※ミライロは、一般財団法人 花王みらい共生財団と連携し、障害のある生活者やそのご家族に向けて、生活場面で直面する悩みの解消につながる情報をお届けする取り組みをしています。
<目次>
皆さんから寄せられた声のご紹介(NEW)
本記事(「『はかる』『のせる』の困りごと、ありませんか?洗濯や歯磨きに関する皆さんの工夫をご紹介します」)を、ご覧いただきありがとうございます!
今回は、読者の皆さんから寄せられたアンケートの声をご紹介します。
「歯ブラシにハミガキをのせにくいので、この記事は具体的で参考になりました。」(60代~ 視覚障害)
「右半身麻痺なので、この商品はすごく助かってます。身体を洗うのも泡で出るタイプを使ってます。」(40代 上下肢障害)
「高齢の両親にもさっそく紹介したいです。使い方の動画が用意されているのも嬉しいです。」(20代 複合障害のある方の子)
「新商品の開発に、障害者のことも考えられていることを知り、少しうれしくなりました。」(60代~ 聴覚障害)
「日常生活で、自分でやれなくはないけど少し困ると言うような小さなことは、誰にも相談できていなかった。またこういう記事をお待ちしてます。」(20代 精神障害)
「自分にとっての当たり前が、すべてのひとに当てはまるものではないと改めて考えさせられました。みんながそういう視点を持つことが大事だと思います」(60代~ 聴覚障害)
ここで取り上げることができたのはほんの一部ですが、ご回答いただいたアンケートは、すべての声をありがたく拝見しています。記事の最後に「アンケート回答」ボタンがあります。ぜひ皆さんの声をお聞かせください。お待ちしています。
それでは、記事本編をご覧ください。
はじめに
シャンプーの容器にギザギザ状のきざみがついていることをご存じでしょうか?
このきざみは、触ることでシャンプーとリンスを区別できるようにつけられたものです。
実はこの容器、1989年に生活者の方から寄せられた声がきっかけで誕生しました。「シャンプーとリンスの容器が同じで紛らわしい。形を変えてほしい!」「洗髪時、目をつぶっていても区別がつくといい」「目が不自由なので容器に工夫をしてほしい」といった声です。
当時の調査では、約6割の方が洗髪時に「シャンプーとリンスを間違えたことがある」と回答しています。また「ボトルに輪ゴムを巻いておく」「同じ形の容器を使わない」など、間違えないためにさまざまな工夫をしていることもわかりました※1)。
※1) 花王「シャンプーのきざみに込められた思い」より掲載しております。
https://www.kao.com/jp/sustainability/me/universal-design/shampoo-notches/
このように、いただいた声や生活者との対話を大切にすることで、誰もが触ってわかりやすい「きざみ入り容器」が生まれました。
障害のある生活者やそのご家族が日常生活で直面する悩みや困りごとを理解し、その声を皆さんと、そして社会と共有しながら、解決につながる活動を行っていく。これはより良い社会を実現していくうえでとても大切なことと考えます。そこでミライロは、一般財団法人 花王みらい共生財団と連携し、障害のある生活者やそのご家族に向けて、生活場面で直面する悩みの解消につながる情報をお届けする取り組みをスタートします。
今後、皆さんへ日常生活に役立つ情報発信を定期的に行なっていく予定です。一方的な発信にとどまらず、皆さんとの対話を大切にしていきたいと思っています。その一環として、記事の最後にアンケートフォームを設置していますので、ぜひご感想と共に皆さんの困りごとや日常での工夫の声などをお寄せください。
アンケート調査から見る困りごと ”あるある”
公益財団法人 共用品推進機構が弱視者の方に実施したアンケート調査※2)によると、洗濯の不便な点として、「洗い上がりの確認に不便を感じる」と回答した人が18人(40%)と一番多く、洗剤に関しては、5人(約11%)が「液体洗剤の計量に不便を感じる」と回答しています。その不便さの理由としては、「手で触れてもわからない」や「透明な液体は見にくい」があげられています。
※2)弱視者不便さ調査報告書<見えにくいことによる不便さとは> p.112‐116/公益財団法人 共用品推進機構
https://www.kyoyohin.org/ja/research/pdf/fubensa_6_lowvision_2000_2.pdf
また、障害者・高齢者等の不便さに関する報告書※3)では、視覚障害者の方から「液体洗剤は、手で触ることができない物があり、視覚障害者にとって、目に代わる手を痛める危険性がある」「日用品の細かい操作ができない」「日用品の詰替えがむずかしい」といった回答もあげられています。
※3) 障害者・高齢者等の不便さリスト p.13-14/公益財団法人 共用品推進機構
