ノウハウ 施設・設備
2020年06月10日

【空間のユニバーサルデザイン】溝のはなし〈前編〉

藤原 修

今回は様々なバリアの中でも、「溝」についてお話したいと思います。
溝と一口に言っても、夫婦の溝、世代間の溝、親子間の溝など様々な形で表現されますが、ユニバーサルデザインの観点から、普段何気なく目にしている公園や道路の溝についてお話します。

溝ってなんだ?

溝は人が作るもの、例えば、日本最古の溝は福岡県那珂川市にある「裂田溝」。
1300年経っても今なお、現役の用水路として活躍しています。
そこから出た言葉が人間関係に転じて「溝が生じる」「溝が深まる」「溝が埋まる」といった表現をします。
何もしなければ溝は出来ないので、人工的な「溝」という言葉はしっくりきます。
この人工的につくられた溝が、バリアになります。
人間関係の溝もそうですが、このバリアを解消するには、本当に溝を埋めるのか、それとも橋渡しをして溝を越えるよう設計するのか考える必要があります。

写真 車いすユーザーとユーザーでない人が一緒に仕事をする様子

L型溝

段差かと思ったら、溝だったんです。
歩道の無い比較的狭い道路と家の敷地の境にある段差をL型溝(L字溝ともいう)といいます。
どう見ても溝に見えないですが、道路の断面をみると分かります。
下記に道路の断面図を示します。

L型溝 /道路\ L型溝
※道路の中央が一番高く水は両サイドの溝に流れます。

図 L型溝のある道路の断面。

 

写真 L型溝のある道路

 

すなわち、道路を歩くことは、図の様にかまぼこ型の空の溝の底を歩いているようなものです。
人は自然に補正しながら歩きますが、車いすやベビーカーは何もしないでいると外側に流れてゆきます。

溝(バリア)を解消する

人も車いすもベビーカーも溝を越えないと、道路から他には行けません。
そこで、溝を埋めるか、橋渡しが必要となってきます。
そこで、L型溝の壁を削る(歩行者・車いす用は溝の壁に高さが2cm)または、橋掛け(スロープの設置)が必要となってきます。

正に溝が無くなったり、埋められている状態が、段差の切り下げスロープ設置です。

〇L型溝の切下げ(2cm)
写真 L型溝を2㎝切り下げている公園の入り口
〇簡易スロープの設置

写真 簡易スロープを設置している道

 

まとめ

単に段差と言っても、階段のように高くなる段差ばかりでなく、溝も段差となります。
溝は必要ですが、それがバリアとなって道や建物だけではなく、人の往来も分断します。
ユニバーサルデザインは、建物や通路ばかりではなく、人の行き来、ひいては人と人の関係も分け隔てなくフラットにし、心も豊かにすることができるのです。

◆後編はこちら


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