人権を尊重し多様性を認め合う活気ある社会づくり

ヤマト運輸株式会社

ヤマト運輸株式会社では、人権・多様性を尊重する社会の実現に向けた取り組みを行なっています。

お客さまや社員がより安心して快適に利用できる施設設計を目指すユニバーサルデザインガイドラインの制定や、日々の業務に即したヤマトグループ独自のユニバーサルマナー検定に取り組んでいます。

今回はオリジナルのユニバーサルマナー検定の取り組みを中心に、人事部人事グループEX推進チームご担当者様にお話をうかがいました。

※部署名等はインタビュー時のものです

障害がある方の経済的自立支援

聞き手

障害のある方の雇用や自立に関して、積極的に取り組まれている背景を教えてください。

人事部人事グループEX推進チーム 高橋幸一 様(右)、山邉美子 様(左)

人事部人事グループEX推進チーム
高橋幸一 様(右)、山邉美子 様(左)

ヤマトグループでは、昔から障害のある方の雇用や自立に関する取り組みが進んでいました。

象徴的なのは、宅急便の生みの親である元社長・小倉昌男が、個人資産の大半を寄付して1993年9月に設立した「ヤマト福祉財団」です。そこでは当初、障害のある大学生へ返済不要の奨学金や、共同作業所への助成を行っていました。

ある時、障害者施設を訪れた小倉が、障害のある方が低賃金で働いていることに疑問を持ち「自分は福祉のプロではないが、経営のことなら伝えられる」として、1998年に障害のある方の経済的自立支援を実践するため「株式会社スワン」を設立。障害のある方がパンを作り、接客するスワンベーカリーをスタートさせました。現在、全国に25店舗(直営及びフランチャイズ店)を展開し、障害のある300名以上の方が経済的自立、社会参加を果たしています。このようにヤマトグループの中では障害のある方の雇用は比較的浸透していますし、なじみがあります。

多様性は1つの経営課題

聞き手

障害者雇用の現状について教えてください。

ヤマト運輸の障害者雇用率は2023年3月時点で2.83%です。法定雇用率は達成していますので、現在は各地域に配置している障害者雇用を推進する人事担当者が中心となって、その方々が長く働き続けられる環境づくりを特別支援学校や支援機関と一緒に考えながら行っています。本社では人事担当者を集めて外部の専門家のセミナーを定期的に実施したり、全国で活躍する障害のある社員の働きぶりや職場でのサポートの工夫を社内報で紹介したりしています。

聞き手

障害者雇用の取り組みは、宅急便のサービス分野にも活かされていることはありますか?

雇用の取り組みとは別に、障害のあるお客さまに対する取り組みという点では、これまであまり積極的に進められていませんでした。会社として障害のあるお客さまへの統一した対応方法があったわけではなく、ドライバーが個々に考え、できる範囲でやれることをやっていた状況でした。宅急便は、老若男女問わず様々な方にご利用いただくサービスなので、多様性への対応が1つの経営課題であることは間違いありません。

お客さまへの取り組みとして強いて挙げれば、社内で「猫耳」と呼んでいるものがあります。視覚障害のある社員の発案で、ご不在連絡票に触って分かるような切り込み(これが猫の耳の形)を入れて、視覚に障害のある方でもヤマトの不在連絡票だと分かるようにしています。

事業に沿ったユニバーサルマナーの浸透

聞き手

ミライロのサービスを利用したきっかけを教えてください。

人事部人事グループEX推進チーム西橋展子 様

人事部人事グループEX推進チーム
西橋展子 様

弊社には現在、障害のある社員が約3,600名在籍しています。障害があることで困りごとがある社員が少なからずいる中で、これまで具体的に障害のある方の困りごとや、その目線を学ぶ機会がありませんでした。

そうした中、ご自身に障害があり、車いすを利用されているミライロの垣内社長から、障害がある方の視点に立った接し方や、声かけの心構えなどを教えていただき、ミライロが提供しているサービスが私たちのニーズにマッチしていることがわかりました。

今回、オリジナルのユニバーサルマナー検定の開発に至ったのは、垣内社長による講演会もきっかけとなっています。その後、お話をさせていただく中で「事業に沿ったユニバーサルマナーというものが浸透できたら」というお話になりました。

「ヤマトグループ独自のユニバーサルマナー検定」を開発

聞き手

ヤマトグループ独自のユニバーサルマナー検定について導入後の感想を聞かせてください。

画像 検定内の動画を切り取った画像。荷物を届けに来た場面

オリジナルの検定は、集荷配達をするドライバーや営業所でお客様に応対する受付事務の方が「このシーンあるよね!」と感じるリアリティのある内容を意識し、概念を学ぶだけでなくヤマトの業務にすぐ活かせる具体的なアクションを沢山盛り込んでいただきました。動画で見た内容をそのまま実務に活かせばよいので「すぐに実践できる」という声も寄せられています。

人事部人事グループ人事チーム  大河原敦子 様

人事部人事グループ人事チーム
大河原敦子 様

一例ですが、障害のある方が暮らすご自宅の場合、チャイムが押されてもすぐに玄関まで来られないことがあります。宅急便をお届けに伺ったドライバーはドアの向こうにいる「お客さまの状況」が分かりません。

今回の検定では、チャイムが押されてから壁伝いにゆっくり歩いてくるお客様のケースも取り上げられていて「お客さまにはさまざまな事情や状況がある」ことを再認識するきっかけになったと思います。さらに、検定には視覚に障害のある当事者でなければ分からないような視界の様子、物の見え方なども取り入れられ、受講者の障害への理解がさらに深まったと思います。

社内浸透のために役職者からスタート

聞き手

ユニバーサルマナー検定はどのように社内に展開していますか?

2022年の秋から、まずは管理職層からスタートしました。2023年はお客様に接する社員に展開していきます。サービスの特性を考えると真っ先に最前線の社員に受けてもらいたいのですが、まず上司が検定を受けることで内容をしっかりと理解する。そしてそれが実践できるようになった上で、現場の最前線で働く社員に広げていくことが理想だと考えています。

正解を教えてもらえた

聞き手

ユニバーサルマナー検定を受けられた感想や変化があれば教えていただけますか。

インタビュー中の様子

これまで、障害がある方への対応は「こうすれば喜んでいただける」と自分で勝手に決めつけている部分があったという感想が多くありました。

例えば車いすを押すにしても、“黙って”“勝手に”良かれと思って”押していたけど、それが障害のある方の立場からすると不快に感じることがある。勝手に押すのではなく「お手伝いしましょうか?」とまずは声をかける。声かけが大切であることにあらためて気づかされました。

検定では、これまで私たちが試行錯誤をしてきたことに関して、“障害のある方の立場や目線”で正解を教えていただいたという気持ちです。

ユニバーサルマナーを社内の文化に

聞き手

今後、どのようにユニバーサルマナー検定を進めていく予定でしょうか?

全国に人事の担当者がいますので、皆で協力して全国に展開していく予定です。検定を取得したら終わりではなく、日々の業務での実践度合いや知識が定着できているかの確認も重要であると思うので、あらためてあるべき姿を考えていきたいと思っています。

聞き手

今後の取り組みや課題などがあれば教えてください。

検定は昨年秋に役職者から始まり、2023年4月の段階で約5,500名が受講しています。今後、フルタイマー社員全員、およそ8万名弱が受講します。

検定の成果やお客さまからの評価は、今後各現場で社員一人ひとりが実践できた後に得られると思っています。そこでの声も基にして、より多様なお客さまへの対応力向上に繋げていけたらと思います。

聞き手

 本日は貴重なお話をありがとうございました。