https://www.kyoyohin.org/ja/research/pdf/fubensa_7_disability_older_list_2000_3.pdf
洗濯の際には、洗い上がりの汚れの確認や洗濯機の操作が難しいと感じている方が多いですが、目盛りや液体が見づらかったり、量るなどの動作がむずかしいことで、液体洗剤の計量に不便を感じている方も少なくないことがわかります。
これらの調査報告は2000年当時のものですが、障害当事者の方にとっての不便さは、現在でも大きく変わってはいないようです。次に現在の状況を当事者に聞いてみました。
当事者に聞いてみました
ユニバーサルマナー検定の講師で、生まれつき視覚障害があり、全盲(視力がまったくない状態)の原口さんにインタビューをしました。
●洗濯について
社会福祉法人 日本点字図書館の視覚障害者アンケート調査報告書※4)によると、適量を量るという動作について、「何回押せば一杯になるか」の経験を積んだり、「ハミガキ(歯磨き粉)を直接歯に付けたり」などの工夫をしている人もいるようです。今回、原口さんに普段の歯磨きについても聞いてみました。
※4) 朝起きてから夜寝るまでの不便さ調査 視覚障害者アンケート調査報告書(要約編) P.52 /社会福祉法人 日本点字図書館
https://www.kyoyohin.org/ja/research/pdf/fubensa_1_seeing_1993_10.pdf
●歯磨きについて
容器の形や中身が工夫された商品
洗濯や歯磨きに関するこれらの困りごとは、お使いの洗剤やハミガキ(歯磨き粉)を変えることで解消できるかもしれません。ここでは、容器の形や中身が工夫された商品をご紹介します。
~キャップで量らずに使える衣料用液体洗剤~
● 片手でレバーをプッシュすると洗剤が適量出るタイプの容器
片手でレバーを押すことで、洗濯物の量に合わせて、適切な量を洗濯機に直接投入できる「ワンハンドタイプ」の洗剤があります。キャップを開ける、キャップで量る動作が不要なため、動作や見え方に制限のある方にも使い勝手がよくなっています。
ただ、ご自宅の洗濯機がドラム式なのかタテ型なのかによって、適切な商品が異なる場合があります。また洗濯物の量に応じて何回レバーをプッシュすればよいかなど、特に新しいタイプの商品を使う際には、使用方法や使用上の注意をしっかり確認しましょう。これらは、商品にも記載がありますが、メーカーの公式ホームページでもよりわかりやすく紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。
<ワンハンドタイプ衣料用洗剤>
~使用した方の声※~
・私も夫も目が見えないので、危険とわかっていたがキャップで量るものは指を入れて量るしかなかった。でもこれは指をいれなくてもプッシュの回数で計量できるので、初めて使った時すごくうれしかった。本当に感謝している。
・母は祖母と二人暮しですが、祖母が高齢&認知症のため液体洗剤の計量ができず母にとって、かなりストレスになっていました。ワンハンドタイプに変えたら、ストレスゼロ!新しいことを受け入れることが難しくなってきた祖母でもすぐに規定通りに使え、母も洗剤の量やこぼしていないかを確認しなくてよくなりラクになったとのことです。とても素敵な商品に感謝です。
・とても簡単で楽に洗剤が投入でき感動しました。私は「関節リウマチ」という持病があり、手首が痛いときにはペットボトルの開閉はおろかボールペンのノックすら押せないほどの痛みです。洗濯時も洗剤のキャップを回すのがつらい時があり、利き手と逆の手や脇や膝に挟んだりして何とか回していました。このワンハンドボトルならそんなに痛みに耐えることなく使用でき、もちろん洗濯物もよく汚れが落ち、とても感謝しております。ありがとうございます。
・私は両脊髄梗塞という病気のため、下肢と右手が不自由です。なんとか自分の身の回りのことはできていますが、支えなしで立っていることは難しく、洗濯時に片手でできる容器が大変助かっています。
※メーカーのお客様相談室に寄せられたご意見を提供いただいています。
(声が寄せられた商品:花王 アタックZERO(ゼロ)ワンハンドタイプ)
● ボール状やスティック状の衣料用洗剤
そのほか、ボール状やスティック状の、そのままポンと洗濯機に入れるだけのタイプの洗剤もあります。これらは詰め替えの必要がないのはもちろん、残りの個数がわかりやすいので、買い忘れを予防できたり、買いだめし過ぎたりすることも防げますね。
このタイプの洗剤は、水で濡れると外側のフィルムが溶けて、中身がこぼれてしまうことがありますので、濡れた手で触らないようにしましょう。また、誤食のおそれのある方が誤って口にしないような場所に保管することも大切です。
<スティック状衣料用洗剤>
~使用した方の声※~
・目が悪いので、洗剤を量るのがだんだん難しくなってきたので、量らずに使えてとても便利。
