インクルーシブな演劇空間を実現する6つのポイント【前編】

苫米地 麻衣

演劇公演を行う劇場では、毎回異なる多様な方々が劇場を訪れます。
そのため、どのニーズにも対応できるインクルーシブな空間づくりが必要となります。

今回は、国土交通省が策定した「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(平成28年度版)」をもとに、インクルーシブな演劇空間を実現する6つのポイントについて前編・後編に分けてご説明します。
本記事では、ポイント①~③をご紹介します。

ポイント①誰もが同じように利用できる動線を計画する

劇場では、障害者や高齢者が他の利用者と同じ経路を利用できるように、バリアフリー化・ユニバーサルデザイン化への整備を行うことが求められています。

【具体的な例】

  • 段差のない床やエレベーター、自動ドアの設置を行う。
  • 段差の解消が難しい場合は、スロープ階段昇降機などを設置する。
劇場入り口のスロープ

特に、観客がメインで使用する出入口・駐車場から客席までの動線は、念入りに計画しましょう。
また、出演者が障害者や高齢者となる場合もあります。
出入口・駐車場、楽屋から舞台への動線についても、ユニバーサルデザイン化の配慮が必要です。

ポイント②適切な寸法を計画する

多様な利用者に対応するためには、それぞれのニーズに合わせた、適切な寸法を知る必要があります。
例えば、一言で障害者といっても、障害の程度や状況により、求めるニーズは異なります。
そこで、障害のある当事者を含めた利用者とともに、寸法の検討を行う必要があります。

【具体的な例】

  • 客席空間内で区間 50m以内ごとに、車いすが転回できるスペースを140×140cm以上設ける。通路幅を120㎝以上確保する。
  • 車いすユーザーが前列の人の頭や、肩越しに舞台を見ることのできる視線(サイトライン)を確保する。サイトラインは、多様な車いすユーザーの目線の高さをもとに検討する。
  • 視覚障害者や聴覚障害者が、客席から上演内容や非常時の情報を得るための設備スペースを確保する。

特に、公演開始時や終了時、休憩時間など、短時間に多くの人が利用する場所では、ゆとりのあるスペースを確保するように心がけましょう。

ポイント③多様なニーズに合わせた客席の種類を提供する

障害者や高齢者が、同伴者や他の観客から孤立しないように複数の位置や種類、価格帯から客席を選べるようにしましょう。

客席の写真

 

【具体的な例】

  • 車いすユーザー用の客席は、全体の客席数のうち、0.5~1%以上の客席数を設置する。さらに、2か所以上の異なる階、位置に分けて設置する。
  • 乳幼児連れの利用者や、知的障害者、発達障害者、精神障害者に配慮した「個室空間」を設けることで、周囲を気にすることなく観劇を楽しめるようにする。
  • 座った姿勢を保つことがむずかしい利用者のニーズに合わせて、桟敷スペースなどを活用することで、観客自身にとって楽な体勢をとれるようにする。

誰もがよりいっそう観劇を楽しめるように、多様な利用者に合わせた客席を設置することが求められます。

まとめ

以上、インクルーシブな演劇空間を実現するための、3つのポイントについてご紹介しました。

誰もが同じような動線を利用できる。
自由に客席を選べることで、より観劇を楽しむことができる空間をつくる。
この機会に、インクルーシブな演劇空間について、考えてみてはいかがでしょうか。

次回の後編では、残りの3つのポイントについてご紹介します。


誰とでも気軽に訪れることができるレジャー施設とは?

資料ダウンロード(無料)

インクルーシブな空間づくりに関するご質問、ご相談はこちら

お問合せフォームはこちら

苫米地 麻衣

苫米地 麻衣

株式会社ミライロ ビジネスソリューション部 クリエイティブチーム。
大学では、ユニバーサルデザインを通じた建築やプロダクトデザインについて学ぶ。ユニバーサルデザインの考え方をもっと多くの人に広めたいという思いから、2020年より株式会社ミライロに入社。現在は、ディレクターとして業務に取り組む。
納豆があればおかずはいらないと感じるほどの無類の納豆好き。