スタッフブログ
2021年02月10日

ミライロ・コネクトの手話通訳士に聞いた!(後編) ~日ごろの業務内容やこれまでに印象に残っている仕事とは?~

ミライロ・コネクト

聴覚言語障害により、聞こえづらさや話しづらさを感じている方のために、コミュニケーションのバリアを解消することを目指す事業「ミライロ・コネクト」。

今回はこの事業を牽引する2名の手話通訳士に、日ごろの業務内容やこれまでに印象に残っている仕事について聞いてみました!

INDEX

■普段の業務について
■これまでに印象に残っている仕事について
■業務において気を付けていること

話す人・聞く人

【写真】左から高内、福島、神保の正面写真
写真左から高内、福島、神保

■話す人
ビジネスソリューション事業部 コネクトチーム 手話通訳士
 高内利枝(TAKAUCHI RIE) 
 福島直人(FUKUSHIMA NAOTO) 

■聞く人
経営企画部 広報担当
 神保さほり(JIMBO SAHORI)

 

普段の業務について

 

神保

前編では、おふたりに手話との出会いや手話通訳者を目指した背景、ミライロに入社した理由などをお聞きし、ミライロ・コネクトの魅力や、おふたりの熱い想いを知ることができました。

 ※前編をまだ読んでいない方はこちらからぜひご一読ください!

後編では、おふたりの実際の仕事などについて伺っていきたいのですが、まず高内さんの普段の業務について教えていただけますか?

高内

ミライロ・コネクトでは、さまざまなサービスを行っていますが、チームの発足当初から実施しているのが、手話通訳者の派遣事業です。多くの手話通訳者が登録してくださっていて、私は企業の研修や講演に通訳者を派遣することを業務として行っています。最近ではPCテイクやUDトークを活用した、文字通訳者の派遣もしています。

また、毎日9時から21時まで日本財団電話リレーサービス(※1)の通訳も行っています。契約社員やアルバイトの方々が、手話通訳オペレーターを担当してくれているのですが、私はその運営やメンバーのシフトの管理などを担当し、いつでもメンバーのフォローやサポートができるよう、体制作りも行っています。

※1 電話リレーサービスとは、手話通訳者が聴覚障害者の代わりに電話をかけるサービスです。聴覚障害者と手話通訳者は専用アプリでテレビ電話の状態で繋がり、手話通訳者は電話で相手と繋がります。聴覚障害者は画面越しに手話で話し、その内容を読み取った通訳者が電話越しに音声で伝えるというサービスです。


神保

具体的に、どのようなフォローやサポートをされているのでしょうか?

高内

例えば、適切な対応に迷った時や、手話表現に悩んだ時などにすぐに相談し合えるような環境づくりを意識しています。

通常の手話通訳と同じように、「あの対応・表現でよかったのかな」と悩むことはよくあるので、そうした際に他のメンバーに相談できるような雰囲気づくりやシフトの組み方を意識しています。

また、電話リレーサービスの場合は更に特殊で、遠隔だからこその悩みが出てきたりするので、すぐに不安を解消できるようにしています。

神保

遠隔だからこその悩みというのは、具体的にどういったことなのでしょうか?

高内

現地に通訳に行くのとは違い、利用者(聴覚障害者)とは画面でしか繋がっていないですし、電話の向こうのかけ先には通訳者の声しか聞こえません。聞える人と聞えない人がお互いに顔を見ることができないので、どんな状況で、どんな表情で、どんな感情をもって話しているのかが伝わりづらかったりします。また、画面越しだと利用者の手話が読み取りづらかったりもします。

手話通訳者として経験がある場合でも、電話リレーサービスのオペレーターが初めてという場合はこうした点が不安になることも多いので、常にメンバー同士でアドバイスし合える環境を作っています。

神保

お互いに相談できる・しやすい環境というのはいいですね!

