本記事では、日常生活で肢体不自由の方、視覚障害のある方が日用品で不便を感じる物や工夫について対談形式でお伝えします。
※ミライロでは過去3回にわたって障害者の日常生活を紐解くイベントを開催しました。
今回の記事では過去回で出た意見のエッセンスを対談形式でお伝えします。
障害のある当事者に聞いてみた!
キッチン周りの工夫ポイント
【登場人物】
祝原 :インタビュワー、障害なし
原口 :ミライロスタッフ、視覚障害者(全盲)
岸田 :ミライロスタッフ、下肢/体幹機能障害
モニターA :ミライロ・リサーチモニター、上下肢/体幹機能障害
祝原
キッチン周りで工夫していることや物を選ぶときに気にかけていることはありますか?
岸田(下肢/体幹機能障害)
ポンプ式の食器用洗剤を選ばないようにしています。
人によって便利なポンプ式ボトルは、私にとっては使いづらいです。
なぜなら、ポンプを押すために力を入れる際、車いすに乗りながらだと背筋・腹筋を使わないといけないためうまく出せなかったり、シンクの向こう側に置いてあると届きにくかったりするからです。
モニターA(上下肢/体幹機能障害)
私も洗剤にはいくつかこだわっていることがあります。
私の場合、キャップ式で開けるものは力を入れるのが大変です。
形状にも使いやすいものと使いにくいものがあって、丸いものよりも楕円形が力を入れやすいです。ボトルの硬さは購入時に店頭で確認しています。
洗剤自体にもこだわりがあって、ボトルを押して出てくる量に関わってくるため、粘度が低いものが良いです。
原口(全盲)
私は洗剤にはこだわりはないですが、食器や食器棚に自分なりのルールがあります。
食器棚に食器を仕舞う時には必ず定位置に戻します。
私は目が見えないので置く位置が毎回変わると手がぶつかって落としてしまうからです。
祝原
原口さんに質問です。
手がぶつかって食器を落として割ってしまうことはありますか?
原口(全盲)
10年程一人暮らしをしていますが、数回だけあります。
祝原
割れにくいプラスチックやステンレスの食器は使わないのですか?
原口(全盲)
実家で暮らしていた時から陶器なので、陶器を使っています。
プラスチックやステンレスはどうしても「温かみ」のような物が感じられないので。笑
祝原
視覚障害者にとっては、触り心地や触った時の温度なども選択する際の重要な要素になりそうですね。
原口(全盲)
はい、そうだと思います。
余談ですが、何かをこぼしても気づけないため、床に染みを作ってしまうことを防止するためにクッション性のあるシートを床に敷いているのですが、食器を落とした時にも役に立っています。
対談まとめ
今回伺った話の中だけでも
・世間一般(健常者)で便利とされているものでも人によっては使いにくい
・市販品でも工夫次第で不便なく使用可能である
・必ずしも便利であれば障害者に選ばれるわけではない
といったことがわかります。
消費者が何を感じて、考えて、製品や商品を購入しているか、またどのように利用しているかは障害の有無を問わず各個人にしかわからないことです。
対象を障害者に限定した製品が選ばれるというよりは、一人一人のニーズに合わせて、みんながちょっとだけ使いやすい製品が選ばれることがわかります。
事例紹介
~ナイガイ「みんなのくつした」~
先ほどご紹介したように、ミライロでは障害のある当事者に意見を伺い、製品開発に活用する企業のお手伝いをしています。
今回はその事例を紹介します。
株式会社ナイガイ(以降「ナイガイ」)の「みんなのくつした」は、ユニバーサルデザインの視点を生かした製品です。
「みんなのくつした」は、小さなお子さんやご年配の方、妊婦さんや障害のある方に、「くつしたで何かできることはないか」ということでナイガイとミライロが連携し、開発されました。
製品開発に際し、ミライロのモニターさんから寄せられた靴下のお困りごとはこのようなものでした。
「脱ぎ履きしにくい」(肢体不自由)
「締め付け感がいやだ」(肢体不自由)
「洗ってしまうとペアにするのが大変」(視覚障害)
そこで、締め付けを3段階で選べて、さわってわかるサイズマークを足底に編み込むことで、ペアにしやすい形状になっているくつしたが開発されました。
それが、「みんなのくつした」です。
みんなのくつしたの特徴
・締め付け感が気になる方に脱ぎ履き簡単 「ゴムのないくつした」
・締め付け感が気になる方に脱ぎ履き簡単、優しい履き心地「ガーゼのようなやわらかフィット」
・ずり落ちが気になる方に 履き口から足首までフィットする「足首までサポートする快適フィット」
※「みんなのくつした」の詳細
(ナイガイのホームページに飛びます)
※日本靴下界のパイオニア ナイガイに聞くこれまでの100年とこれからの100年
(ナイガイとの対談記事です。ミライロが運営するサイト、「スロウプ」に飛びます)
2020年8月にミライロハウスで開催されたくつしたの試着体験会では、「みんなのくつした」にこんな声が寄せられました。
参加者の声
・靴下が気持ちよくはけた。(肢体不自由 60代男性)
・5本指くつ下がすごくはきやすく指が入りやすかった。一番今までよりはきやすかった。(肢体不自由 40代男性)
・靴下にこだわりあるのが良かった。気づきがおおかった。5本指の指間GOOD。(視覚障害 30代男性)
・履きやすい。介護者が履かせやすい靴下が多くあった。(障害なし 20代女性)
履き心地を絶賛する声や、ユニバーサルデザインの視点を生かした製品へのこだわりを評価するコメントがみられました。また、障害のある当事者だけでなく、介護者が履かせやすいデザインとしても評価されています。
※みんなのくつしたはミライロハウスでもご試着が可能です
ミライロハウスのホームページはこちら
まとめ
いかがでしたでしょうか?
障害者や高齢者にも配慮した製品開発を行う際は、
健常者が考える障害者像ではなく、障害者自身の意見を聞くことが大事です。
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