ワークショップを通じて深まった「当事者との対話」

江崎グリコ株式会社

江崎グリコ株式会社(以下、江崎グリコ)は、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を存在意義(パーパス)とし、創業以来、事業を通じ社会に貢献してきました。現在は「グローバル10億人のウェルビーイングへの貢献」を目指して、多様な人々に寄り添う商品づくりを推進しています。

その一環として、障害のあるモニターを招いた「ワークショップ」を実施しました。既存のチェックリストだけでは見落としていた課題を洗い出し、誰もが使いやすいパッケージを目指すための新たな挑戦です。

今回の取り組みについて、ご担当者さまにお話をうかがいました。

 

(写真)ワークショップ全体の様子

「当たり前」を疑うことからスタート

聞き手

今回の取り組みに至った背景を教えてください。

私たちは以前から、CSR活動の中でユニバーサルデザインの取り組みを行ってしました。ただ、お客さまから寄せられる「文字が見えにくい」「色の区別がつかない」といったご意見への対応が中心でした。

しかし、「グローバル10億人のウェルビーイングへの貢献」を目指すにあたって、対症療法的な取り組みだけでは不十分だと気づきました。より多くの人がストレスなく喫食できる商品を作るためには、開発の根本から視点を変える必要がありました。

特に大きなきっかけとなったのは、ワークショップに先駆けて行ったNPO団体を通じた調査でした。上肢障害のある方に商品開封テストをお願いしたところ、社内の品質基準は満たしている商品でも、実際には「開けられない」「使いにくい」という意見を受けました。

聞き手
当たり前ではないことがたくさんあったのですね。
はい。私たちには25〜30項目にも及ぶ詳細なチェックリストがあり、品質には自信を持っています。しかし、そこには「左利きの方への配慮」や「指の力が弱い方への視点」などすべての人にとって使いやすいものかという点が不足していました。 「既存のルールの範囲内で合格点を出していても、実際には困っている人がいる」。この事実に直面し、障害に関する特性に合わせた、より細かい配慮が必要だと思いました。

「対話」ができるパートナーを求めて

聞き手
ミライロに依頼した経緯について教えてください。

自分たちの想像力だけでは限界があると感じ、外部の専門的な知見を借りたいと考えました。ミライロさんを選んだ決め手は、実績はもちろんですが、何より「モニターの方々の多様性と積極性」です。

障害者手帳アプリ「ミライロID」を通じて、幅広い障害種別の方にアプローチできる点は非常に魅力的でした。また、単にテストを受けるだけでなく、事前にアンケートを実施してより積極的に回答をいただいた方をモニターに選定しました。

今回は、モニターの方々がインタビュアーと「対話」し、建設的なフィードバックをしてくださる姿勢がとてもありがたかったです。

また、ミライロさんは大阪にオフィスがあり、私たちの拠点である関西でスムーズに開催できる点も、依頼の大きな後押しとなりました。

「想定外の工夫」から得た大きな学び

聞き手
今回の取り組みの具体的な内容を教えてください。

今回は、チェックリストに反映できていなかった、体幹障害(車いすユーザー)、下肢障害(車いすユーザー)、視覚障害(弱視・全盲)のある方々をお招きし、約12種類の商品(紙箱、袋、カップなど)の開封体験を実施しました。そこでたくさんの発見がありました。特に驚かされたのは、視覚障害がある方の「工夫」です。 スマートフォンで読み上げアプリを使いこなし、商品の情報を詳細に把握していました。「見えないから不便だろう」と私たちが勝手に思い込んでいた部分も、実際には彼らなりの工夫で解決されていることがわかりました。「一度開けた商品は形を覚えているから、次は大丈夫」というご意見もあり、過剰な配慮よりも「最初の分かりやすさ」が重要だという発見もありました。

(写真)全盲の男性がスマートフォンを活用して読み上げアプリを起動している様子

 

社内の意識を変え、業界全体のスタンダードへ

聞き手

今回のプロジェクトを通して、新しい気づきはありましたか?

参加した社員からは、「これまでの常識が大きく覆されるような学びを得られた」「普段の業務で想定しているターゲットや利用シーンについての理解が浅かったことに気づかされた」 といった声が多く挙がりました。この「気づき」を一過性のもので終わらせないために、ワークショップの様子を撮影した映像を教材化し、当日参加できなかった社員や他部署への共有を進めていきたいと考えています。

(写真)左側の写真は、白杖をもった視覚障害者の女性が江崎グリコの製品をもって使い方を体験している。その左横で社員の方がインタビューを行っている。右側の写真は、車いすユーザーの男性が江崎グリコの製品をもって使い方を体験している。その左横で社員の方がインタビューを行っている。

 

聞き手
最後にメッセージをお願いします。

既存のチェックリストだけで、多様なお客さまの姿を想像することには限界があります。 今回のワークショップを通じて、私たちは「当事者の声」を聞くことの重要性を再認識しました。

今後は、新商品の開発でも今回の気づきを反映できるようにしていきたいと思います。また、多くの社員の気づきとなるように今回のワークショップの内容は共有して社員の意識向上にもつなげていきたいと考えています。

これからも、すべての人の「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を実現するために、挑戦を続けていきます。

聞き手
本日は貴重なお話をありがとうございました。