大阪・関西万博「モンスターハンター ブリッジ」に込めた想い

株式会社カプコン

株式会社カプコン(以下、カプコン)は、2025年大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」に、体験型コンテンツ「モンスターハンター ブリッジ」を出展しました。

大阪ヘルスケアパビリオンのテーマ「REBORN」に合わせて、モンスターハンター(※)シリーズが持つ「自然や生命の素晴らしさ」というテーマを融合させた本コンテンツは、専用ARデバイスを装着し、360度シアター、イマーシブサウンド、床振動が一体となり、これまでにない没入体験を提供しました。

「モンスターハンター ブリッジ」では、壮大な世界をより多くの方が楽しめるよう、開発段階から障害のある方々が参画。新たなエンターテインメント(以下、エンタメ)に挑戦しました。

今回の取り組みについて、ご担当者さまにお話をうかがいしました。

モンスターハンターブリッジのイメージ画像

※モンスターハンターとは
モンスターハンターシリーズは、雄大な自然の中で巨大なモンスターに立ち向かうハンティングアクションゲームです。2004年の第1作発売以来、ネットワークを介して「他のプレイヤーと協力して強大なモンスターに挑む」というプレイジャンルを確立し、世界中から注目を集めるコンテンツに成長した作品です。

 

多くの人が楽しめるエンタメへの挑戦

聞き手

今回の取り組みに至った背景を教えてください。

(写真)CS第二開発統括プロジェクトマネージャー田中良知様

CS第二開発統括
プロジェクトマネージャー 田中 良知 様

「モンスターハンター ブリッジ」は、ARデバイスをつけながら360度全方向を楽しむことのできるコンテンツです。「ミライのエンタメをより多くの人に楽しんでもらいたい!」という想いをこのプロジェクトの重要なテーマに設定しました。その後、私たちはどのような人にどのような配慮が必要かを模索し、3つの視点に重点を置きました。

1つめは、体験型コンテンツという特性上、車いすユーザーへの対応です。安全性を確保しつつ、どうすれば他の来場者と同じように、モンスターハンターの世界を楽しめるか追及しました。

2つめは、聴覚障害のある方への対応です。単なる文字起こしではない、没入感を損なわない字幕のあり方を模索しました。

最後は、視覚障害のある方への対応です。ボイスナビゲーションを入れました。

豊富な実績と専門性に期待

聞き手
ミライロ社に依頼した経緯について教えてください。

私たちは、体験型のコンテンツをより多くの人に楽しんでもらうための専門的な知見が不足していました。そのため、車いすユーザーと聴覚障害のある方への、モニター調査や字幕の作成、運営オペレーションへのアドバイスなど多岐にわたるサポートをミライロ社に依頼することにしました。

当初、私たちはミライロ社のことを存じ上げませんでした。プロジェクトのパートナー企業から紹介していただき、初めてホームページを拝見したのですが、掲載されていた大手企業との豊富な実績をお持ちだと知りました。

今回のプロジェクトでも話を進める中で、車いすモニター調査や字幕レビューを多く取り入れていただきました。障害のある方々から得たリアルな声とミライロ社の専門的なご意見を通じて、具体的な改善策として反映することができました。

ミライロ社のお力を頂いて、車いすユーザー・聴覚障害のある方々・カプコン・ミライロの連携がうまく出来たと思います。

(写真)大阪万博内にあるXDHALLの外観の写真

「クリエイティブ ✕ アクセシビリティ」を両立

聞き手
今回の取り組みの具体的な内容を教えてください。
(写真)車いす対応の検証を行っている様子

まず、車いすユーザーおよび同伴者が安全かつ安心して楽しめるよう「専用回」を設けました。

車いす専用回では、空間を確保するだけでなく、シアター内での移動や旋回動作をスムーズかつ安全に行えるよう、ご案内しています。

360度シアターでは、周囲に気を使ってしまい、車いす旋回をためらう方がいることを想定し、専用のアナウンスを導入しました。このアナウンスで旋回が可能であるということを丁寧に案内することで、臨場感を損なうことのない体験を可能にしました。

ARコンテンツも車いすからの視点に合わせて動きを最適化しています。体験者が同じようにコンテンツを楽しめるよう工夫しました。

続いて、聴覚障害のある方にもコンテンツを最大限楽しんでいただくため、音声情報を補完するガイド機能として、コンテンツ専用の字幕ガイドを実装しました。単に音情報を文字に変換するだけでなく、内容や演出をより深く理解してもらうことを重視しています。
当事者の方が、字幕が読みやすいという前提を大切にした上で、360度コンテンツだからこその、工夫を入れていきました。

例えば、視界に入らない方向で何が起こっているか、字幕ガイドを最適化しました。また、映像のどこで何が聞こえているのか、アイコンで誘導するなどの工夫を凝らしています。

(画像)字幕がついた映像画像
そして、字幕が変わる楽しさや、思わず周りを見渡したくなるようなUI(ユーザーインターフェース)デザインを導入し、字幕自体が魅力的なデザインになるようにしました。

アクセシビリティが新たな可能性を広げる

聞き手
今回のプロジェクトを通して、何か新しい気づきはありましたか?

アクセシビリティを大切にしながら、コンテンツの重要なクリエイティブ要素をどう組み込むかには、調整の時間を要しました。

この課題を乗り越えるため、私たちは当事者の視点を積極的に取り入れました。その結果、表現の幅を広げ、より多くの人に届けるスタート地点に立つことができました。

実際に、聴覚障害のある方々から「字幕のおかげで本当に楽しかった」という喜びの声を直接いただいた時は、とても嬉しかったです。私たちの取り組みが来場者に確実に届いていることを実感できました。

特別な体験を、より多くの人へ

聞き手
最後にメッセージをお願いします。
車いすユーザーや補助犬ユーザーによるモニター調査、運営オペレーションへのアドバイスなど、ミライロ社の多岐にわたるサポートは、この体験型コンテンツを作り上げる上で大きな助けとなりました。
パビリオンの受付からコンテンツの移動の動線、安全性まで、すべてを車いすユーザー、聴覚障害のある方の視点から丁寧に検証・フィードバックしていただき、感謝しています。
「モンスターハンター ブリッジ」は、さまざまな方々の協力があったからこそ、楽しんでいただけるコンテンツとなりました。このコンテンツが、多様な方々に安心して楽しんでいただける、特別な体験となることを願っています。
「遊文化をクリエイトする」という当社の企業理念は、まさにこのプロジェクトに集約されています。私たちはこれからも、エンターテインメントを通じてより多くの人に笑顔と感動を届けていきたいと思います。
(画像)モンスターハンターブリッジのロゴ画像

 

聞き手
本日は貴重なお話をありがとうございました。