高内

そうですね!相談し合うことでお互いの不安を取り除くこともできますし、全体のスキルアップにも繋がると感じています。

電話リレーサービスのオペレーターは、ブースで1人ぼっちになりがちです。他の通訳者が、画面や電話の向こうにいる人たちの会話を把握することはほぼできません。そういった意味でも、「自己流の表現・やり方」を続けてしまわぬように、メンバー内で常に話し合い、スキルを高めていく目的もあります。

神保

相乗効果ですね!素敵な関係性です!

福島さんは普段はどんな業務をされているのでしょうか?

福島

私の場合はまた全然違う内容で、簡単に言うと「聴覚障害者の情報保障(※2)に関するコンサルティング業務」という感じです。

例えば、聴覚障害者を雇用する企業に対して、必要なサポートや働きやすい環境づくりを提案したり、お客さんとして聴覚障害者を迎えている施設や店舗等に対して、手話の研修や情報保障のあり方についてご相談にのったりしています。

※2 情報保障とは、障害のある人がコミュニケーションを行い、情報を入手するにあたり必要なサポートを行うことです。主に、視覚障害者と聴覚障害者への配慮として用いられ、聴覚障害者への情報保障は、手話通訳や要約筆記、PCテイク、筆談や字幕を指すことが多いです

神保

具体的にはどんな提案や相談をしているのでしょうか?

福島

雇用関係の場合は、採用面接や個人面談、研修などに手話や文字の通訳を入れることを提案したり、UDトークという自動音声認識アプリの導入を提案したりしています。

また、聴覚障害者をお客様として接遇する企業もあります。例えば、保険会社や不動産会社等には、個人情報が含まれる契約内容についても安心して手話で問い合わせができるように、企業向けの電話リレーサービスの導入を提案しています。またサービス業の場合は、保険や不動産の契約の手続きなど、個人情報が含まれる問い合わせも手話で対応ができるように企業向けの電話リレーサービスの導入を提案したり、サービス業の場合はその店舗に合わせた従業員の手話講座などについても相談にのっています

神保

幅が広いですね!

福島

そうですね、幅は広いです(笑)でも基本的には、聴覚障害者が「会社の中でもっと働きやすい環境をつくる」「利用しやすいサービスにする」という想いが根本にあって、それぞれの企業の考え方や課題をヒアリングしながら、少しずつ問題を解決して、理想の職場やサービスを実現していくという感じです。

神保

なるほど、まさにコンサルティングですね!企業には福島さんが最初からアプローチしているんでしょうか?


福島

いえ、営業から繋いでもらうか企業から直接問い合わせをもらうことが多いです。ミライロの場合は、聴覚障害に限らず、ユニバーサルデザインという大きな領域で他にもいろいろな事業を持っていることが特徴だと思います。

例えば高齢者や障害者への接し方を学ぶ「ユニバーサルマナー検定」という検定もミライロが運営しているのですが、この検定を導入した企業から「聴覚障害のある社員に対して十分な対応ができていない」と相談を受けたら、私が面談にお呼ばれする、という感じです(笑)

神保

福島さん、いつも引っ張りだこですもんね!ここはミライロの強みというか、ならではのポイントかもしれないですね。

福島

そうですね、おかげさまで業務の幅も広がり、、さらにいろんな角度から聴覚障害者の暮らしやすさ、働きやすさを考え、提案できているのが嬉しいです!

神保

この流れでいくと、高内さんはこうした企業との案件で発生する、契約書などの対応や、企業との調整もされていますよね?

高内

そうですね。福島さんが今話してくれたような案件には、契約書・請求書などの書類作成や、導入が決まってからの企業とのやりとりがつきものなので、そこも他のスタッフと一緒に対応しています。

神保

福島さんは他にも手話通訳の先生もしていますよね?

