聴覚障害のある当事者としてユニバーサルマナー講師を務めている、薄葉です。今日はミライロに入社する前に務めていた職場での経験について、お話ししたいと思います。
ジェスチャーや表情の変化はマナー違反?
前職、上司からあることで注意を受けたことがあります。それは「話している時のジェスチャーや表情の変化が必要以上に表に出ないように」というものでした。
会議や面談の際の私は
● 話している時の表情が豊かすぎる
● 頷きやジェスチャーなどの身体の動きが大きすぎる
ということがあったようです。
自覚していなかったことなので、私は驚きました。まずは不快感を与えてしまったことをお詫びし、その理由を尋ねました。
「私(上司)と話している時に、薄葉さんが表情豊かに話しているのを他の社員が見ると、仕事中なのに、気さくに歓談しているように見られてしまう」
「私(上司)に対して首をかしげる仕草というのは、良くない」
上記のような答えが返ってきました。
癖になっていたのは手話の表現方法だった
首をかしげる仕草と言われ、私はハッとしました。確かに私は質問する時に、首を片側に傾げていたかもしれません。
私は聴力を失ってから手話を覚えたのですが、手話の表現方法の1つに、質問をする際は首をかしげるというものがあります。
例えば「元気」の手話のみで表現すると「(自分が)元気です」という意味になります。「元気」+「首をかしげる」の仕草を加えると「お元気ですか?」という意味に変わります。
この動作が癖になっていたので、私は知らず知らずの内に、口話で質問をする際も首をかしげてしまっていたようでした。
手話を学び始めると、手話の講師から最初に教わることの一つに「表情を豊かにする」ということがあります。悲しい気持ちを表現する時には悲しい表情を、嬉しい気持ちを表現する時には嬉しい表情をしないと、相手に意味が伝わりづらいからです。
音声では伝えられないからこそ、手話に加えて、表情やジェスチャーをつけるというのは自分の思いを届ける上で必要だと思っていたのです。
また、企業としての聴覚障害者への配慮をチェックできるリスト、聴覚言語障害者への配慮に関する簡易チェックリストも併せてご確認ください。 |
文化や習慣のすれ違いを解消していくために
しかしそうは言っても、聞こえる方が大多数の環境では、それは意味が違って取られてしまうことがあるようです。それからは誤解を与えないようにできるだけ動きを抑えましたが、最初は意識するあまり、必要以上に緊張してしまったこともありました。
聞こえる、聞こえない、といった違いがあれば、文化や習慣も異なります。ちょっとしたすれ違いや違和感は日々発生しているのでしょう。
元々は聴力があって、手話の勉強を始めたばかりの自分でさえ、文化のすれ違いに戸惑ってしまいました。聞こえる方が大多数の社会の中では、ろう者の友人たちはさらに歯がゆい気持ちをしているのだろうと思いを馳せました。
今ミライロでは、このような習慣の違いを社員に共有した上で、自分の思いをわかりやすく伝えるために、表情やジェスチャーを自然に使っています。
聴覚障害のある当事者講師として、今後、こうした文化的なすれ違いを少しでも減らしていき、障害の有無に関わらず、全ての人が活き活きと笑顔で暮らせる社会を目指していくことも使命の一つだと感じています。
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