バリアフリー ユニバーサルマナー
2022年01月11日

障害の社会モデルとは?障害について改めて考える

ミライロ

車椅子と大きな段差のイメージ

障害とは何かについて考えたことはありますか?

障害には色々な考え方があり、正解が決まっているわけではありませんが、障害者差別解消法や心のバリアフリーなど、障害に関連する法律や行動指針の基本となっている考え方があります。それが「障害の社会モデル」です。

この記事では、障害の社会モデルがどういう考え方なのかを、具体例を交えて解説していきます。

<目次>

車椅子と大きな段差のイメージ

障害の社会モデルとは?

「障害の社会モデル」とは、障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという考え方です。※1

例えば、車いすユーザーが店舗に入りたいが入り口までに階段があるという場合、入れないのは、歩けないという個人の機能に問題があるからでなく、階段や段差を「障害・障壁(バリア)」と捉えるのが障害の社会モデルです。

「障害は人ではなく社会の側にある」と捉えて、社会が作り出した社会的障壁を取り除くことは社会の責務だとするのが社会モデルの基本的な考えです。

社会モデルと医学モデルの違い

障害に対する考え方は、大きくは障害の「社会モデル」と「医学モデル」の2種類に分けられます。

「障害の医学モデル」とは、障害は個人の心身機能が原因だとする考え方です。その考え方から、障害の個人モデル」と呼ばれることもあります。

先ほどの例を用いて解説すると、車いすユーザーが入店できないのは、入口に階段や段差があるからでなく、個人の歩行能力が問題だとする考え方です。この場合、問題を解決する方法は段差の除去ではなく、治療やトレーニングによる個人の歩行能力の向上や回復ということになります。医療の現場では治療が目的であるため、医学的に考える場合に適しているモデルと言えます。

障害の社会モデルと医学モデルのどちらが正しいということはありません。しかし、医学モデルだけで考えると、上記のように個人による解決方法しかないため、場合によっては施設の利用や外出を諦めざるを得ない状況を生んでしまうこともあります。

障害の社会モデルが用いられる場面

◇1. 法律や計画との関係性

2006年12月に、国連総会で「障害者権利条約※2」が採択され、この条約の中では障害の社会モデルの考え方が反映されています。

この条約の締結においてさまざまな法整備も進められ、障害者基本法や障害者雇用促進法の改正や、障害者総合支援法、障害者差別解消法※3、など新しい法律の成立が行なわれました。この際、障害者基本法及び差別解消法では、障害者についての定義が社会モデルの考え方を反映し改められています。

改正前は、障害者は「身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と規定されていました。

改正後は、障害者は「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者」と、社会モデルの基本となっている「社会的障壁」という言葉が盛り込まれるようになっています。

また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした取組みである、「ユニバーサルデザイン2020行動計画※4」の中でも、障害の社会モデルをすべての人が理解し、それを自らの意識に反映していくことが重要とする記載がされています。

このように、国連や国が制定する条約や法律においても、また行動計画においても、障害について考える際には社会モデルが用いられるようになってきています。

◇2. ユニバーサルデザインとの関係性

障害の原因が個人でなく社会の側にあると考えると、障壁(バリア)が解消されたときに便利になるのは、障害がある人だけではありません。

例えば、車いすでは通りにくい駅の改札があるとします。この改札の幅を広げると、車いすユーザーがスムーズに通りやすくなることに加えて、ベビーカーを使っている人や、キャリーケースなどの大きい荷物を抱えている人にとっても通りやすくなります。

つまり、車いすユーザーのバリアを解消したことで、他の人のバリアも同時に解消できているということになります。一部の人に対してだけでなく、どんな人でも使いやすい設計になること、これこそがユニバーサルデザインの考え方です。

このように障害の社会モデルで考えることによって、障害者に関連する法律や計画を決定しやすくなるほか、社会の利便性も同時に向上していくことが出来るようになります。

 社会に存在する4つの障壁(バリア)とは

障害は社会的障壁の存在が原因だとする障害の社会モデルですが、「社会的障壁」とは、上記で例に挙げた段差などの物理的なものだけではありません。普段生活している中では気づきにくい多くの社会的障壁があり、基本的には大きく4種類に分けて考えられることが多いです。※5

