みなさんは、「WEBサイトのバリアフリー」について考えたことはありますか?
街で見かけるスロープや点字だけではなく、バリアフリーやユニバーサルデザインはWEBサイト上でも見ることができます。
本記事では、弊社の全盲の社員、原口とともに「WEBアクセシビリティ」をキーワードにWEBサイトのバリアフリーについてお伝えいたします。
そもそも「WEBアクセシビリティ」とは?
「WEBアクセシビリティ」とは障害者や高齢者を含む、「誰もが」使いやすいWEBコンテンツを意味します。
海外では国際連合で2006年に採択された「障害者権利条約」を背景に、情報にアクセスできることも人権の1つであるという認識が広まってきています。
WEBアクセシビリティの国際規格である「ISO/IEC 40500:2012」や、WEB技術の国際的な標準規格化を推進する標準化団体「World Wide Web Consortium(W3C)」が勧告する「WCAG 2.0」といった規格などをもとに、現在では世界各国で同じ品質基準が用いられ、様々な企業がそれに準じたサイト構築・改修をしています。
2016年に施行された「障害者差別解消法」によって、日本でも、企業のWEBアクセシビリティ対応は努力義務であるとされています。国家規格である「JIS X 8341-3:2016」というWEBアクセシビリティ基準があり、「日本産業規格」「JIS規格」と呼ばれています。※1
その規格の中では、ランクがA~AAAまで定められており、行政や公的機関のWEBサイト等ではAAランクに準じたサイト構築が行われています。しかし、実はこうした基準は民間のWEBサイトにはほとんど浸透していないのが現状です。
【注釈】
※1 ウェブアクセシビリティ基盤委員会「JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA)」(2018年12月版)
視覚障害者はどうやってWEBサイトを閲覧しているの?
視覚障害者がスマホの操作をしている…パソコンでWEBサイトを閲覧している…
そんな場面を見かけたことはありますか?
実は、障害者全体のインターネット利用率は53.0%と高く、視覚障害者だけでみても91.7%の方が利用しているという調査結果があります。※2
では実際にどうやって閲覧しているのでしょう?弊社の全盲の社員、原口に聞いてみました。
原口)
私は普段パソコンを使用する際は、画面の情報を音声で読み上げてくれるスクリーンリーダーというソフトを使用しています。スクリーンリーダーを使用することで、パソコンの画面が見えなくても文章を作成したり、メールを送ったり、WEBページの閲覧が可能になります。
また、パソコンを操作する際は、マウスなどは使用せず、すべての操作をキーボードで行っています。ご存じない方も多いと思いますが、パソコンはほとんどの操作がキーボードで行うことができます。
日々のニュースや、近くのお店の情報、ネットショッピングまで、私はほとんどの情報をインターネットを活用して取得しています。
私の生活の中でインターネットは、なくてはならない存在です。
【注釈】
※2 出典:総務省「障がいのある方々の インターネット等の利用に 関する調査研究」(平成24年6月)
視覚障害者にも見やすいWEBサイトとは?
聞き手)
では、スクリーンリーダーを用いたWEBサイト閲覧で、必要な情報にスムーズに辿り着くにはどういうことを意識すれば良いでしょうか?
どんなルールを守れば視覚障害者にも分かりやすいWEBサイトの提供ができるのでしょうか?
原口)
現在多くのWEBサイトが存在していますが、スクリーンリーダーを使用してWEBページを閲覧している視覚障害者にとっては、見やすいページ、見にくいページがあります。
視覚障害者にとって、見やすいページとは、
・必要な情報へすぐにアクセスでき、スクリーンリーダーが「すべての情報」を読み上げてくれること。
・そしてその読み上げられた情報が整理整頓されていること。
であると考えます。
また、スクリーンリーダーに対応している、ページの情報を読み上げてくれる、ということは視覚障害者がWEBページを閲覧するうえで大前提として必要なことですが、ただ読み上げればよいという訳ではありません。
例えば、ネットショッピングをされる方なら1度は見たことがあるであろう、某ネット通販サイトを例に挙げてみます。
一つのページに商品の情報だけでなく、多くの広告が一緒に出てきてクーポンの情報やイベント情報、他の商品のPR記事など所狭しと並んでいます。スクリーンリーダーではそういった広告の内容も「すべて」読み上げてしまいます。
1ページ当たりの情報量が多すぎると、自分が必要としている情報にたどり着くのに情報の取捨選択を何度も行わなければならず、必要な情報を見つけるのに時間がかかってしまうのです。
晴眼者でもそうではないでしょうか。ごちゃごちゃたくさんのモノが並んでいる部屋よりも、きちんと整頓された部屋の方が、探し物は容易になりますよね。視覚障害者にとっても、整理整頓されている、ということは情報を探し出す際に大きな助けになります。
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画像や写真はスクリーンリーダーで読み上げられない
聞き手)
必要な情報へたどりつけるように情報が整理されたサイト作りを心がけると良いというのはよくわかりました。
それ以外にも、配慮すべきことがあれば教えてください。
原口)
最近ではスクリーンリーダーが読み上げることができないものも増えてきました。
それは、画像や写真です。
スクリーンリーダーが読み上げることができるのは、あくまで「文字情報」です。写真の内容を判断して読み上げたり画像を解析することはできません。ブログなどを閲覧していて、写真が貼られていても、そこに写真があるのか、どんな写真なのかが私にはわかりません。
しかし、画像や写真の内容を代替テキストで書いていただくだけで、スクリーンリーダーを使用している視覚障害者も内容や情景を把握できるようになります。
例えば、上の写真に、「視覚障害者が点字ディスプレイ(※3)を使って会議に参加している写真」というような代替テキストを付けていただくことで、会議中の写真であることが私にも分かります。
少しの配慮で、視覚障害者が閲覧しやすいページはできると考えています。
【注釈】
※3 点字ディスプレイ:点字を表示する電気機械式デバイス。パソコンにつなげることで、スクリーンリーダーの情報を取り込んで、点字として表示したり、点字入力でテキストデータを出力するものなど、モノによって機能は様々。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は視覚障害者に対しての「WEBアクセシビリティ」について一部をご紹介しました。
WEBサイト閲覧にはスクリーンリーダーという音声読み上げ機能が活用され、今日では多くの視覚障害者がネットショッピングなど、WEB上での情報収集を楽しんでいます。ところが、WEBアクセシビリティの整っていないサイトでは音声読み上げにスムーズに対応していないことによって、情報の取得を諦めてしまうといった場合も…
アメリカではこうしたWEBアクセシビリティの未整備により、訴訟にまで発展するケースも増えてきています。
WEBアクセシビリティは今や国際的な常識と言えます。
日本でも障害者はもちろんのこと、「誰もが使いやすいWEBサイト」を当然の配慮として推進するため、意識を変えていく必要があるとミライロでは考えています。
こうした音声読み上げはスマートフォンでも体験することができます。
iPhoneであれば「Voice Over」、androidであれば「Text To Speech(TTS)」という音声読み上げ機能が標準装備されています。
自社のサイトや身近な通販サイトがどのように読まれるのか、ぜひ一度チェックしてみてください。
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