ノウハウ
2020年07月08日

社会に存在する3つのバリア

木田 樹

私たちミライロでは、障害とは障害者が持っているものでも抱えているものでもなく、社会に存在するものと捉え、社会に存在するバリアは「環境」「意識」「情報」の3つに分けることが出来ると考えています。
今からその3つのバリアについて見ていきましょう。

1.環境のバリアについて

まずは環境のバリア。
「環境のバリア」とはハード面のバリアとも言います。
こちらは「車いすユーザーから見た階段」などが環境のバリアになります。
ではなぜ、環境のバリアが生まれるのでしょうか。

環境のバリアの例として、ここでは左利きについてお話したいと思います。
この記事の筆者である私は左利きです。
私は普段よく電車を利用するのですが改札ではいつも、定期券を左手から右手に持ち替えて通ります。
それは右側にタッチするところがあるからです。
また小学生の頃、体育の授業で野球をやる際に、左投げ用のグローブがなく右投げ用のグローブを使っていました。

このように左利きであるがゆえに困ることがしばしばありました。
左利きの私はなぜ日常で困ることが多いのでしょうか。
それは、大多数の日本人が右利きだからです。
日本で生活する左利きの人の割合はおよそ1割です。
つまり全体の約9割の人が右利きということで、社会は右利きの人を中心に作られています。
そしてそのような社会に、左利きの人は少なからず不便や不自由を感じているということなのです。

なぜ環境のバリアが生まれるのか?
車いすユーザーにとって、歩けないことがバリアなのではなく、歩ける大多数の人に合わせて作られた社会の側にバリアがあるのです。

2.意識のバリア

2つ目は意識のバリアです。
障害のある方を街中で見かけた時、多くの日本人は次のどちらかの態度になります。
それは「無関心」「過剰」です。
「無関心」は言葉のとおり、障害のある方や困っている方を見かけても見て見ぬふりをして、無関心を装うことです。
また「過剰」はそこまでの配慮は求めていないといった、悪く言えば押しつけのようなことをしてしまうことです。

過剰について分かりやすい例を出すと、「電車でご高齢の方を見かけた時に無理に席を譲ろうとする」などが当てはまります。

無関心も過剰もどちらが悪いというわけではありません。
声をかけてはかえって迷惑になると考え、無関心を装う方も多くいらっしゃいます。
また過剰は相手のことを思う気持ちが強いゆえ行っていることもあるのです。

写真 電車の車内

 

3.情報のバリアについて

最後に情報のバリアについて解説します。
情報のバリアとは情報そのものが情報の受け手のニーズに合わないような場合に起こるバリアです。
近年ではよくバリアフリーマップという言葉を耳にすることもあるのではないでしょうか?
バリアフリーマップとは多機能トイレの有無や、通路や段差の情報など、障害者や高齢者、バリアフリー施設を必要としている方々がバリアフリー情報を知ることのできるように工夫された地図のことです。

障害のある方の困りごとの1つに「多機能トイレの場所がわからない」ということがあります。
多機能トイレの場所はもちろん、トイレ内にどのような設備があるのか記載があれば、更に安心です。
「多機能トイレって車いすユーザーが利用するトイレじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。
車いすユーザーが入れる広さがある、というだけでなく、オムツを替えるシートや、オストメイト(様々な病気や事故などにより、腹部に排泄のための人口肛門・人口膀胱を造設した人)対応設備、LGBTの方も使いやすいオールジェンダートイレなど、一口に多機能トイレと言っても、それぞれ備えられている機能が異なります。
このような情報が事前に地図で分かることで、快適な外出にも繋がります。

他にも、視覚障害者にとって音声案内がない、聴覚障害者にとってアナウンスだけのお知らせになっている、なども情報のバリアに含まれます。
一つの方法だけで情報を伝えるのではなく、できるだけ多くのニーズに合わせた情報の提供ができることが望ましいです。

写真 東京メトロの路線図

 

まとめ

この記事では社会には「環境」「意識」「情報」の3つのバリアがあること、現状についてお伝えしてきました。
この3つのバリアの中で、どのバリアを解消することが最も重要なのでしょう?
それには明確な答えはありません。
どんな人がどんなことに困るのか、全てを解決できる答えはないからです。

それでは、すぐに解消できるバリアはどれでしょう?
それは「意識」のバリアです。
環境のバリアを解消するには、お金も時間もかかります。
しかし「意識」のバリアは私達の行動1つですぐに解消することができます。
困っている方に声をかけることから、一歩を踏み出してみませんか?

写真 ユニバーサルマナー検定開催の様子

 

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