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2021年12月09日

心のバリアフリーとは? 基本の考えと取り組み事例

ミライロ

車椅子と心のイメージ画像

皆さんは「心のバリアフリー」という言葉を聞いたことがありますか?

バリアフリーとは、「高齢者や障害者が社会生活を送るうえで、障壁となるものを取り除く」という考え方ですが、「心のバリアフリー」というと、どのような定義になるのでしょうか。

この記事では「心のバリアフリー」の基本的な考え方を解説すると共に、実践するために私たちが出来ることを分かりやすくご紹介していきます。

バリアフリーについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
「バリアフリー化」と「ユニバーサルデザイン化」の違いは?

心のバリアフリーとは?

 

心のバリアフリーとは、「様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと」を指します。※1

簡単にいうと、バリアフリーは、スロープや手すりの設置などで物理的に障壁となるものを取り除くのに対し、心のバリアフリーは、コミュニケーションや他者理解などを通して様々な人のバリアを取り除いていこうという考え方です。

※1:ユニバーサルデザイン2020行動計画(2017年2月ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定) より引用

心のバリアフリーを体現する3つのポイント

車椅子ユーザーが接客を受けている様子

「ユニバーサルデザイン2020行動計画」では、心のバリアフリーを体現するポイントとして次の3点が挙げられています。

  1.    障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという
    「障害の社会モデル」を理解すること。
  2.    障害のある人(及びその家族)への差別
    (不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
  3.  自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、
    すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。

それでは、この3つのポイントが何を意味しているのか、それぞれ詳しく解説していきましょう。

1.障害の社会モデルを理解する

「障害の社会モデル」とは、「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという考え方です。※3

社会は、基本的に多数を占める人にとって使いやすく設計されているため、目が見えない人や耳が聞こえない人が使うことを想定せずに作られていることが多いです。

例えば、歩くことができる前提でつくられている階段は、足腰の弱い人や車いすユーザーには上り下りが困難になります。目が見える前提で整備されている道路は、車止めや歩行を遮るものがあると、視覚に障害のある人はそれにぶつかってしまうことがあります。

この階段や車止めなどを「障害・障壁」と捉えるのが障害の社会モデルです。
障害者と聞くと、心身に何らかの障害を持っている人や抱えている人として認識されがちですが、あくまでも「障害は人ではなく社会側にある」と捉えて、社会が作り出した社会的障壁を取り除くことは社会の責務だとするのが社会モデルの基本的な考えです。

※3:ユニバーサルデザイン2020行動計画(2017年2月ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定) より引用

2.差別をなくし、合理的配慮を行う

障害のある人への差別は「障害者差別解消法」という法律で禁止されています。

障害の有無に関わらず、どんな人も見た目や出生などで差別することは許されませんが、これは基本的に行政や民間事業者に対して障害を理由に不当な扱いを禁止するように定められている法律です。

そして、この法律では「合理的配慮の提供」を行うことが義務化されています。
※2

合理的配慮を簡単に解説すると、社会的障壁を取り除くことが必要とされる場合に、お客様の権利を守り、障壁を取り除く調整を過度の負担でない限り行いましょうという配慮です。

例えば、入り口に段差があるカフェを車いすユーザーが利用しようとしたとき、何の理由もなく入店拒否すると、不当な扱いになり、差別にあたります。

この場面では、車いすユーザーのカフェを利用するという権利を守るために、社会的障壁となっている段差を解消する配慮が合理的配慮として求められます。例えば、簡易スロープが用意されている場合はスロープをかけて入りやすいように工夫したり、段数の少ない段差であれば車いすを持ち上げたりなど、無理のない範囲で出来るサポートがあります。

しかし、簡易スロープも備えがなければすぐに設置できるものではありません。改修工事などにもコストがかかります。バリアフリーが十分に整っていない環境であれば、人の手により障壁を取り除く「心のバリアフリー」が必要となるのです。

