ノウハウ 施設・設備
2020年07月15日

【街中のユニバーサルデザイン】バリアのはなし

藤原 修

バリアがあるとか、バリアフリーとか何気なく使いますが、そもそもバリアって何でしょう。
以前、物理的バリアの代表として「溝」についてお伝えしました。
【空間のユニバーサルデザイン】溝のはなし〈前編〉〈後編〉

他にも、代表的なバリアは段差・障壁があげられますが、そのうち溝と段差は必要に応じて出来てしまい、その結果がバリアになるもの(排水溝・用水・階段・スロープ)です。
しかしながら、それに対して障壁(フェンス・ガードレール)はバリアを目的に設置されるものです。
今日はこの障壁について、お話したいと思います。

障壁は元々、車などから人を守るために設置されたものですが、これがなかなか、厄介で強力にベビーカーや車いすの行動を妨げるものです。

車止め・バリケード

歩行者を車から守ったり、工事や道路に穴が開いた時、歩行者や車の安全を確保したりするのに必要なものが、車止めやバリケードです。

・A型バリケード

写真 A型バリケード

 ・B型バリケード(フェンスバリケード)

写真 B型バリケード(フェンスバリケード)

これは仮設なので、工事が終われば撤去されて問題は少ないです。

バリアを見てみましょう。

写真 公園入口にある、等間隔に並べられたポール型の車止め


上の写真は一般的な公園の入口の車止め(バリア)です。
車止めポールの間隔は90cmとなっています。
ベビーカーや車いすが通行できかつ自動車(軽自動車の車幅148cm)が入場出来ないようになっています。
また、床段差も無いように設計されています。
公園においで下さいと招いているように見え、障壁(バリア)が適切に利用されている例と言えます。

写真 U型の車止め。重なるように設置されているため、ベビーカーや車いすが通れない。


一方こちらの写真では、U型の車止めの間隔が45cmしかありません。
車いすはもとより、ベビーカー・シルバーカーも入ることができません。
先ほどの写真と異なり、見るからに閉鎖的な印象を与えます。

写真 横から見たU型の車止め。前後の間隔が狭い。


そして残念なのはこの写真。
入口は前の2本の脚の間隔は90cmありますが、次の車止めとの間隔が60cmしかありません。
なぜ前後の間隔がこんなに狭いのか。
理由はその後ろに溝が有るからです。
溝蓋(グレーチング)はちゃんと細目の滑り止め加工のあるものでキャスターの落下を防ぐものが設置されていますが、そもそもこの車止めの間隔では、ベビーカーや車いすが通れない可能性があります。

現場の職人さんの問題でしょうか。
いえいえ、現場の職人さんは設計通りに真面目に作っています。
U型車止めが写っている上の2つの写真で共通なのは、設計段階からのユニバーサルデザインの視線が欠けていることです。

写真 木の成長が原因で、地面が盛り上がっている様子
この写真はどうでしょう。
仮に完成時にユニバーサルデザインを満たしていたとしても、施設や環境は時と共にダイナミックに変化します。
上の写真は、入口間際に2本の樹木を植えています。
完成時には細い小さな木だったと思います。
それが長い年月を経て成長し、根が舗装や車止めの基礎を持ち上げ(根上り)、結果として凸凹の路面になってしまったのです。
車いすやベビーカーの問題では無く、一般の歩行者でも危険な状態となっています。
ユニバーサルデザインの視点は、現在の状態だけでは無く、その施設や建物の将来も見据えて、10年後20年後の状態を予測する視線が重要となります。

写真 車止め部分がごみ置き場になっている写真

 

最後の例です。
実際にはこの車止めも問題なのですが、車止めそのものがリサイクルゴミ置き場と利用されて、新たなバリアを生んでしまっています。
ユニバーサルデザインは、それを利用される人のマネジメントも含めてのデザインとなります。
施設や設備が満足していても、最終的にはそれを使う人の意識も重要です。
ハードだけでは無くハートも必要なのです。

まとめ

バリアは本来は人の安全を確保するもの、外敵から守ってくれるものです。
さらに、多様な人を受け入れて、安全を確保することは、人の運用にかかっています
拒絶するのも、受け入れるのも人次第、人のハートに依存します。


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