The Valuable 500とは?
The Valuable 500(ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド)は、2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した、世界的なムーブメントです。
目的は、ビジネス・社会・経済において、障害者が活躍し、自らの潜在的な価値を発揮できるようにすること。そのために、ビジネスリーダーたちが自ら声を上げ、改革を起こしていこうという考え方です。
500社の経営者の賛同を募り、2020年のダボス会議で企業名を発表することが決定しました
経済や政治が主に話し合われるダボス会議において、「障害」にフォーカスしたセッションが設けられたのは初めてのことで、世界的な注目が集まっています。
なぜ今、世界でThe Valuable 500が求められるのか?
2019年現在、世界の障害者人口は約10億人。障害者とその友人や家族をあわせた購買力の総額は約8兆ドルとも言われており、大きな市場です。しかし、障害者に配慮した製品やサービスを提供している企業は4%と非常に少なく、多くの企業はビジネスチャンスを逃しています。
そして、日本でも障害者雇用は進んでいますが、障害者が自分の価値をビジネスで十分に発揮できているかと言えば、残念ながらそうではありません。障害者が働きやすく、パフォーマンスを発揮しやすくなるよう、企業内でバリアを取り除くことが、インクルーシブな社会づくりには必要です。
The Valuable 500に賛同するビジネスリーダー自ら、この必要性を呼びかけ、経営方針に組み込んでいくことで、ムーブメントを加速化させていく狙いがあります。
誰が始めたムーブメントなのか?
発起人はアイルランド出身の社会起業家、キャロライン・ケイシーさん。自身も視覚障害があります。
キャロラインさんの熱意あるプレゼンテーションが応援と共感を呼び、ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソンさん、アクセンチュアCEOのジュリー・スウィートさん、ユニリーバ前CEOのポール・ポルマンさんなど著名なビジネスリーダーたちがThe Valuable 500をサポートしています。
どんな企業が賛同したのか?
The Valuable 500への参加資格は下記のとおり。
・取締役会のアジェンダに、障害に関する内容を盛り込む・障害インクルージョンに関するアクションを一つ実施する
・そのアクションを、社内外に向けて発信する
・従業員1,000人の企業規模である
2019年内にアクションを実施しなければいけないわけではなく、実施に向けてコミットすることが条件です。つまり、すでに素晴らしい取り組みを実施している企業だけではなく、これから開始しよう!と意気込む企業も対象です。
2020年1月6日時点で、The Valuable 500への賛同企業数は200社。日本では、丸井グループ、三井化学株式会社、ソフトバンク株式会社、全日本空輸株式会社などが署名しました。
アクションの内容は「障害のある人に喜んでもらえる製品を、障害のある人と一緒に開発する」「身体の不自由な人が働きやすいよう、オフィス環境を改善する」など、企業によって本当に多種多様です。
日本財団が、ビジネスリーダーに積極的な参加を呼びかけ
しかし、欧米諸国の企業の参加表明は多いものの、日本ではまだまだ認知が広がっていないThe Valuable 500。そこでサポートに名乗りを上げたのが、日本財団です。
日本財団が「障害者とビジネス」に関する取り組みを後押しし、The Valuable 500への参加をビジネスリーダーに呼びかけました。
日本のビジネスリーダーに期待することや、2020年2月6日(木)に開催予定のセミナーについて、ここからは日本財団の石井靖乃さんにお話を伺いました。
なぜ日本財団がThe Valuable 500を支援しようと思ったのですか?
The Valuable 500のムーブメントが、社会に与えるインパクトは非常に大きいと感じたからです。
これまで日本財団では、主にNPOなどの非営利組織を支援してきました。日本財団自らが、聴覚障害者のための「電話リレーサービス」などのインフラを整備することもありましたが、営利企業を支援するケースはほとんどありません。
しかし、金額だけを見れば、日本財団の予算よりずっと大きいのは、日本の企業が持っている予算。日本の企業が本気になって障害者の活躍を支援しようと思えば、国や日本財団よりも、できることの規模は大きく、スピードも速いはずなんです。
それならば、日本財団がThe Valuable 500の認知を広げ、たくさんの企業に参加してもらうことで、障害者が活躍できるムーブメントをバックアップしよう!と思いました。
障害者のインクルージョンについて、企業にはどんな課題があると思いますか?
ビジネスリーダー(経営層)が「インクルージョンが企業価値を高める」ことの重要性を知らないことだと思います。やる気がないのではなく、知る機会が少ないのです。
リーダーが知らなければ、もちろん経営方針を決める重要な会議などで、障害者の活躍やインクルージョンについて話題にのぼることもなく、取り組みは始まりません。
企業のCSRやSDGs活動を担う部門や、障害者雇用をする人事部門だけは知っていて、一生懸命取り組んでいることもありますが、やはり「会社の重要な経営方針として進めていく!」というトップの意志がないと、大きなアクションにはならないことが多いです。
ビジネスリーダーがその必要性を知れば、ムーブメントは加速しますか?
