「誰一人取り残さない」というSDGs(持続可能な開発目標)の理念を聞いたことがあるという方は多いと思います。
また、SDGsの達成に向けて、民間企業も大きな役割を担っているということも、広く知られるようになりました。
近年、経営者からのトップメッセージでSDGsへの貢献に触れたり、経営理念や事業戦略をSDGsと関連付けたりする企業が増えています。
SDGs達成の目標年次は2030年。
今後10年間の取り組みに、企業の本気度が現れます。
持続可能な世界の実現に企業が貢献するには、ビジネスのあらゆる場面におけるダイバーシティの尊重、そして、すべての人のインクルージョンに向けた公平性への配慮が不可欠です。
企業に求められる役割
SDGsの達成に向けて企業に期待される役割として、真っ先に思い浮かぶのはどんなことでしょうか。
SDGs本文には「民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包括的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である」と書かれています。
企業の貢献という文脈では、技術開発に向けた投資やイノベーションなどに力を注いでいる事例が多く見られます。
例えば、環境保護に向けて、再生エネルギーの活用、省エネ技術の開発などの取り組みが進んでいます。
また、利益の一部を慈善活動に充てるなどの限定的な取り組みではなくて、ビジネスモデルにSDGsの観点を組み入れ、本業でSDGs達成に寄与することが必要である、という認識も広まっています。
いずれも、企業の役割としてとても大切なことです。
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その取り組みはSDGsの理念と相反していませんか
ここで忘れてはならないのは、企業がSDGsを意識した施策を進める中で、他の活動が、SDGsの根底にある「誰一人取り残さない」理念と相反していないか、という視点です。
例えば、公共交通機関において環境への負荷の少ないエネルギーを利用することは重要ですが、その交通機関が、高齢者や障害者などにとって使いづらいものであれば、「目標11 . 包摂的で安全かつ強靭的(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」の達成には貢献できていないことになります。
次に、「目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」について考えてみます。
障害者を含むすべての人が、働きがいのある人間らしい仕事を通じ、同一労働同一賃金を達成することが、この目標のターゲットとなっています。
SDGsの他の目標に取り組む中で、この目標が軽視されていないでしょうか。
あなたの職場では:
・誰もが自分らしく活躍できる企業文化の醸成
・個々のニーズに合わせたサポートの提供、制度の調整や環境整備
・情報へのアクセスや平等な参加の機会の提供
・採用プロセスや人事異動、育成、昇進における公平性の保障
などは実践できているでしょうか。
(SDGs目標8の達成に向けた取り組み)
そして、視野を消費者に広げて:
・すべての人が利用しやすい施設や製品、サービスの提供
・特別なニーズの把握、届きづらい声の拾い上げと対応
・提供可能なサポートに関する情報発信
などに取り組むことは、多様な人々の社会参加を促進し、インクルーシブな社会づくりにつながります。
(SDGsの複数の目標に関わる取り組み)
さらに、従業員や顧客だけでなく、原材料の調達や製造の過程に関わる人々へも目を向けることが大切です。
企業には、ビジネス活動のいかなる場面でも、社会的弱者に対する差別や不平等が起きないようにする社会的責任があります。
(SDGs本文で挙げられている「ビジネスと人権に関する指導原則」の遵守)
「持続可能な開発」3つの要素の調和に向けて
SDGsの目標年次2030年まであと10年。
SDGsの達成に貢献すべく、多くの企業がビジネスのあり方を見つめ直し、行動を起こしています。
その内容や成果がこれからますます注視されることでしょう。
SDGsの目指す「持続可能な開発」の達成のためには、「経済成長」、「社会的包摂(インクルージョン)」、「環境保護」という3つの要素の調和が欠かせません。
例えば、環境に配慮した経済成長に向けて意義のある取り組みをしていても、ビジネス活動のどこかで社会的弱者の排除や差別が発生していたら、SDGsの「誰一人取り残さない」理念に反していることになります。
もちろん、企業が一社でできることには限界があります。
SDGsでも、国や自治体、企業、市民社会の連携が重視されています。
できることから始め、見直しつつ、改善していくことが大切と考えます。
まずは身近な職場から、そして顧客やエンドユーザー、さらには自社のビジネスに関わるすべての人について、「誰一人取り残さない」ために、できることから行動を起こしてみてはいかがでしょうか。