参院選挙、投票所のバリアフリーはまだまだ?障害のある有権者869万人の現状

記事を書こうと思ったきっかけは、とある車いすユーザーがTwitterでコメントしていたのを見たからでした。

「応援したい人がいるから期日前投票に行ったけど、あんなに大変な思いをして、他人にも迷惑をかけてしまうなら、もう二度と行きたくない」

その方は、ご家族の予定を合わせ付き添ってもらい、タクシーで会場に赴き、投票に行ったそうでした。日本を良くしたいと思っての行動が「もう二度と行きたくない」という結果を招いてしまったことを、とても心苦しく、胸が痛む思いでした。

Twitterで実際に期日前投票や、過去の投票に行ったことのある、障害のある方々の声をもとに、投票のバリアフリーについて考えてみます。

障害者が投票時に受けられるサポートは4つ

障害がある方が、選挙の投票時に受けられるサポートは4つあります。

1. 郵便による投票
2. 代理人による投票
3. 代筆での投票
4. 点字での投票

「1.郵便による投票」と「2.代理人による投票」は、選挙会場に行かなくても投票ができる、不在者投票です。投票所まで一人で行くことが難しい人にとって、便利な手段です。

しかし、利用のハードルが想像以上に高いのです。まず、利用できるのは重度の身体障害者か、重度の要介護者のみ。肢体不自由で言うと、1級または2級の方のみなので、「両下肢機能の全廃または著しい障害」「両下肢を2分の1以上欠損」です。要介護者は、もっとも症状の重い「要介護5」なので、寝たきりの状態である方がほとんどです。

これ以外のほとんどの人は、障害があっても、実際に投票所に行かなければ、投票できません。

障害者の利用が増える、期日前投票

平成15年に期日前投票(投票当日に行けない人が、事前に投票できる制度)が導入されてから、利用者が激増しています。今や、投票者の6割が期日前投票を利用しているそうです。

実は、障害のある方にも、期日前投票の利用が増えています。その理由は「会場が比較的バリアフリー化されていること」と「比較的空いていて、スムーズにサポートを受けやすいこと」です。

投票当日の会場は公民館や小中学校であることが多い一方、期日前投票の会場には、商業施設も採用されています。特に障害のある方が足を運びやすいのは「イオンモール」や「イトーヨーカ堂」などの、大型ショッピングモールです。

公民館や小中学校で投票した障害のある方には、このような意見が目立ちました。

公共の古い施設になると、設備のバリアフリー化が届いていないようです。

一方、大型ショッピングモールでは、優先駐車場、多目的トイレ、点字ブロック、エレベーター、フラットな動線などが整備されています。貸出用車いす、オストメイト対応トイレ、点字案内板、触地図なども備えているところもあります。

元々は、投票にあわせて、買い物を促進させるなどの経済的なメリットから始まったようですが、障害のある人にとって、投票しやすくなるきっかけにもなりました。

投票案内のハガキには、住所と施設名が書いてあるだけで、その会場がバリアフリーかどうかわからなくて行けなかった……という意見もありました。フラットな動線があるかなど、ハガキに書いてあると良いですよね。

ハードのバリアフリーは、未だ惜しい状態

前回の参議院選挙に比べると、投票会場のバリアフリーは、徐々に改善されつつあります。しかし、姿勢は見えるものの、惜しい状態だと感じました。

仮設の設備はあるにはあるけれど、とても使いやすいとは言えないようです。スロープで言えば、鉄道などで利用されている持ち運び式かつ滑りにくい素材のものが市販されていますし、記入台のパーテーションなどは比較的簡単に設置できそうです。

すべてが急ごしらえなので、障害のある当事者の視点に立って、設備の確認がされていないのかもしれません。

投票のサポートは、ちょうど良い距離感が安心する

投票時には、スタッフの方々が、障害のある方のサポートをしてくれます。

例えば、自分で投票用紙を書くことが難しい人のために代筆。入場から退場まで、一連の誘導など。スタッフの方々のサポートが手厚く、優しかったというご意見も多く見られました。

一方で、こんなご意見もありました。

介助が必要ないタイミングでも、ずっと後ろで見守られている、という心理的な負担を感じる人が多いようです。

こういう体験談もありました。係員の多くは、自治体の職員さんや、アルバイトさん。初めて担当される方や、数年に1度担当される方がほとんどです。

代筆や点字投票を希望される人は、人数としては少ないので、慣れていなければ慌ててしまうのも仕方ありません。しかし、事前に知っておくだけで、できることは沢山あります。ハード面の設備が整わないのであれば、スタッフさんの研修を行う、というのも手かもしれません。

私たちがお伝えしている「ユニバーサルマナー」では、まず「何かできることはありますか?」と本人に尋ね、必要なことだけをサポートする、という姿勢を推奨しています。

精神障害、知的障害があって、コミュニケーションが難しかったり、人前でプレッシャーを感じやすかったりする方にとっても、スタッフの方のサポート体制が充実すると、安心します。

あと一歩の惜しい現状に、どこまで向き合えるのか

選挙の回数を重ねるごとに、投票のバリアフリーは確実に改善されています。投票所だけではなく、字幕放送に積極的な陣営、手話通訳を必ず実施する陣営なども出てきました。

「あと一歩」の惜しい現状に、どこまで向き合い、どこまでより良くできるかだと思っています。

投票所に自力で行ける人だけが投票できるシステムでは、障害のある人、ご高齢の人、子育て中の人など、課題を感じている多くの人たちの声は、政治に反映されません。社会は変わりません。

今回、Twitter上で最も多い意見は「インターネット上で投票できるようにしてほしい」でした。国のルールを今すぐ変えるというのは、難しいこともあると思います。しかし、今回、民間の商業施設が協力したことで、現状は確実に良くなりました。

民間だからこそ、できることもあると考えています。例えば、私たちが7月1日にリリースした「ミライロID」というアプリは、自治体が発行する障害者手帳の代替手段として使用できるようになりました。「ミライロID」を使って、障害のある方が投票の申し込みをしたり、サポートの予約をしたりする、といった未来も実現するかもしれません。

誰もが生きやすい、未来のために。私たちも声を届け、現状を変えていく姿勢を、持ち続けていきたいと思います。

最後に。今回の意見収集のために、お声を寄せてくださった皆様のおかげで、記事にすることができました。ご協力、ありがとうございました!

岸田 奈美Nami Kishida

株式会社ミライロ 広報部長

12歳の時にベンチャー企業を経営する憧れの父親が心筋梗塞による突然死し、17歳の時に母親(岸田ひろ実)が過労による大動脈解離に罹り緊急手術。後遺症で下半身麻痺・車いす利用者となった母が生きやすい社会へと変えることを目標とし、株式会社ミライロに創業メンバーとして加わる。広報部長を経て、現在は事業推進室所属。母との共著に「ママ、死にたいなら死んでもいいよ(致知出版社)」