こんにちは。ミライロ講師でブラインドサッカー選手の原口です。
先日、ブラインドサッカーの練習に、私と仲の良い小学生2人(東灘小学校少年団野球部 5年生の家城悠我(いえきゆうが)くんと岡本翔真(おかもとしょうま)くん)が体験に来てくれました。
ブラインドサッカーとは?
ブラインドサッカーとは、名前の通り“ブラインド=見えない、サッカー”です。国内では私のように光を感じない全盲から、著しく見えづらい弱視の人など、幅広い障害のある人がアイマスクをつけることにより平等な状態でプレーできます。
ブラインドサッカーのボールには鈴が入っていて、プレーヤーはその音を頼りにドリブルやディフェンスをします。しかし、選手やゴールなどの位置はわかりません。そこでブラインドサッカーでは、見える人が見えない選手に他のゴールや選手の位置を声で伝えます。このポジションを「ガイド」といい、キーパーとガイドは目の見える人が担当します。視覚障害者とガイドやキーパーがお互い協力して行うスポーツがブラインドサッカーです。
今回子どもたちには、普通のサッカーとは違う、ブラインドサッカー特有のルールや魅力を体験を通じて学んでもらいました。
「見えないこと」を知ろう!
体験のスタートは視覚障害のある選手とペアを組み、パスの練習を行いました。見えない人からパスをもらうためには、声を出し、自分の位置を相手に伝える必要がありますが、子どもたちは普段のサッカーのように無言でパスし、「どこにいるんや?」と選手に聞かれて答えるという光景がしばらく続きました。しかし、自分もアイマスクをしてパスをしようとすると”相手の位置がわからない”ことに気づき、自然と自分の位置を知らせるための返事ができるようになりました。
次にドリブルの練習を行いました。ドリブルをする際は、もう一方の人が「はいはいはい」と手をたたきながら大きな声で位置を伝え、ボールを持っている人はその音を頼りに音のする方向に向かってドリブルします。
パスの練習で声が出せるようになった子どもたちですが、選手との距離が離れると小さな声しか出せませんでした。しかし、ここでも自分がアイマスクをして体験すると、”他の音と混ざり目標の場所がわからない”ことがわかり、徐々に大きな声が出せるようになりました。
子どもたちの吸収の速さ
パスとドリブルの練習後、2人ともアイマスクを付けた状態で1対1のゲームに挑戦しました。ブラインドサッカーでは、ボールを取りに行く際は「ボイ」と言いながら近づき、自分の位置を相手に伝えることがルールとされています。
練習も中盤に入り、この頃には目隠しをしている状態にすっかり慣れていて、2人とも普通のサッカーをしている時のような動きになっていました。ボールがサイドに転がってしまっても、その音を追いかけて全力疾走!「怖くないの?」と聞くと「音でわかるもん」と自信満々な様子でした。僅か1時間足らずでこの成長とは、子どもの吸収の速さと”怖い”という固定概念をなくし、素直に楽しもうとする姿勢に驚きました。
弊社のスタッフも子どもと一緒に練習していましたが、なんともぎこちない動きに……。
見えないことばかりに気を取られて、ボールと相手の位置を把握するのが難しいと最後まで苦戦していました。
声掛けのタイミングを学ぼう!
続いて、シュートとサポート方法について教わりました。ブラインドサッカーにはゴールや選手の位置を伝えるガイドというポジションがあることを先ほどもお伝えしましたが、この役割を子どもたちにも体験してもらいました。
ガイドが「ボールを持つ選手とゴールとの正確な位置関係」を伝える方法は3つあります:
・距離を伝える
→8m、6m、シュートの3つのポイント
・角度を伝える
→正面、45°、角度なしの3つのポイント
・これらのポイントをゴール裏の真ん中に立ち声をかけることで、
ゴールとの距離感や位置関係を把握することができます
子どもたちはガイドとプレーヤーの両方を体験しました。始めは指示を出すタイミングがわからず、相手がゴールを通り過ぎてしまったり、ボールの位置を伝えるコツが掴めず、ボールが相手の後ろにきてしまっていました。
しかし、ガイドとプレーヤーを両方体験することで、”少し早めに指示すること”や”細かく指示を出すこと”でより正確なゴールへと繋がることを理解してくれたようです。
PKの練習では、ゴールの右と左のポールを順にたたき、ゴールの幅がわかったところで正面から合図をだすことでゴールの位置を伝えるということを学びました。練習も終盤に入り慣れてきたということもあり、大きな声でゴールの位置を教える姿に、チームメイトも「すごいねー」と褒めていました。相手の立場に立って考え、自然と声のボリュームや指示の内容を変更する小学生の姿に、大人が勉強させられました。
子どもから学んだこと
最後にチームのみんなと一緒にゲームをしました。子どもはアイマスクをせずに参加しましたが、大きな声でボールの位置を教えたり、積極的にボールを奪いにいくなど、ブラインドサッカーのルールを守りながらも楽しそうにプレーをしてくれていました。チームメイトの初対面の選手にも「〇〇さんもっと右!」と小学生が当たり前に視覚障害者をサポートしている光景が広がっていました。
練習後、小学生に感想を書いてもらうと「目の見えない人でも工夫をすればサッカーができる」「見えない人と見える人が混ざっている」ことがわかったと言ってくれて感動しました。これこそまさにブラインドサッカーの魅力であり、私がこの競技を続ける理由です。
今回の体験を通じて、障害者を理解するには子どもたちのような「素直な意見や向き合う姿勢」が大切であることを学びました。子どもたちから学んだことを、今度は講師として大人の方々にも伝えていけたらと思います。
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