改修が困難な建物でも、多様な方が訪れやすい施設へ

東京文化会館

東京文化会館_イメージ写真

東京文化会館は、「首都東京にオペラやバレエもできる本格的な音楽ホールを」という要望に応え、東京都が開都500年事業として建設しました。1961年に建築家の前川國男によって建てられた、建築物としても魅力ある建物です。これまで、オペラ・バレエ・クラシックコンサートなど、世界中の著名なアーティストによる名演の数々が繰り広げられ、“奇跡的”とも言われる音響の良さと相まって、その名は“Tokyo Bunka Kaikan”として広く世界にまで知られています。

 

取り組みの背景と成果

 

課題

  • 建築物としても有名なため、すぐに改修工事ができなかった
  • 導線が複雑で、車いすやベビーカーユーザーが不安に感じていた
  • 多様な方に芸術を鑑賞してもらいたいという想いがあった

成果

  • 建物に手を加えることなく、情報発信によって「不安」の削減に成功
  • 細かな情報発信により、「行けるかどうか」「行きたいかどうか」の選択肢を提供

 

 

取り組み内容 ユニバーサルガイドの作成


東京文化会館_表紙

東京文化会館「ユニバーサルガイド」
※東京文化会館1階インフォメーションでも配布中

ポイント① 車いすユーザーによる調査を実施


ミライロに在籍する車いすユーザーのデザイナーと現地を訪れ、実際に利用することを想定した調査を行いました。その結果、導線とホール内の細かい情報がわかりづらいことが課題として挙がったため、ユニバーサルガイドにそれらの情報を入れることで不便や不安な点を解消することになりました。

東京文化会館_調査写真-1

ポイント② 分かりづらい導線を3Dマップで解消


img01建物は5階建てですが、段差なしで移動できるエリアは「1階・2階・4階の一部のみ」です。3Dマップでは、段差なしで移動できるエリアを黄色で示すことで、どの場所はアクセスが可能なのかをわかりやすくしました。また、「レストランへはエレベーターでしか行けないが、小ホールへはスロープでしか行けない」など、導線も複雑でした。そこで、レストランと小ホールへの行き方を3Dで表示することで、一目でわかるように工夫しました。

 

ポイント③ ホールやレストランの細かい情報を記載


「ホール内に車いす対応席が何席あるのか」「手すりによって視界が遮られることはないか」など細かい情報を記載しました。また、レストランに関してはイスの形状やサイズも細かく示すことで、「どの席であれば利用できそうか」を事前に把握できるようにしました。

img02

担当者の声

◇東京文化会館 ご担当者様

これまで、車いすやベビーカーを使用するお客様から「小ホールまで行くにはどうしたらいいですか?」などと施設内の動線を尋ねられる機会が多く、複雑な作りの施設に課題を感じていました。しかし、建物自体の改修を行う事も難しく、解決策がわからずにいました。今回、車いすユーザーの方の視点を活かしてガイドの作成をしていただいたことで、お客様にわかりやすく情報の提供ができたことはもちろんですが、これによって従業員がきちんとバリアフリーの経路を把握し、ご説明できるようになったことも大きな成果だと感じています。


◇ミライロ ビジネスソリューション事業部  藤田隆永

調査を通して、ハード面の課題はあるものの、情報発信を行えば解決することもあると感じました。今回のように、すでに建築されている建物で、かつその建物自体が有名な場合は特に、改修工事をすることはハードルが高いと思います。しかし、今回作成した「ユニバーサルガイド」のような形で情報発信をすることは、比較的すぐにできる取り組みだと思います。世界的に知られている建築物の情報発信に関わることができたことに喜びを感じると共に、このガイドを通して少しでも多くの方が東京文化会館へ足を運ぶきっかけになると嬉しいです。


 

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