本記事では、ユニバーサルデザインにおける基本の考え方と身近な例を紹介し、実現のために始められることを解説します。
<目次>
ユニバーサルデザインとは
「ユニバーサルデザイン」とは、1980年代にアメリカのロナルド・メイス博士が中心となって提唱した、「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインする」という考え方です。日本でも1990年代頃※から知られるようになりました。
※UD資料館「ユニバーサルデザインの誕生」
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは?
似た意味で「バリアフリー」という言葉があります。
ユニバーサルデザインとバリアフリーは何が違うのでしょうか。
バリアフリーは、「高齢者や障害者が社会生活を送るうえで、障壁となるものを取り除く」という考え方で、高齢者や障害者などの一部の人が対象です。
一方ユニバーサルデザインは、「デザインをする段階で使いやすさについて考えを取り入れる」という考え方で、すべての人を対象にしています。
まとめると、目的や対象による以下の違いがあります。
◆バリアフリー
=障壁によって制限を受ける一部の人のために、障壁を後から取り除く
◆ユニバーサルデザイン
=元からすべての人に使いやすいようにデザインする
より詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
◇「バリアフリー化」と「ユニバーサルデザイン化」の違いは?
ユニバーサルデザイン7原則
ユニバーサルデザインの考え方をより浸透させるためにまとめられた「ユニバーサルデザイン7原則」があります。一つずつ見ていきましょう。
①誰でも同じように利用できる「公平性」
公平性とは「身体的、心理的に使う人を選ぶことなく、誰でも公平に操作できること」です。
【ユニバーサルデザインの例】
例えば「自動ドア」や「手すり付きの階段」「段差のない歩道」などが当てはまります。歩いている人、車いすに乗っている人、ベビーカーを押している人など、どんな人でも同じように使うことができます。
②使い方を選べる「自由度」
自由度とは「使う人の能力や好みに合わせて、使い方を選ぶことができること」です。
【ユニバーサルデザインの例】
例えば、「多機能トイレ」は様々な用途で使えるように複数の機能がついています。「高さの違う手すりやカウンター」は、背の高さなどに合わせて選ぶことができます。また、「階段・エレベーター・エスカレーターの併設」は、状況によって手段を選ぶことができます。
③簡単に使える「単純性」
単純性とは「使い方が簡単で直観的にわかること」です。使う人の知識や経験の違いにかかわらず、直感的に理解できることを指します。
【ユニバーサルデザインの例】
例えば、シャンプーとリンスのボトルには、凹凸があるのをご存知でしょうか。これは、視覚障害のある方が触っただけでどちらなのかが直感で分かるような工夫です。「電気のスイッチ」や、「説明書がなくても使える家電」なども直感的に使うことができます。
④欲しい情報がすぐに分かる「明確さ」
明確さとは、「使う人にとって、その情報が理解しやすいこと」です。何を伝えているのかが誰にでも分かることを指します。
【ユニバーサルデザインの例】
例えば、電車内の案内表示で次の駅を伝える際、様々な言語やひらがなで書かれています。そのため、言語や理解度の違いにかかわらず理解することができます。また、伝達手段も、音声案内・点字・文字での表示などさまざまな方法があることで、全ての人に情報を伝えることができます。
⑤ミスや危険につながらない「安全性」
安全性とは「使用時に事故の心配が無く、安全であること」です。
【ユニバーサルデザインの例】
こちらは危険防止機能を搭載している家電などが当てはまります。例えば、ほぼ全ての電子レンジは使用中に開けると止まるようにできています。また、「失敗しても元に戻れる」ということも含まれます。操作画面の「戻る」のボタンは、安心につながります。
⑥無理なく使える「体への負担の少なさ」
体への負担の少なさとは「無理な姿勢を取ることなく、かつ少ない力で使用できること」です。
【ユニバーサルデザインの例】
こちらは「水道のレバー」や「レバーハンドル式のドア」などが当てはまります。このレバーハンドル式のドアノブですと、レバーを下げるだけで開閉できます。握って回すタイプのドアノブと比べると、非常に体への負担が少なくなっています。
⑦使いやすい広さや大きさ「空間性」
空間性とは「十分な大きさや広さが確保されていること」です。
【ユニバーサルデザインの例】
「優先駐車スペース」「多機能トイレ」という空間や、「手のひら全体で押すことができる電気のスイッチ」など製品の大きさが当てはまります。
ユニバーサルデザイン7原則は、必ずしも全て満さなければならないわけではありません。しかし、施設や製品の設計やまちづくりの際にこれらを取り入れることができれば、より多くの方に使いやすい社会の実現つながります。
今からはじめられること
以上のように、設計時から上手くユニバーサルデザイン7原則を取り入れている例も多いですが、実際に企業で行う際には、予算やスペースの不足で、思い通りに実現できない場合もあります。
その際に意識してもらいたいのが、「ハードは変えられなくても、ハートは変えられる」という考え方です。設備(ハード)を十分に整備できなくても、私たち一人ひとりの意識(ハート)は今からでも変えることができます。多様な方のために行動する方法を知っていれば、誰もが快適に過ごしやすい・使いやすい状況を作り出せます。
株式会社ミライロが運営する「ユニバーサルマナー検定」では、多様な方へのお声がけ方法や向き合い方、サポートの方法など、自分とは違う誰かの視点に立ち行動するためのマインドとアクションをお伝えしています。
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施設や製品のデザインだけがユニバーサルデザインではありません。心のユニバーサルデザインも大切にすることで、障害の有無、年齢、状況に関わらず、誰もが暮らしやすい社会の実現を目指します。