2025年大阪万博が終わるまでの1,700日間は、障害者に向き合う“経験値”が増える絶好の機会

2025年、万国博覧会の開催地が大阪に決まった。
万博が終わるまでの約1,700日は、
日本全体で「障害者へ向き合う経験値」が爆発的に増える期間になる。

日本における障害者への向き合い方は、無関心か過剰になりがちだ。
その原因は、障害者について「知らない」「わからない」「接した経験がない」こと。
“ない”から始まる不安を、この約1,700日という期間でどれだけ解消できるかが重要だ。

東京オリンピック・パラリンピックでは、世界中から障害者や高齢者が集う。
例えば、車いすユーザーは、7万人が訪れる。
その人たちの家族や友人など同行者を含めれば、15〜30万人近い人が、
東京の公共交通機関・お店・ホテル・ありとあらゆるサービスを利用することになる。

東京では今、急ピッチでこれらの人々へ向き合う準備が進んでいる。
準備とは、環境・意識・情報におけるバリアの解消だ。
半ば強制的ではあるが、良いきっかけになったと言える。

ミライロでも、その勢いは日々感じている。
例えば、高齢者や障害者への向き合い方を学ぶ、ユニバーサルマナー検定。
オリパラ開催が決まるまでの年間開催数は50回ほどだったが、
決まってからは400回に急増した。毎日どこかで、開催している。

オリパラ開催が決まってからリリースしたアプリ「Bmaps(ビーマップ)」では、
投稿された店舗のバリアフリー情報が、12万件を越えた。
投稿内容のほとんどは、東京都内の飲食店だ。

2025年の万博決定により、この準備の勢いは、
オリパラだけで終わるのではなく、その後、5年も延長することになる。

僕たちは残された期間に、何をすべきなのか。
それは環境において完璧な設備を整えるよりも早く、
意識の壁の解消……つまり障害者へ向き合う経験値を積むことだ。

専門的な介助の知識や技術は、覚えると際限ない。
それよりも、重視されるのがコミュニケーションだ。
シンプルに、「なにかお手伝いできることはありますか?」と声をかけること。
たったそれだけだ。
僕はこれを、ユニバーサルマナーと呼んでいる。

そして、大阪には、すでにユニバーサルマナーが広がる土壌がある。

先日、出張で大阪に行った時のことだ。
電車を降りる時、紳士風の男性に「何かお手伝いできることはありますか?」と聞かれた。
エレベーターを降りる時、スポーツマン風の男性に「先に降りた方が移動しやすいですか?」と聞かれた。
この間、たった1〜2分だった。

大阪の対応が良いか、東京の対応が良いか、と比べるつもりはない。
でも、大阪の方が、僕のような車いすユーザーに声をかけてくれる人が多いと思う。
さすが、「大阪のおばちゃん」という言葉が生まれる街だ。

声をかける人が増えれば、それだけ障害者も外出しやすくなる。
障害者の外出が増えれば、街で障害者を見かける機会も増え、
さらに声をかける人や、施設や設備を整える店も増えてくる。
この好循環が、バリアを解消する推進力になるはずだ。

ユニバーサルデザインを、0から1にすることは、大変だ。
幸いにも、日本のユニバーサルデザインは世界的に見ても進んでいる。
この“1”が、オリパラ開催によって“10”になる。大阪では“100”になる。

大阪万博まで、約1,700日。
ユニバーサルマナーを実践する人が一人でも増えることを願っている。
2020年、2025年と、自信を持って世界中の方々を迎える日本を実現したい。

▼参考
ユニバーサルマナー検定 http://www.universal-manners.jp/
Bmaps(ビーマップ) https://web.bmaps.world/

垣内俊哉Toshiya Kakiuchi

株式会社ミライロ 代表取締役社長

立命館大学経営学部在学中の2010年、株式会社ミライロを設立。障害を価値に変える「バリアバリュー」の視点を活かし、企業や自治体、教育機関におけるユニバーサルデザインのコンサルティングを手がける。2014年、日本を変える100人として「THE100」に選出される。2015年、日本財団パラリンピックサポートセンターの顧問に就任。2016年、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のアドバイザーに就任。