「全盲の女性、音楽祭の席『無理やり』最後列案内」報道について、目の見えない私が思うこと

こんにちは、視覚障害のある当事者講師の原口淳です。
今朝方、こんなニュースが上がっていました。

「全盲の女性、音楽祭の席『無理やり』最後列案内」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190108-00050006-yom-soci

名古屋で開かれたクラシックコンサートで、視覚障害のある女性が、
購入した席から離れた端の席に移動させられた、という問題です。

会場側にも事情はあったのかもしれませんが、
コンサートでせっかく購入した後列中央の席ではなくて、
最後列に案内されたこの方は、とても悲しい思いをされたのだと思います。

私は、両目が全く見えません。
それでも、コンサートにしても、スポーツ観戦にしても、
ステージに近い席や、良い席が当たると、本当に嬉しいです。

特に私は野球観戦が大好きなのですが、良い席になれば、
グラウンドに近くなり、打球音などが耳に響いてきます。
観客と選手の熱狂を感じることができて、本当に楽しい時間になります。

見えないから端の席でも変わらない、のではなくて、
見えないから良い席に座りたい、のです。

そんなこともあって私は、移動が大変だとしても、前の方にある席を選びます。
この女性のように、スタッフや同行者の肘に捕まって前を歩いていただければ、
転ぶことなく、歩くことができます。
もちろん、暗くて混雑する中の移動は、障害者に限らず危険なので、
時間に余裕を持って入場するようにしています。

私がこのニュースを聞いて何より残念だったのは、
「視覚障害のある人が、危険ということで車いすに乗せられたこと」と
「肘を掴めば歩ける、といった意思を無視されたこと」でした。

視覚障害のある人の中には、出入りが楽なようにあえて端の席を選ぶ人もいれば、
トイレに行きやすいよう入り口にできるだけ近い席を選ぶ人もいます。
でも、私のように、前の席に座れることを楽しみにしている人もいます。

必要なのは、押し付けや行き過ぎた配慮ではなく、選択肢です。
「足元が暗く危険なのですが、どうすれば安全に移動しやすいですか?」
と尋ねてもらえれば、早めに行く、スタッフの人にお手伝いをお願いする、などの方法が生まれます。

命を守るために安全面を考えることは大切です。
だからこそ、どうすればお互いが安全に移動することができるのか、
皆が楽しくスポーツやコンサートに参加できるのか、を、考えるきっかけになればと願います。

原口淳Jun Haraguchi

株式会社ミライロ 講師

生まれつき、視覚障害(全盲)のある講師。2011年より株式会社ミライロに入社。視覚障害者の視点から、教育機関や企業に対してユニバーサルデザイン化のコンサルティングや講演活動を行っている。地元兵庫県のブラインドサッカーチーム「兵庫サムライスターズ」で現役選手として活動する傍ら、小中学生を中心にブラインドサッカーの普及活動も行っている。