障害者雇用とCS向上を両立。意識を変えた「学び」

株式会社トモズ

業種:

メディカル

従業員数:

1,001~5,000名

株式会社トモズ(以下、トモズ)は、「医療の一端を担う小売業としてお客さまの健康で豊かな生活に役立つ、かかりつけ薬局を目指す」という理念のもと、首都圏を中心に調剤併設型ドラッグストアを展開しています。利便性の追求にとどまらず、地域に根ざした「かかりつけ薬局」として、お客さま一人ひとりに寄り添う店舗づくりを進めてきました。

こうした取り組みをさらに推進するため、トモズでは2024年より経営層および全店舗の店長・薬局長、本部管理職ら520名を対象に「ユニバーサルマナー検定3級」を導入しました。高齢の方や障害のある方をはじめ、多様なお客さまへの理解を深めるとともに、共に働く従業員同士が自然に支え合える職場風土の醸成にもつなげています。

今回は、ユニバーサルマナー検定の導入を牽引した総務人事部の担当者さまにインタビューをさせていただき、導入の背景から現場の変化、そして受講後のアンケートを活かした店舗改善の取り組みと、その先にある目指すべき未来について詳しくお話を伺いました。

(写真)株式会社トモズのロゴがあるエントランスで撮影。インタビューに対応いただいた2名の方

 

トップの強い意志から始まった、全社を挙げたマインド改革

聞き手

今回の取り組みに至った具体的な背景や、導入の内容を詳しく教えてください。

(写真)インタビューに対応いただいた総務人事部の担当者さま

きっかけは、弊社社長の角谷がミライロの垣内さんの講演を聞いたことでした。講演の内容に深く共感し、まずは経営陣から多様な方への向き合い方を学ぶべきだという考えのもと、導入が決まりました。

はじめに、役員や上層部を対象に、障害のある方や高齢の方をはじめとする多様な方への理解を深めるため、ユニバーサルマナー検定3級を受講しました。その後、全店舗の店長・薬局長などが一堂に会する場を活用して、約470名規模でのユニバーサルマナー検定3級を実施しました。

役員や上層部向けの研修は、垣内さんに講師を依頼させていただきました。当事者視点に基づく講義に強い共感が集まり、「この学びを現場の責任者にも体験してほしい」という想いから、店長・薬局長などが受講する研修でも、同様に垣内さんへ登壇をお願いしたいと要望いたしました。

実際の受講の様子は、講師の方の熱量に圧倒され、受講者が非常に前のめりに参加していたことが印象的でした。単なる「知識の習得」にとどまらず、日々の接客や店舗運営に直結する学びとして受け止められており、導入意義の大きさを実感しました。

また、これほど大規模な人数がリアルな会場で一斉に受講するのは多くないと伺いましたが、店長・薬局長が同じ熱量で学び、共通認識を持ったうえで、その学びを各店舗へ持ち帰り、現場に広げていくことを狙いとしています。

(写真)役員や上層部向けの受講の様子

現場にあった「どう接すればいいかわからない」という不安の解消

聞き手
導入前に、現場や組織として感じていた課題や悩みは何だったのでしょうか。
(写真)インタビューに対応いただいた担当者さま

大きく2つの課題がありました。
1つ目は、店舗における障害のある従業員の雇用定着支援です。現在、弊社では70名以上の障害のある従業員が働いており、その9割以上が店舗に配属されています。一方で現場では、「どのようにコミュニケーションを取ればよいのか」「どのようにサポートすればよいのか」といった不安があり、こうした戸惑いが定着支援上の課題の一因となることがありました。

2つ目は、お客さまへの対応です。調剤併設型ドラッグストアという特性上、高齢のお客さまや障害のあるお客さまが多くご来店されます。店舗スタッフには「何か力になりたい」という思いはあるものの、どう対応すればよいか判断に迷う場面がありました。

これまでも店舗での働き方に関する研修は実施してきましたが、「お客さまの視点」に立ち、多様な方にどう寄り添うかを学ぶ機会は十分ではありませんでした。まずはスキル以前に、「マインド(向き合い方)」を学ぶことで、現場の不安を解消できるのではないかと考え、ユニバーサルマナー検定の導入を決めました。

