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2018年11月27日

2025年大阪万博が終わるまでの1,700日間は、障害者に向き合う“経験値”が増える絶好の機会

垣内 俊哉

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2025年、万国博覧会の開催地が大阪に決まった。
万博が終わるまでの約1,700日は、
日本全体で「障害者へ向き合う経験値」が爆発的に増える期間になる。

日本における障害者への向き合い方は、無関心か過剰になりがちだ。
その原因は、障害者について「知らない」「わからない」「接した経験がない」こと。
“ない”から始まる不安を、この約1,700日という期間でどれだけ解消できるかが重要だ。

東京オリンピック・パラリンピックでは、世界中から障害者や高齢者が集う。
例えば、車いすユーザーは、7万人が訪れる。
その人たちの家族や友人など同行者を含めれば、15〜30万人近い人が、
東京の公共交通機関・お店・ホテル・ありとあらゆるサービスを利用することになる。

東京では今、急ピッチでこれらの人々へ向き合う準備が進んでいる。
準備とは、環境・意識・情報におけるバリアの解消だ。
半ば強制的ではあるが、良いきっかけになったと言える。

ミライロでも、その勢いは日々感じている。
例えば、高齢者や障害者への向き合い方を学ぶ、ユニバーサルマナー検定。
オリパラ開催が決まるまでの年間開催数は50回ほどだったが、
決まってからは400回に急増した。毎日どこかで、開催している。

オリパラ開催が決まってからリリースしたアプリ「Bmaps(ビーマップ)」では、
投稿された店舗のバリアフリー情報が、12万件を越えた。
投稿内容のほとんどは、東京都内の飲食店だ。

2025年の万博決定により、この準備の勢いは、
オリパラだけで終わるのではなく、その後、5年も延長することになる。

僕たちは残された期間に、何をすべきなのか。
それは環境において完璧な設備を整えるよりも早く、
意識の壁の解消……つまり障害者へ向き合う経験値を積むことだ。

専門的な介助の知識や技術は、覚えると際限ない。
それよりも、重視されるのがコミュニケーションだ。
シンプルに、「なにかお手伝いできることはありますか?」と声をかけること。
たったそれだけだ。
僕はこれを、ユニバーサルマナーと呼んでいる。

そして、大阪には、すでにユニバーサルマナーが広がる土壌がある。

先日、出張で大阪に行った時のことだ。
電車を降りる時、紳士風の男性に「何かお手伝いできることはありますか?」と聞かれた。
エレベーターを降りる時、スポーツマン風の男性に「先に降りた方が移動しやすいですか?」と聞かれた。
この間、たった1〜2分だった。

大阪の対応が良いか、東京の対応が良いか、と比べるつもりはない。
でも、大阪の方が、僕のような車いすユーザーに声をかけてくれる人が多いと思う。
さすが、「大阪のおばちゃん」という言葉が生まれる街だ。

声をかける人が増えれば、それだけ障害者も外出しやすくなる。
障害者の外出が増えれば、街で障害者を見かける機会も増え、
さらに声をかける人や、施設や設備を整える店も増えてくる。
この好循環が、バリアを解消する推進力になるはずだ。

ユニバーサルデザインを、0から1にすることは、大変だ。
幸いにも、日本のユニバーサルデザインは世界的に見ても進んでいる。
この“1”が、オリパラ開催によって“10”になる。大阪では“100”になる。

大阪万博まで、約1,700日。
ユニバーサルマナーを実践する人が一人でも増えることを願っている。
2020年、2025年と、自信を持って世界中の方々を迎える日本を実現したい。

▼参考
ユニバーサルマナー検定 http://www.universal-manners.jp/
Bmaps(ビーマップ) https://web.bmaps.world/