※プロローグ
持続可能な住宅の提案【人生100年時代の住宅シリーズ①】
ユニバーサルデザイン住宅【人生100年時代の住宅シリーズ②】
「エントランスは家の顔」とも言われます。エントランスとは、道路から玄関を含めた建物の入口を示す言葉です。門扉、照明、アプローチ(通路)、植栽も含まれます。どのようなことを意識すればよいでしょうか。
高低差を意識した設計
住宅だけでなく公共施設やオフィスなど、エントランスに階段を用いて建物を装飾する技法が使われていますが、その結果、建物内は自由に動けるが外出はままならないといった事例が多く見られます。長く使える住宅(ユニバーサルデザイン住宅)の目的は、年齢に関係なく、建物内にとどまらず敷地に接する道路まで出られることにあると考えます。
それには高低差を意識したエントランスおよびアプローチの設計が欠かせません。建物の床レベル※を基準に、道路面と一階住宅床面までの高低差、そこに至る距離を検討して階段やスロープの勾配を決めることが必要です。
※床レベル…床の高さのこと
バリアフリー法をもとに設計を考える
バリアフリー法のうち、特定建築物と特別特定建築物を対象とした
・建築物移動等円滑化基準
・建築物移動等円滑化誘導基準
の2つの基準があります。
※特定建築物
多数の者が利用する建築物
「学校」「卸売市場」「事務所」「共同住宅」「工場」など
※特別特定建築物
不特定多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する建築物
「公立小中学校」「百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗」「不特定かつ多数の者が利用する官公署」「飲食店」「サービス業を営む店舗」など
建築物移動等円滑化基準はいわゆる「最低限のレベル」です。高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために必要な構造・配置に関する基準として設けられています。
建築物移動等円滑化誘導基準は「望ましいレベル」です。高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき構造および配置に関する基準として設けられています。
例えば
玄関出入口の幅
・建築物移動等円滑化基準(最低限)→80cm
・建築物移動等円滑化誘導基準(望ましい)→120cm
スロープの勾配
・建築物移動等円滑化基準(最低限)→1/12以下
・建築物移動等円滑化誘導基準(望ましい)→1/15以下(屋外の場合)
などの基準があります。
ぜひ参考にしてみてください。
参考
国土交通省『バリアフリー法の概要について(建築物関連)』
しかし、敷地の状況によってバリアフリーにできないこともあります。
道と玄関の間に段差が生まれてしまった場合はどうすればよいのでしょうか。
次回は詳細に対策をお伝えします。
※次回の記事『エントランスの段差解消【人生100年時代の住宅シリーズ④】』
その他参考URL
・国土交通省『高齢期に備え早めに住まいを改修しましょう!~「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を初めて策定~』
・国土交通省『建築物におけるバリアフリーについて』
・石川県『9 傾斜路及びバリアフリー経路を構成する傾斜路』
・国土交通省の住宅ページ『トピックス』
おまけ「開放的なエントランスは防犯にも繋がる」
ユニバーサルデザインとは関係ありませんが、エントランスを設計する際に外せないのは防犯対策です。家の防犯と聞いて「高い塀や壁」を想像する方が多いのではないでしょうか。
もちろん侵入を許さないことは大切です。しかし、高い塀や壁は侵入時の障害となる半面、一度越えてしまうと外部からは見えにくく、空き巣の隠れ場所になってしまいます。外部から見られずに庭に潜むことができるので、家屋への侵入時に外部から発見されにくいデメリットがあります。
外部から庭や家屋がどのように見えるのか、防犯面を意識して見通しをチェックしましょう。エントランスを開放的な空間にすることで、見通しがよくなって死角をなくすことができます。