スキル以上に重要な「マインド」を学べるプログラム

聞き手

他の研修サービスもある中で、なぜユニバーサルマナー検定を選ばれたのでしょうか。

最大の決め手は、「マインド」をしっかり学べるという点でした。接客において、車いすの操作や点字の知識といった「スキル」ももちろん重要ですが、それ以上に大切なのは「自分とは異なる立場や視点を持つ方に対してどう向き合うか」という姿勢だと考えています。

ユニバーサルマナー検定は、当事者視点に基づいた内容であることに説得力があり、単なる知識の習得にとどまらず、受講者の感情を動かす力があります。実際、講師の言葉は従業員の心に深く刺さりました。

また、ユニバーサルマナーの考え方が「障害のある方」だけでなく、高齢の方、妊娠中の方、さらには共に働く仲間への接し方にも共通して活かせる「マインド」であったことも、弊社の理念に合致していました。実際に「自らが行動を変えたい」と思える学びであることが、選定の大きな理由です。

ユニバーサルマナー検定とは?

(写真)全店長が受講する様子

 

「お声がけ」の重要性に気づき、行動を開始

聞き手

導入後の変化や、現場の社員の方々の反応はいかがでしたか?

受講後のアンケートでは、参加者満足度が97.6%と非常に高い結果となりました。特に印象的だったのは、自由記述の約53%が「お声がけの重要性」に触れていたことです。

「正解を求めるのではなく、まずは声をかけてみる」「見守ることも一つの配慮だと知った」といった気づきが多く寄せられました。これまで「失礼になったらどうしよう」とためらっていた店長たちが、自信を持って一歩踏み出すきっかけになったと感じています。

(グラフ)受講後のアンケート結果。質問1講座は満足でしたか?回答:非常に満足258名(58%)、満足176名(39.6%)、どちらともいえない11名(2.4%)、質問2本日の講座を受け、どのようなことを感じましたか?多様な方々の困りごとに対し当事者意識を持って取り組む必要性を感じた352名、無意識な思い込みや押しつけがあったことに気づけた240名、障害のある方など多様な方との向き合い方に自信がついた190名、多様な方々とのコミュニケーションについてもっと学びたいと思った142名、その他12名。必要性や気づきのきっかけとなる
この変化を一時的なものにしないため、現在は一部店舗をモデルケースとして、学びを具体的なアクションにつなげる取り組みを始めています。お困りのお客さまへの積極的なお声がけなど、現場から自発的なアイデアが出てくるようになりました。定量的な成果を測るのが難しい分野ではありますが、スタッフの表情や、お客さまに対する意識の解像度が確実に上がったことが、何よりの効果だと確信しています。
(写真)店舗のカウンターに設定されている筆談対応可能ステッカー

 

「特別扱い」ではなく「当たり前の気遣い」が根付く文化へ

聞き手

今後、この取り組みをどのように発展させていきたいとお考えですか。

今後は、3級で得たマインドをより具体的な行動や仕組みにしていきたいと考えています。まずは、モデル店舗を作り、その成功事例を全店に広げていきたいと思っています。

また、受講後アンケートでは、「今後学んでみたいこと」として、障害のある方への具体的なサポート方法を学びたいという声が多く寄せられました。理解が深まったからこそ、さらに実践的なスキルを身につけたいという従業員のニーズが高まっていると感じています。

そのため、さらなるステップアップとして「ユニバーサルマナー検定2級(※)」の実技研修や、精神障害・発達障害のある方との接し方を学ぶ「ユニバーサルワーク研修(※)」の導入も検討しています。

私たちが目指しているのは、障害のある方や配慮が必要な方に対して、「特別扱い」をするのではなく「当たり前の気遣い」ができる文化を醸成していくことです。できないことがあれば自然に助け合える、そんな企業文化を根付かせていきたいと考えています。すべてのお客さまにとって、「安心して楽しくお買い物ができる場所」であり続けるために、今回の学びを起点とした取り組みを着実に進めてまいります。