スタッフブログ
2020/10/06

「ユニバーサルマナーのある日常②」聞こえない私のピンチを救ってくれた、とある紳士のさりげない配慮とは?

薄葉幸恵

【写真】エレベーター内部の階数パネルを押している人の手

ユニバーサルマナー講師の薄葉です。
聴覚障害のある講師として、全国各地の様々な企業、自治体、教育機関などで講義を担当しています。
耳は聞こえませんが話せますので、講義は声でお伝えしています。

突然ですが、皆さんは日常生活の中で、どれくらいの頻度でエレベーターを利用されますか?

私は職場のビル、通勤時に利用する駅、よくランチで利用する商業施設、講義のために訪問する取引先のオフィスビルなど、毎日のようにエレベーターを利用しています。

前回の記事では、エレベーターにおける聴覚障害者の困りごとの一例をお伝えしました。

■前回のお話は、こちらから

今回の記事では、前回の話の続きから、実際に私が遭遇したエレベーターにおける困りごとを踏まえ、障害者の日常生活における課題の本質をお伝えします。

恐れていた階数パネルの前へ…。

その日、講義会場のある階に上がるため、私がエレベーターの到着を待っていると、エレベーターホールに観光客らしき一団が来ました。

エレベーターが到着し、そのグループと同じタイミングでエレベーターに乗り込む際、私は少し嫌な予感がしていました。
そのグループは皆さん揃ってエレベーターに乗り込まれたのですが、その結果、私はものの見事に普段は徹底的に避けているエレベーターの階数パネルの前に押し込まれてしまいました。
メジャーなエレベーターの内部構造同様に、そのエレベーターの階数パネルは入り口右側の1箇所のみに設置されていました。

ここで私の嫌な予感は的中しました。
私と同じように、グループの波に押しやられた様子の人がいて、階数パネルの反対側から、私に向かって何かを言っているのです。

【写真】エレベーター内部の階数パネルを押している人の手

 

聞こえない私の視点と心情

ここで少し、私の心情について説明させてください。

私がエレベーターに乗る際にはいつも、パネルの代理操作をお願いされないように、できる限りエレベーターの階数パネルから遠い場所に立つようにしています。
そして、本来ならすべきマナーである、周囲の方への「何階へ行かれますか?」の声かけはしません。

なぜかというと押してほしい階数を伝えられた後に、「すみません。私、耳が聞こえないので、階数がわかりませんでした。」と伝えるのは、相手に気まずい思いをさせると思うからです。
私なりの、周囲への配慮なのです。

ただ、この”パネルの前に立たない”という私なりの配慮は、時と場合によっては、注意が必要だったりします。
皆さんもご存じだと思いますが、会食時などの席次と同じく、エレベーターの立ち位置にも上座と下座があります。
細かい決まりはありますが、簡潔に説明すると、エレベーターの内部のうち、入り口付近の階数パネル前が下座になります。

人口の大半を占める右利きの人が優先されている社会の現状として、メジャーなエレベーターは右側に階数パネルが設置されているので、通常エレベーター内部からみて、右側のパネル前が下座になることが多いのです。

ですから、皆さんもお客様や目上の方と一緒にエレベーターを使用する際には、率先して階数パネルの前に立ち、階数パネルの操作を行うのではないでしょうか。
また、ご高齢の方やベビーカーユーザーなどお子様連れの方がエレベーターに同乗された際などにも、「大丈夫ですよ、自分が操作しますよ。」という配慮の気持ちで、快く代理操作を担うことも多いのではないでしょうか。
もちろん、ユニバーサルマナーが社会に浸透しつつある現在、「特に理由がなくても、自分はいつも率先してエレベーターの操作をしていますよ!」という、素敵な方も沢山いらっしゃると思います。

聞こえない私のジレンマ

私がエレベーターに乗る際には、相手の口元が読み取れるかどうかの保証もないまま忠実にマナーを実践しても、読み取りができない場合には、相手に気まずい思いをさせる”気が利かない人”になってしまうことがあります。
あるいは、さっさとエレベーターの奥に陣取り、”偉そうな礼儀知らずな人”と思われるかの二者択一の選択を迫られているという、とても不本意な状況に置かれます。

障害のある人にとっては、日常生活においてどちらも好ましくない選択肢の中から、不満だがまだ良いと感じる選択肢を選ばなくてはいけないという”ジレンマ”が日常茶飯事だったりします。
日常生活のなかで、環境に障害を感じることの少ない方は意識したことがないかもしれませんが、「どちらかマシな方を選ばざるを得ない」状況に置かれるよりは、「より良い選択肢を選べる」状況に置かれていることが望ましいと言えます。

では、皆さんここで少し立ち止まって、考えてみてください。
今回のシチュエーションでいえば、「誰もが、より良い選択肢を選べる」ようするためには、どのような環境の整備が必要でしょうか。

例えば、階数パネルが設置されてる場所が、エレベーターの右側入り口付近だけでなく、左右両方の入り口に設置されていたり、側面に車いすユーザー用の階数パネルが設置されているエレベーターがメジャーになればどうでしょうか。
聴覚障害のある人だけでなく、車いすユーザーや左利きの人も操作がしやすく、エレベーターを利用しやすくなりますよね。

または、階数パネルの増設だけでなく、音声の認識によって乗客が降りたい階数を各自の声で指定できるシステムがエレベーターに搭載されていたらどうでしょうか。
階数パネルに点字や凸文字がないことや、階数を音声で伝えてくれる自動音声ガイダンスがないことでエレベーターを使用しづらい視覚障害のある方や、コロナウィルスの感染予防のために「できればパネルは触りたくないな…」という人も、操作がしやすく、エレベーターを利用しやすくなりますよね。

このように、環境面の障害をなくすことにより、障害のある人が障害のない人と同様に日常生活において、「沢山の選択肢や状況の中から、より良い選択肢を選べる」社会になると良いなと思います。
ただし、環境面の整備には、どうしても多額の費用や時間がかかります。
そのような時、私たちには「ユニバーサルマナー」という奥の手があります!

今回はここまでとして、続きは次回お伝えします。
次回は、いよいよ、私のピンチを救ってくれた、素敵なユニバーサルマナーの救世主が登場します。


取り組み状況が一目でわかる! 聴覚言語障害者への配慮に関する簡易チェックリスト

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