物理的なバリア

駅などの公共交通機関、道路、建物などで、移動や動作を行う際に支障を生じさせるバリアのことを指します。

<例>
駅:スロープもエレベーターもない駅があり、車いすユーザーや足腰の弱い人がホームまでたどり着けない

自動販売機:高い位置に商品の購入ボタンがあるため、車いすユーザーや高齢者など高い位置まで手の届かない人が一部の商品を購入できない

物理的なバリアのイメージ図

◇制度的なバリア

社会のルール、制度、条件が整っていない、または認知がされていないことによって、障害のある人が平等な機会を与えられないバリアのことを指します。

<例>
飲食店:介助犬に関する理解が十分でなく、盲導犬や聴導犬などの犬を連れての入店を断られる

就職・試験:障害があることが理由で、就職面接を断られたり、試験を受けさせてもらえない

制度的なバリアのイメージ図

◇文化・情報面でのバリア

情報の伝え方が音声のみに限られているなど、必要な情報を十分に得られない人が出てしまうバリアのことを指します。

<例>
施設:設置されている案内板に、点字対応や音声案内機能がないため、視覚障害者には何がどこにあるのか分からない

交通機関:緊急時のアナウンスが音声のみで、聴覚障害者には何が起こっているのか分からない

文化・情報面でのバリアのイメージ図

◇意識上のバリア

無関心や過剰な扱い、偏見や差別などにより発生するバリアのことを指します。

<例>
道路:点字ブロックの存在に無関心なため、点字ブロックの上に荷物や自転車などを置いたりその上で話したりすることで、視覚障害者が通ることができない

会話:障害者に心ない言葉を浴びせたり、「障害者はかわいそう」などのステレオタイプな視点の発言をする

意識上のバリアのイメージ図

今回、紹介した例はごく一部で、社会にはまだまだ色々なバリアが隠れており、情報や制度、偏見など目に見えないバリアもたくさんあります。株式会社ミライロでは、これらのバリアを集約し、「環境・情報・意識のバリア」の3つに分類して考えています。3つのバリアを詳しく解説している記事もございますので、ご興味のある方はこちらを是非ご一読ください。

 障壁(バリア)を解消するには

上記で、社会に存在するさまざまなバリアについて紹介しましたが、これらのバリアを実際に解消するには、どのようなことが出来るのでしょうか。以下の表で、さきほどのバリアの説明と、解決策をまとめてみました。

バリアの解消方法をまとめた表

 

解消の方法はバリアによって異なります。物理的なバリアは施設・設備の改修によって、制度的なバリアはルールなどの見直しで解消できますし、文化・情報面でのバリアは伝達方法や案内を工夫することで解消できます。つまり、企業や自治体などが費用や時間をかけて調整すれば解消できる部分が多いです。

一方で、意識上のバリアは、企業や自治体の努力だけでは解消しきれない部分があります。どれだけ道路や施設が改良されて多くの人に使いやすくなったとしても、障害者への関心が無いせいで点字ブロックやスロープを塞いでしまう人がいたり、差別的な態度や攻撃的な発言をする人がいたりすると、まだまだ目に見えないバリアが残ってしまいます。

また、大規模な改修や変更を加えてバリアの解消をするには、多くの費用と時間がかかります。そのため、現状で困ってる人たちのバリアをすぐに解消することが難しくなります。

 私たちにできることは?

では、意識上のバリアや、他のバリアの解消しきれない部分はどうずれば解消できるのでしょうか。それは今この記事を読んでくださっている皆さんを含む「心のあり方」が鍵になります。

差別や偏見をなくすことはもちろん、街中で困っている人にお声がけができる人が増えると、施設改修や制度改修などのハードの部分では解消に時間がかかってしまう部分を、人々のハートの部分で補うことができます。

しかし、困っている人を実際に見かけたとき、「私が声をかけても大丈夫だろうか」「間違った対応をしてしまったら失礼なのでは」と躊躇したり戸惑ってしまったりする人も多いはずです。

株式会社ミライロの運営する「ユニバーサルマナー検定」では、多様な人々と接する際の、適切なマナーやコミュニケーション方法から、実際にサポートするときの注意点などを細かく学ぶことができます。学習内容は障害のある当事者講師が監修しているため、正しく使える知識を身につけられると共に、障害のある人の視点に立って心のバリアフリーを考えることができます。

サービス業など実際に多様な人々と接する機会の多い方から、日常生活や家庭内で適切なコミュニケーション方法を学びたい方など、これまでに約12万人の方にご受検いただいています。
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 まとめ

以上、障害の社会モデルについて詳しく説明しました。

社会には多くのバリアが存在すること、そのバリアを解消するために皆さんの力が必要なこと、そして障害に関する皆さんの考え方が少しでも変わっていると嬉しく思います。

関連用語についての記事はこちら

参考リンクまとめ

※1:ユニバーサルデザイン2020行動計画(2017年2月ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定) 

※2:障害者権利条約(外務省)

※3:内閣府 障害者施策の実施状況 第1章 第5節 2

※4:障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第3節 2

※5:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」(政府広報オンライン)