そう信じています。
例えば、私がまだ一般企業に勤めていた25年前。環境問題へ積極的に取り組む企業はめずらしかったんです。しかし、2005年に地球温暖化防止のための「京都議定書」が発行され、2007年に環境ドキュメンタリー「不都合な真実」を作ったアル・ゴア氏がノーベル平和賞を受賞し、マスコミでも大きな話題になりました。
ビジネスリーダーたちが環境問題の深刻さを知り、顧客の関心も高まった結果、企業が環境問題に取り組むのは今や当たり前になっていますよね。
障害者のインクルージョンの認知とアクションも、同じ流れになると思っています。
The Valuable 500に署名した企業では、良い効果が生まれていますか?
アクションについてはこれから取り組む企業が多いと思いますが、ビジネスリーダーがThe Valuable 500について、社の経営方針を定める会議で語ってくれたというだけでも、本当に大きな変化だと思います。これまでは存在しなかった意識が、新たに生まれたということですから。
ここから徐々に、経営会議の場では障害者のインクルージョンについて毎回話し合われる、という状況になれば嬉しいです。
そして、署名した企業の多くは、プレスリリースや社内報で、コミットするアクションを発信してくださいました。「自分の会社はこんな素晴らしい取り組みを始めるんだ」と、社員の方々にも、ポジティブな印象が生まれたと聞きました。
それぞれの企業でどのようなアクションが起こるのか、とても楽しみです。
開催予定のセミナーについて教えてください。
2月6日(木)東京・京王プラザホテルで「Disability and Business〜インクルージョンが企業価値を高める〜」というセミナーを開催します。(記事最下部参照)
障害者のインクルージョンが企業にもたらす価値と、世界的なムーブメントを、日本企業の方々に知ってもらいたいと思い、企画しました。
セミナーの見どころはどこですか?
The Valuable 500の発起人・キャロラインさんが初来日します。世界の潮流を最前線で見てきた彼女に、ダボス会議で話し合われたことや、各国の注目すべき動きを語ってもらいます。
日本企業に期待することも話してくださるので、ぜひ、企業の関係者の方々には聞いてもらいたいです。
エビデンスとして「障害インクルージョンの意義に関する調査結果の報告」や、「日本の先進企業の取り組みの紹介」などもあります。
どんな人に参加してもらいたいですか?
メインターゲットは「障害者が活躍できる環境を作りたいと考えている企業の、部長職の方々」です。障害インクルージョンやThe Valuable 500に興味がわいたけど、どうしたら良いかわからない……という悩みを持っている人は、きっとヒントになるプログラムだと思います。
もちろん、上記にあてはまらなくても、どのような方にも無料でご参加いただけます!
まずは知ることから、私たちと一緒に、より良い社会のための一歩を踏み出してもらえると嬉しいです。
公開セミナー「Disability and Business〜インクルージョンが企業価値を高める〜」
主催|日本財団
日時|2020年2月6日(木)
会場|京王プラザホテル 本館42階「高尾」
日時|13時30分〜15時30分(開場13時)
主な対象|企業等で経営戦略、ダイバーシティ推進や人事を担当されている管理職の方、ビジネスにおける障害者のインクルージョンに関心のある方(定員:90名)
参加費|無料
プログラム(予定)
・障害とビジネスに関するグローバルな潮流と企業の役割〜世界経済フォーラムでの議論をふまえて〜/The Valuable 500創設者 キャロライン・ケイシー氏
・障害インクルージョンの意義に関する調査結果の報告/アクセンチュア マネジング・ディレクター 中村健太郎氏
・日本企業による取り組み事例紹介/
京王プラザホテル 取締役総支配人 バーズアイリーダー 北島力三郎氏
宴会部宴会予約マネジャー バーズアイメンバー 榎本しのぶ氏
宿泊部ゲストリレーションズ バーズアイメンバー 外山亜美氏
ソフトバンク株式会社、人事総務統括 CSR統括部 CSR部 CSR1課 横溝知美氏
・トークセッション/キャロライン・ケイシー氏、中村健太郎氏、モデレーター
備考
・日英同時通訳、手話通訳、字幕表示(日本語)があります。
・車椅子ご利用の方のためのトイレが、本館2階と5階、南館4階にあります。また、本館2階はユニバーサルトイレ(多目的トイレ)となっており、車椅子ご利用の方のほか、オストメイト、オムツ替えが必要な大人の方にもご利用いただけます。
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