新しい知識や対応方法を組織全体に浸透させることを目指しました。

写真 グループワークの様子
ワークショップではカスタマージャーニーマップの作成を通じて、誰がどのような困難に直面するかを理解し、想像力を養いながら適切な対応方法を考えてもらうことができました。

また参加者間の対話を促進することで多様な視点や疑問を共有し、深い理解を得てもらうことができたと思います。

<STEP⑤> グループ全体に展開 

ステータス グループ全体に研修を実施

最後に、マニュアルと研修動画をグループ全体へ展開しました。一部の従業員からは「障害について深く考える機会が多くなかったので研修を通じて考えるきっかけになって良かった」「分かっているつもりになっていた」などの感想が寄せられ、貴重な機会になったことを担当としてもうれしく思っています。

障害のあるお客さまへの対応を、カスタマーサービスの質の向上と捉えることで、よりお客さまに寄り添った行動ができるようになります。この研修を通じて、共生社会における自分たちの役割を理解し、実践に移してもらえることを願っています。

より多様なニーズに応えることができる企業へ

聞き手

今後の展望についてお聞かせください。

写真 ご担当者さまがユニバサルマナーブックを持っている様子
東京ガス株式会社 サステナビリティ推進部の皆さま
(左から 小林様/原口様)

私たちは今後も、共生社会の実現に向けた取り組みを継続していく予定です。障害のあるお客さまに対する理解をさらに深めることを目指し、現場スタッフの声を大切にしながら、全社員が一丸となって共生社会の実現に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。

これにより、より多様なニーズに応えることができる企業を目指し、すべての人々が安心して利用できるサービスや環境の提供を心掛けていきます。今後も引き続き、お客さまや社会の声に耳を傾け、共生社会の実現に向けて着実に歩みを進めてまいります。

聞き手

本日は貴重なお話をありがとうございました。