当社は、東宝株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:松岡宏泰)が運営する帝国劇場(東京都千代田区)からのご依頼を受け、ミライロ・コネクト事業の一環として、2025年2月14日~2月28日に上演された、帝国劇場 CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』の8公演において文字通訳(以下「本取り組み」)を提供いたしました。
本取り組みにより、聴覚障害者もリアルタイムで演劇をお楽しみいただける環境の整備を進めました。演劇をはじめとする芸術分野においては、情報保障が大きな課題です。誰もが安心して文化芸術に触れられる社会の実現を目指し、今後も手話や文字による多様なコミュニケーション手段の提供に努めてまいります。
取り組み内容
2月14日~2月28日までに実施された全20公演のうち、観劇を予定するお客様から情報保障の希望があった8公演に文字通訳を実施し、劇中のセリフ、歌、アフタートークなど、すべての音声情報を文字でお届けしました。
帝国劇場のWebサイトでは、観劇希望日の10日前までに申請することで文字通訳を利用できるよう案内がされました。また、本取り組みは、誰もが芸術文化に触れることができる社会の実現に向けて、「東京文化戦略2030」の施策「クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョー」の一環として、アーツカウンシル東京の助成を受けて実施されました。
【文字通訳のイメージ】
左:実際の劇場での文字通訳の様子 右:利用者の見ている画面イメージ
芸術分野における情報保障
以前、弊社が実施した情報保障に関する調査では、特に芸術分野において情報保障が整っておらず、参加を断念せざるを得なかったという声が数多く集まりました。また、実際に参加はしたものの、情報保障が不十分で楽しむことができなかったという声も少なくありません。とりわけ、舞台芸術においては、字幕の付与や文字通訳など文字による情報保障を求める声が特に多く寄せられました。
最近では、情報保障がつく公演も増えてきていますが、まだそうした要望の多くが実現されておらず、発展途上にある状況だといえます。そうした中で、帝国劇場の休館前の最終公演にて東宝演劇部が掲げる”大衆性と芸術性の融合”というモットーのもと、帝国劇場で、その“大衆性”の輪をより広げる新たな試みとして文字通訳が導入されたことは、非常に意義深い取り組みであったと言えます。少しずつではありますが、「観劇のアクセシビリティ」が着実に広がりを見せ始めています。
通訳コーディネーターのコメント
今回、帝国劇場の休館前の最終公演においてリアルタイム文字通訳をご依頼いただけたことは、非常に意義深い経験となりました。これまで舞台での情報保障といえば、事前に台本を貸し出すことが一般的でしたが、リアルタイムでの通訳を弊社がご協力できたことは大変光栄なことだと感じています。
今回の通訳対応では、事前に日ごとのプログラムや台本、歌詞、出演者情報等を詳細に頂けたおかげで、事前準備をしっかりと整えることができ、公演中の大部分をタイムラグなく文字表出することができました。また、台本を流すだけではなく、MC(司会進行)やゲストとのトーク部分は通訳者がその場で入力する体制をとっていたので、漏れなく通訳することができたと思います。また、回を重ねるごとにMC等でのトーク内でよく出てくる単語や出演者の話し方の癖、関係性もわかってきて、通訳の精度向上につながりました。これは連続でご依頼いただいたからこその利点です。コーディネーターとして、今回のような取り組みに関わることができ嬉しく思います。
まとめコメント
今回帝国劇場にて文字通訳が導入されたことにより、芸術分野における情報保障の整備が大きく前進したと考えています。これまで芸術に関心がありながらも、情報保障が十分ではなかったため、参加できなかった聴覚障害者は多くいらっしゃいますが、個人や有志、また団体として働きかけを行ってきた方も多く、さらに情報アクセシビリティ法の制定等を受け、芸術文化事業への情報保障を求める動きは活発化しています。そのような中、本取り組みをきっかけに、より多くの芸術場面で「大衆性と芸術性の融合」が成されるべく環境整備が進んでいくことが期待されます。
弊社としても、文字通訳のみならず、手話通訳のサービス諸共、尽力できればと思います。ミライロ・コネクトでは引き続き、芸術分野を含むさまざまな場面において文字や手話でコミュニケーションがとれる社会を目指します。演劇や舞台などでの情報保障について、ご検討の方はどうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせ先
・ミライロ・コネクト事業
メール:connect@mirairo.co.jp