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2024年11月08日

聴覚障害者が「水族館・動物園など」に求める情報保障とは?

ミライロ・コネクト

目次

はじめに
聴覚障害者への情報保障に関するアンケート結果
企業に求められる、情報保障対応とは?

はじめに

本記事では、業界別に情報保障に関する企業の対応についてお届けします。聴覚障害者へのアンケート結果とともにお伝えしますので、どのように情報保障を取り入れたらよいのかお悩みの方や検討されている方は、ぜひご一読ください。

第2回では「水族館・動物園など」に求める情報保障についてご紹介します。
第1回記事「聴覚障害者を取り巻く状況の変化と、企業に求められること」

以下は、116名の聴覚障害者に聞いたアンケート結果です。

聴覚障害者への情報保障に関するアンケートの結果

Q聴覚障害者に「水族館・動物園など」への情報保障 (例:ショー・ふれあい・ガイド・アナウンスなど)があれば、どう思いますか?

とても嬉しい34.48%、やや嬉しい20%、どちらともいえない26%、必要ではない8%、興味・関心がない12%

結果は、上記のように半数以上が情報保障があればうれしいと回答がありました。
その一方で、興味・関心がないといった答えが12%ありました。

これは、下記コメントにもあるように、スタッフの言っていることがわからない、また、一緒に行った家族や、周りの他の人が笑っているのに自分だけわからなくてついていけなかった経験から、楽しいはずの水族館・動物園で十分に楽しめなかったり、逆に疎外感を感じてしまった残念なケースも少なくないのではないかと考えられます。

また、飼育員などのスタッフとの会話からわかること、現地に行ったからこそ知れる動物たちの魅力が十分伝わっていないことも考えられます。

Qどんな情報保障があると嬉しいと思いますか?

動物の生態などを説明しているらしいので、聞いてみたい。

スタッフが参加者に動物の説明などを語りかける場面は、まったくわからない。スマホなどを使った文字情報があればうれしい。

ショーやアトラクションが中止になったり、時間の変更があっても音声だけのアナウンスが多くわからなかった経験がある。音声だけではなく、文字による放送もあれば嬉しい。

イルカショーなどのMCアナウンス。どんなことを話しているのか知りたい。

ガイドツアーに情報保障がついてくれたらうれしい。

スタッフが手話を習得して、ガイドをしてくれるとうれしい。


来園者を笑顔にしたいと考えている水族館・動物園では、聴覚障害者に対してどのような合理的配慮の提供できるでしょうか。

企業に求められる、情報保障対応とは?

アンケートでは、次のような記述もありました。

水族館などは、「ほとんど見るだけ」「展示物の説明パネルがある」という理由から(魚や動物観察は)困ることが少ない。でも、 ショーなどで「この場所に座ると水がかかります」というような注意事項は見てわかるようにイスなどに書いておいて貰えると助かる。  (水がかかると、補聴器が故障するので)


多くの聴覚障害者が使用している補聴器は器械で、通常防水加工はされていないものが多いです。また、個人に合わせたデリケートな調整が必要になるものですので、水がかかることがないようにお客さまへのアナウンスは水族館としては大切な配慮となります。

音声によるアナウンスもされていると思いますが、自社ですぐできることとして、別途イスに書いておく、またイラストなど見てわかる方法を掲示するなどの配慮があればいいかと思います。これは、聴覚障害者だけではなく、インバウンドのお客さまにも有効かと考えます。

他に、例えば、イルカショーでは、「イルカの名前は?」、「次にどんな技を見せてくれるのか?」、「イルカに対してどんな声掛けをしているんだろう?」など水族館に来る聴覚障害のお客さまは興味を持っている方が多くおられます。

また、バックヤードツアーや動物とのふれあい体験などでは、直接飼育員とお話ができる数少ない機会です。お話を聞いているうちに、もっと聞いてみたいことや質問したいことがでてくるかもしれません。

飼育員側も聴覚障害者のお客さまと直接お話しいただくことで、どのようなことに興味をもっているのかがわかったり、どのようにお伝えすればわかりやすいのかを体験的にわかっていただけるチャンスになります。

例えば、「どんな鳴き声なの?」とか、「鳴き声を聞いたら、どの個体かわかる?」「何を言いたいかわかるの?」など、聞こえなくても「音」や「声」に対する興味を持っている方もおられます。

そのためには、まず手話通訳をつけたり文字での情報提供をすることにより、一緒に楽しんでいただく機会を設けてみてはいかがでしょうか。

聴覚障害者のアンケートをもとに、水族館や動物園などでは、下記のような情報保障があればいいかと考えます。

● 聴覚障害者もわかりやすいような案内パンフレットを作成する
  (イラストや写真が多め、できれば分かりやすく短い文章)

● スタッフへの簡単な手話講座

● 聴覚障害者が来園対応される際の遠隔による手話通訳の対応

● 音声を文字化する機器やシステムの導入

● 手話通訳付きのツアーなどのイベントの実施


今回のアンケートの結果からもわかるように、聴覚障害者のお客さまからの情報保障へのニーズは高く、2024年4月からの法改正をふまえて各企業から、現地または遠隔による手話通訳や文字通訳のご依頼、業務上使える手話講座のご相談をいただく機会が増えています。

ミライロ・コネクトでは引き続き、さまざまな場面において手話でコミュニケーションがとれる社会を目指します。手話講座をご希望の方はどうぞお気軽にご相談ください。

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