皆さんは、こんな疑問を感じたことはありませんか?
「車いすを利用する方やオストメイトの方などが利用するトイレって名称が色々あるけど、どれが『正解』なんだろう…」
そこで今回は、ミライロが運営する調査サービス「ミライロ・リサーチ」に登録している、障害があるモニターさんに「トイレの名称」について聞いてみました。
※質問時の名称は、「優先トイレ」を用いています。
トイレの利用状況
今回の調査では、ご回答いただいた方に、普段どのトイレを利用しているのかを伺いました。
普段から優先トイレを利用している方の関心が高く、「優先トイレのみ利用する」方だけで全体の35%の回答を占めました。
障害のある方が考える最も適切な名称って?
今回ご回答いただいた皆様には、「多目的トイレ」「車いすトイレ」「誰でもトイレ」「優先トイレ」「多機能トイレ」「みんなのトイレ」「どれでも良い」「その他」の8つの選択肢の中から、最も適当だと思う名称を選んでいただきました。
◆ 1人1票を投じてもらった結果
以下の順位になりました。
1位 「優先トイレ」
2位 「多目的トイレ」
3位 「多機能トイレ」
※その他の意見として、「身体障害者用トイレ」「障害者優先トイレ」「専用トイレ」「ユニバーサルトイレ」などが挙がりました。
「優先トイレ」「多目的トイレ」「多機能トイレ」が適当だと思う理由
では、それぞれ適当だと思う理由を見てみます。
3位「多機能トイレ」
●「優先トイレ」というと、何が優先なのかがわからず、また「車いす用」と書くと、車いす以外の方が入りづらい。トイレの前にオストメイト機能あり、手すり、着替え台があり、ベビーチェアがあり、オムツ替え台あり…などのマークなどが浸透していって、それぞれ記載があればわかりやすいし、利用する側も判断しやすいなと思う。(40代女性/肢体不自由)
●「誰でも」と言われると違和感があり、かと言って「車いす」と限定するのも違うと思います。色んな方が使える、という意味合いを保ちつつも、適度に緊張感がありいいと思います。(40代女性/肢体不自由)
2位「多目的トイレ」
●障害があってもなくても、見た目的に判断しにくくても、「多目的トイレ」という名称だと利用しやすくなると思います。(40代女性/肢体不自由)
●どれもあまり適切な表現の名前がなく、かと言ってその他で思い浮かぶ名称もないので、無難な所を選んだんですが多目的と言うのもなぁ…というところです。(60代以上男性/肢体不自由)
1位「優先トイレ」
●障害者や妊婦さん、小さい子ども連れの人が優先的に利用できるようにしてほしいから。 誰でもトイレ、多目的トイレだと意味を理解せず本当に多目的に利用する人や本当に誰でも利用してしまうと思う。(40代女性/お子様が知的に障害がある)
●障害のある人や妊婦さんなど、「困りごとがある人が使うトイレだ」と1番わかりやすい名称と思ったから。(20代女性/肢体不自由)
●「車いすトイレ」は利用者を限定してしまう。「誰でもトイレ」「みんなのトイレ」は優先トイレを利用しなくても通常のトイレを利用できるという方が利用してしまう。「多目的トイレ」「多機能トイレ」はその名称の意味が分かりにくい。優先トイレしか選択肢をもたない人の「利用する権利」を担保することが必要ではないかと思う。(60代以上男性/肢体不自由)
対象者によって違う?適当な名称
最初に挙げたトイレの利用状況から、「優先トイレのみ利用する」「優先トイレを利用し、場合によっては一般トイレも利用する」と回答したチームと、「一般トイレのみ利用する」「一般トイレを利用し、場合によっては優先トイレも利用する」と回答したチームに分けて結果を見比べてみました。
優先トイレチームは、以下の結果になりました。
1位「優先トイレ」
2位「車いすトイレ」
3位「多機能トイレ」
対して、一般トイレチームは、以下の並びになりました。
1位「優先トイレ」
2位「多目的トイレ」
3位「多機能トイレ」
障害のある方の中でも、優先トイレの当事者と非当事者で意見が分かれるようです。
大切なこと
ここまで、トイレの名称について障害のある方のお声をピックアップしてお伝えしました。
今回いただいたどの意見にも、共通していたことがあります。
それは、「本当に必要な人が適切に利用できるようにしてほしい」ということでした。
●名前どうこうではなく、利用者のモラルの問題だと思う。(30代女性/聴覚障害)
今回、多くの方々からいただいたご意見にもある通り、名称に正解はなく、もしかしたら何でも良いのかもしれません。
大切なのは、その必要性を知り、そして、思いやりを持つこと。
残念ながら、モラルの欠如や無知によって、本当に必要な人が適切に利用できないといった状況が生じています。
時間はかかるかもしれませんが、ある一定のルールの下、国や自治体、企業や施設、そして一人ひとりが啓蒙活動を行い、『正解』を広めていきたいですね。
出典:国土交通省
まとめ
名称論争は、トイレ以外でもたまに目にします。
たしかに、名称は正しい理解へのきっかけになったり、アイデンティティ保護に役立ったりする場合がありますが、適切な名前を付けても、正しく利用されなければ意味がありません。
『正解』は、一人ひとり異なります。『適切』な利用を、『適切』な啓蒙活動によって広げていくことが大切です。
このようなミライロの発信が、正しいトイレの利用に少しでも繋がれば幸いです。
この記事を通して障害のある方への向き合い方やこころづかいを学びたいと思った方にはユニバーサルマナー検定がおすすめです。
ミライロ・リサーチでは、障害がある方のお声をブログ記事として社会に発信しています。
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