学園理念に根ざした、多様性理解の推進

学校法人ロイヤル学園

学校法人ロイヤル学園は、「ロイヤル学園に関わるすべての人へ教育を通じて感動を提供し、社会に貢献する」という理念のもと、美容業界とブライダル業界で活躍できる人材を育成しています。

社会の多様化に対応するため“技術力”と同じく“人を思いやり理解する力”を教育の柱に据え、全生徒・教職員はユニバーサルマナー検定3級を取得、生徒は2級まで全員が取得しています。

さらにユニバーサルマナー検定で培った多様性への理解を基盤に、一部の生徒たちはインクルーシブデザインをテーマとした授業に臨み、実際に製品パッケージの企画・開発にも挑戦しています。

これらの取り組みの背景と具体的な内容について、ご担当者さまにお話をうかがいました。

【バナー画像】ロイヤル学園のイメージバナー画像。学生27名が手を挙げて笑顔の写真とキャッチコピーがハロー!新しいわたしたち!

 

ユニバーサルマナー検定導入の背景

聞き手

ユニバーサルマナー検定導入のきっかけは何だったのでしょうか?

【写真】学校法人ロイヤル学園 教務部 部長 清水洋平 様

学校法人ロイヤル学園
教務部 部長 清水洋平 様

美容業界は一見華やかに見える一方で、障害のある方にとっては必ずしもやさしい環境とは言えません。たとえば、車いすを使用する方が段差や障害理解の不足により、美容室の利用を断念せざるを得ない場面も少なくありません。また美容に関心を持つ障害のある学生が進路に悩む場面も少なくありません。

そこでロイヤル学園は「就職してから必要になる知識であれば、生徒のうちから学んだほうがいい。多様な価値観や視点は若いときのほうが吸収しやすい。」という考えのもと、ユニバーサルマナー検定の導入を決めました。

2019年には、まずウェディングプランナー科で導入を開始。結婚式を再現するサロン実習では、実際に車いすを使用する参列者への対応が求められる場面もあり、実践教育を重視する同学園にとって必要性の高い学びでした。

その後、他学科へも順次範囲を拡大していきました。2021年には全教職員約150名も受講し、2022年からは全生徒を対象に学園全体で取り組む体制が整いました。今やこれからの社会で必ず求められる知識・スキルとして、教育の中核に位置づけています。

【写真】ロイヤル学園で実施した検定風景。学生が高齢者体験と車いす体験をしている様子

 

検定がもたらした気づきと行動の変化

聞き手

ユニバーサルマナー検定の導入によって、生徒の意識や行動にはどのような変化が見られましたか?

下記グラフは、生徒のユニバーサルマナーレベルに関する自己評価を示したもので、1〜10の段階で評価し、10が最も高く「自信がある」ことを表しています。


▼生徒のユニバーサルマナーレベルの自己評価

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ユニバーサルマナー検定の導入により、生徒のユニバーサルマナーレベルの自己評価には大きな変化が見られました。受検前には「自信がない」と感じていた2〜4点の層が減少し、5点の中間層も大きく減少しました。

その一方で、8〜10点の高評価層が大幅に増加し、多くの生徒が「自信を持って対応できる」と感じられるようになっています。

全体として、自己評価の分布が低い方から高い方へとシフトし、生徒一人ひとりの意識が前向きに変化したことが分かります。

生徒からは「祖母が車いすユーザーのため、ある程度理解しているつもりだったが、まだまだ知らないことが多くて勉強になった」「助けが必要な方には、その人にしか分からない困りごとがあり、耳を傾けて尊重するサポートを心がけたい」などの声が寄せられました。

また「白杖を持つ方や車いすユーザーを見かけた際は避けてしまっていたが、検定を通じて声をかけ、意志を尊重する支援をしたいと考えるようになった」「白杖や車いすの体験を通じ、さまざまな視点で気持ちを理解できた」「声のかけ方やサポートの方法を学び、自分の行動が変わると感じた」といった実践的な変化も見られています。

障害のある生徒や長時間立ち続けるのが難しい生徒への理解も深まり、学内のコミュニケーションにも良い影響を与えています。

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インクルーシブデザイン授業が始動

聞き手

2024年からスタートしたインクルーシブデザイン授業について教えてください。

2024年からは、ユニバーサルマナー検定の学びをさらに発展させたインクルーシブデザイン授業もスタートしました。

授業を設計する際には、ミライロに依頼してWebアンケートを実施し、障害がある方の課題やニーズを参考にしました。初年度のテーマは、誰にとっても身近な「シャンプーとリンス」。

パッケージに点字を入れるなど視覚障害がある方の使いやすさを意識しつつ、福祉的な配慮にとどまらず「おしゃれで使ってみたい」と思えるデザイン性の高さも追求しながら取り組みました。

授業の最後には美容メーカーに向けてプレゼンテーションを行い、生徒アンケートでは「普段と違う視点でアイデアを出せた」「社会課題を自分ごととして考えるきっかけになった」といった声が寄せられました。

授業を通して、生徒たちは社会課題への理解を深めるだけでなく、美容分野における新しい価値創造にも挑戦しています。

こうした取り組みは学内にとどまらず、現在はミライロが運営するデジタル障害者手帳「ミライロID」のオンラインストアを通じて商品化・販売も開始(※)し、実際に障害のある方へ届けられています。

※「ミライロID」のミライロストアでの販売開始のお知らせ

 

【写真】ロイヤル学園での学生によるプレゼンと商品の写真

 

業界全体への波及を目指して

聞き手

今後の展望について教えてください。

今後は、学園内にとどまらず「美容業界やブライダル業界にもユニバーサルマナーを広げていきたい」という思いがあります。目指すのは、業界全体で「どう対応したらいいのかわからない」という声をなくし、現場で多様な人々へのサービスが当たり前に根付く土壌を築くことです。

その実現に向けて、社会に出た卒業生が現場でユニバーサルマナーを実践することで、企業における多様性や障害理解が少しずつ広がっていくことを期待しています。生徒一人ひとりの成長が、やがて業界全体の変化へとつながると信じています。

ロイヤル学園は「教育を通じて感動を提供し、社会に貢献する」という理念のもと、これからも業界を牽引していきます。

【写真】認定証をもっている清水様
聞き手
本日は貴重なお話をありがとうございました。