数年前のバリアフリー展で最新の車いすを見たときの話です。
丁度20年ほど前にマイ車いすを利用するようになってから、 バリエーションが増えたのだなあ、と感心していました。
車いすはどんな過程で変化してきたのだろうと思い、以前から気になっていた車いすの歴史について今回まとめてみました。
想像以上に古いその歴史と近年の進化には感動しました。
車いすの原型は「車輪の着いた家具」
車いすのルーツを探るとその存在は紀元前500年のギリシャまでさかのぼります。
壁画に描かれているのは、車輪の着いたーーベッド。
最初は椅子ではなく、ベッドとして作られたようです。
どのような身分の人間がどのような目的で利用していたかは不明です。
アテネにアクロポリスが建造され、ソクラテスやプラトンが哲学の礎を築く少し前に生まれました。
最古の車輪の着いた「イス」の存在を確かにする記録は中国にありました。
西暦500年頃の中国にその記録は残っています。
徳の高い老人が用いていたと考えられています。
一部の記録では、諸葛孔明が車輪のついた椅子を用いていたとされていますが、記録は明の時代のものであり、当時実際に使われていた確証はありません。
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ヨーロッパでの車いすの進化
車いすの記録はその後1500年代までありませんでした。
そしてスペイン王フェリペ2世が晩年車輪の着いた椅子を用いていたという記録が残っています。
さらに1655年、当時22歳のドイツの時計職人ステファン•ファーフラーは自走式の手漕ぎの椅子を開発しました。
この3輪型の装置は後の自転車につながる発明でした。
また開発者のステファン•ファーフラー自身も下肢に何らかの障害があったといわれています。
自身のバリアが未来への大きな変化つながるというケースはこの頃からありました。
自走式の車いすの登場後、現在の車いすにより近い形のタイプが開発されます。
1750 年、イギリスの風呂屋ジェームスヒースは病人を風呂場に運ぶための椅子を開発しました。
19世紀には現在の自走式の車いすに近いハンドリム(タイヤを動かす部分)を備えた車いすが開発されます。そして1932年、エンジニアのハーリー•ジェイニングスは世界で初めての金属フレームの車いすを開発しました。
今日私たちが目にする車いすはこの時代に完成し、円筒型の金属フレームで作られた軽量化が図られました。
また折りたたみの機構があり持ち運びが可能になった、 私たちが見慣れた車いすは1900年はじめに作られました。
2500年続く車いすの歴史の中で、今目にする車いすはたった100年前の時代のものでした。
まだまだこれから、進化の可能性はありそうです。
“Members of the Australian Team march at the Opening Ceremony of the Tokyo 1964 Paralympic Summer Games”©(Licensed under CC BY-SA 3.0)
上の写真は1964年の東京パラリンピックの入場式の様子です。
現在ではさまざまな競技用車いすが開発されていますが、当時の車いすは 運動用とはかけ離れた形の車いすでした。
しかし当時の日本は国産の車いすと海外の車いすの性能の差に大きな衝撃を覚えたといわれています。
そこで、また近代の車いすの発展についてもお話しできればと思います。
車いすの詳しい使い方やサポート方法、障害のある方との向き合い方について学びたい方はユニバーサルマナー検定もチェックしてみてください。