・汚れ落ちもよいし、商品が軽いので持ち帰る時に便利でとても良い。液体洗剤は重くて買い物時はカートに入れて買っている。
・使う時、液体洗剤は重くて持つのが大変だが、スティック状だと簡単だし軽くてとても助かっている。ぜひ開発者にも伝えてほしい。
・先日スティックになった粉末洗剤が発売されたので、早速、高齢の姉にも紹介して買った。姉は計量しなくてよいから便利だと感激していた。計量不要だけでなく、詰替えなくてよい点もとても良い。
※メーカーのお客様相談室に寄せられたご意見を提供いただいています。
(声が寄せられた商品:花王 アタックZERO(ゼロ)パーフェクトスティック)
~チューブを絞らず、片手で使えるハミガキ~
● 泡タイプのハミガキ
泡を直接舌にのせるタイプのハミガキがあります。ボトルの中央を押してノズルから泡を出すようになっているので、片手で出すことができます。
両手を使ったり、力を入れてチューブから絞り出したりする必要がなくなるため、動作に制限のある方も軽い力で使うことができますね。また、ハミガキを歯ブラシにのせなくてよいほか、ボトルの中央を押している間だけ泡で出てくるため、こぼしにくく、見え方に制限のある方にも使いやすそうです。
<泡タイプのハミガキ>
~使用した方の声※~
・リウマチなので、手に力が入らない。いつものチューブのハミガキは最後の方は中身を絞るのも大変。このハミガキは片手で押せば泡が出る。今は自分の力で使えている。嬉しくて電話しました。
・発達障害の子供がおり、歯磨きは本当に困難でした。ある時、泡ハミガキの宣伝をみて、良さそうなので、後日購入いたしました。泡が出るのが面白いのか、歯磨きも自分からすることが増えました。大人が対象の商品とは思いますが、日常生活に困難を抱える息子の清潔管理が、一つしやすくなりました。泡ハミガキのおかげで、お口の悪臭から脱することができました。本当に感謝しています。
・使い初めにノズルの角度を変える必要があるので、片手では泡の出口の角度を変えることはできません。脇か膝で本体を挟む必要があります。しかし、一度角度を変えれば、使用後、元に戻さなくても泡が漏れでることはありません。もちろん片手で泡を口に入れることは、簡単にできます。個人的な感想ですが、この商品こそ、介護用具といってもいいくらいの共用品だと思います。
※メーカーのお客様相談室に寄せられたご意見を提供いただいています。
(声が寄せられた商品:花王 ピュオーラ 泡ハミガキ)
動きに制限のある方だけでなく、発達障害のある方にも泡タイプのハミガキが役立っているようです。一方、この様な容器の形のハミガキを使ったことがない方は多く、初めはどのように使えばよいかわからないといった声もあったようです。
<泡タイプのハミガキ>
~使用した方の声※~
―初めてで使い方がわからなかった事例―
・使おうとしたが、ノズル部分をぐるぐると回していたら開いた状態からうまく締まらなくなってしまった。視覚障害なので、こういった形状のものは上から押して液を出す構造だったので、同じかと思ってしまった。見える人に見てもらったら、真ん中を押すと教えてもらった。
※メーカーのお客様相談室に寄せられたご意見を提供いただいています。
(声が寄せられた商品:花王 ピュオーラ 泡ハミガキ)
新しい形状の商品を使う際は、最初に使い方などを確認しましょう。
この泡タイプのハミガキはノズルを回し、舌の上にワンプッシュで泡を出し、クチュクチュしたあとはブラッシングという流れです。ハミガキを歯ブラシにのせる必要がないので便利ですね。わかりやすいメーカーの動画がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
泡ハミガキの使い方の動画
他にも、置いたままでも軽い力でボタンが押せてハミガキ(ペースト状)を出せる、新形態のポンプ式ハミガキやチューブ式でもハミガキを出す穴が小さいなど、歯ブラシにのせやすいものがあるようです。ご自身の状況に合ったものが見つかるかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は洗濯や歯磨きに関する「はかる」「のせる」をテーマに、動作や見え方に制限のある方の困りごとや困りごとを解消するための工夫をご紹介しました。
日常生活には多くの動作が存在し、それぞれに困りごとを感じている方がいらっしゃいます。より多くの方に皆さんの困りごと、そして工夫を知っていただき、お困りの方のお役に立つことができればうれしく思います。
冒頭にも記した通り、障害のある生活者やそのご家族が日常生活で直面する悩みや困りごとを理解してその声を皆さんと、そして社会と共有しながら、解決につながる活動を行ってまいりますので、ぜひご感想と共に皆さんの困りごとや日常での工夫の声などをお寄せください。
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