※2:令和3年5月に改正され、公布の日(令和3年6月4日)から3年以内において施行されます。内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」より引用

簡易スロープの画像

3.多様な人とコミュニケーションを取る

障害者差別解消法により、行政や事業者による社会的障壁の解消が期待されますが、まだまだ社会には色々な障壁が残っています。

例えば、視覚障害のある人が信号機の音を頼りに横断歩道を渡る際、周りの騒音などで音がかき消されると、青になったことが分からなかったり反対に赤の状態で渡ってしまったりすることもあります。この場面で社会的障壁を解消するのは、行政でも事業者でもなく周りにいる“あなた”です。

実際に街中で困っている方を見かけたとき、そっと声をかけてコミュニケーションを取ることができれば、多様な人の障壁を解消することに繋がります。場合によってはお断りされることもありますが、その場合はサポートなしでも解決できて良かったと前向きに捉えることも大切です。

 心のバリアフリーの取り組み事例

心のバリアフリーを推進する取り組みは、様々な方法で行われています。
以下に、代表的な心のバリアフリー推進の例を紹介します。

・広告やポスターでの啓蒙

駅構内や電車などで、優先座席の譲り合いやサポートを促す内容のポスターなどが貼られていることがよくあります。ポスター以外にも、パンフレットなどで多様な人への理解を促進していこうという動きが多く見られます。

・心のバリアフリーノートの活用

教育現場でも、心のバリアフリーに関する理解や、多様な人とのコミュニケーションを考える授業が盛んになってきました。実際に、文部科学省により「心のバリアフリーノート」という資料教材が作成されており、小学校~高校での活用が2020年度から順次開始されています。

他にも動画などのメディアを通じた啓蒙や、有識者による講演会などが取り組み事例として挙げられます。

 心のバリアフリーの課題と適切なマナー

先ほど紹介した3つのポイントにより、事業者でもそうでない場合も、心のバリアフリーは多くの場面で求められますが、課題も多く存在します。

それは、支えようという気持ちが強すぎて過剰なサポートになってしまったり、適切なコミュニケーションが取れず、知らない間に相手に不快感を与えてしまったりするという課題です。

例えば、相手の意思を聞かずになんでもサポートしようとした結果、一人で出来ることまで勝手に行ってしまい、おせっかいのような印象を与えてしまうことがあります。他にも、いきなり大きな声をかけたり、急に腕を引っ張って誘導したりすると、怖がらせてしまうこともあります。

車椅子ユーザーに接客する様子

どんな人とコミュニケーションを取るときにも、場面に応じたマナーが求められるのと同じで、障害のある人とのコミュニケーションの際にも一定のマナーが必要となります。ただ、障害のある人と接した経験がなかったり正しい知識がなかったりすると、上手くサポートできないことや、無意識のうちに相手を傷つけてしまうこともあります。

過剰な対応をなくし適切なコミュニケーション方法を習得するために、株式会社ミライロの運営する「ユニバーサルマナー検定」では、多様な人々と接する際の、適切なマナーやコミュニケーション方法から、実際にサポートするときの注意点などを細かく学ぶことができます。

学習内容は障害のある当事者講師が監修しているため、正しく使える知識を身につけられると共に、障害のある人の視点に立って心のバリアフリーを考えることができます。

サービス業など実際に多様な人々と接する機会の多い方から、日常生活や家庭内で適切なコミュニケーション方法を学びたい方など、これまでに約12万人の方にご受検いただいています。ご興味のある方は是非下記リンクからご確認ください。

ユニバーサルマナー検定詳細ページ

ユニバーサルマナー検定 バナー画像

 

 まとめ

ここまで、心のバリアフリーについて詳しく解説してきました。

一人一人が、適切なマナーとコミュニケーション方法を身につけておくことで、お互いに気持ちの良い心のバリアフリーを実現することができます。皆さんの心がけと行動で社会のバリアをなくし、色々な人が生きやすい社会を実現しましょう。