福島

はい、手話通訳士の試験対策講座の講師もしています。前編でも話しましたが、若手の手話通訳者・手話通訳士が増えないことも、大きな課題だとずっと感じていました。そこで、ミライロに入社して2年目で、養成事業も立ち上げました。

私が講師をしているのは手話通訳士の試験対策講座ですが、手話の初心者から日常会話ができるレベルの方まで、ろう者の先生が手話を教える「ミライロ・コネクトClub」という手話講座も同じころに立ち上げました。

神保

入社2年目でここまで幅広い講座を立ち上げたのは本当にすごいです!気づいたら私でも受けられるような講座までできていて、びっくりしました(笑)。

福島

そうですね、すごい勢いでしたね。でもこれにも理由があって、初心者の方に入門コースを受けてもらってそれで終わり、という風にはしたくなかったんです。

入門で手話に興味を持ってくれた人が、初級・中級・上級とレベルを上げていき、ゆくゆくは「手話通訳者になりたい」って言ってくれたら、ミライロが少しでも手話通訳業界に貢献できるんじゃないかなと思っていたので……。もちろん、ミライロで手話通訳者として働いてくれたら完璧ですけれど(笑)。

神保

手話初心者だった方と、数年後には手話通訳者として一緒にお仕事ができるかもしれないって、夢がありますよね!

 

これまでに印象に残っている仕事について

 

神保

では、ここからは今伺ってきた業務の中でも、一番印象に残った業務について聞いていきたいと思います。高内さんはいかがでしょうか?

高内

私は、コロナ禍で新たに対応をスタートした「遠隔手話通訳サービス」でしょうか。コロナの感染拡大にどう対応したらよいか、社会全体が揺れ動いた状況において、聴覚障害者の皆さんのためにいち早く遠隔での手話・文字の通訳に取り組むことができたというのはミライロの強みだと感じています。

神保

確かに、サービススタートまでが速かったですね!4月17日にはプレスリリースを打ってました。

高内

あれだけ速く動けたのはベンチャー企業のミライロならではだったと思っています。決裁が通るのも速くて、登録通訳者の方にも早い段階でご自宅での通訳を開始していただくことができました。

あとはやはり、他の事業で繋がっている企業のご担当者から、「ZOOMでの採用面接に手話・文字の通訳を入れられないか?」という問い合わせをいただけたのも大きかったです。私たちも需要は感じていたものの、コロナ禍で企業へ提案するタイミングを図りかねていた部分もあったので、問い合わせをいただけて「やろう!」と決心がつきました。

神保

「THE・ミライロ」という流れでしたよね!私は広報を担当していますが、遠隔での手話・文字の通訳についてはメディアの皆さんもかなり注目してくださり、さまざまな媒体で報じていただきました。

福島さんの印象に残っている仕事はどうでしょうか?

福島

大型のレジャー施設のアトラクション映像に字幕をつけた業務でしょうか。前編でお話したように、私の両親は耳が聞こえないため、これまで両親とレジャー施設等に遊びに行ったときに「字幕があったら内容がよくわかるのに…」と話していたことが何度もありました。

そんなこともあって、「アトラクションに字幕をつける仕事ができる」というだけでとても嬉しかったですし、聴覚障害者にとって分かりやすい文章や、セリフ以外のさまざまな効果音を文字で表現する工夫を凝らしたことも、とても印象に残っています。

神保

実際にご両親を連れて遊びに行かれたんでしたよね?反応はどうでしたか?

福島

完成した直後に両親を連れて行きました。体験後に両親から「心からアトラクションを楽しいと思えた」と言われた時は本当に嬉しかったです。

神保

ご両親のために…という想いもあってこのお仕事をされている中で、実際に喜んでもらえたというのは本当に素敵なエピソードですね!他にも印象的な業務はありますか?

福島

あとはさきほども話した養成関連の事業を開始できたことですね。手話ビギナーがレベルアップしていくには時間がかかりますが、手話通訳士対策講座の受講生の中には、いろいろな形でミライロでの仕事に関わってくださる方もいます。1人は今年から入社してくれたので、もっともっと手話通訳者を増やしていきたいです!

神保

先生だった福島さんが、今は同僚として働いているってすごいですよね!

高内さんは他にも印象に残っていることはありますか?

高内

さきほど、電話リレーサービスのメンバーのフォロー体制やスキルアップの話をしましたが、ミライロの対応を利用者(聴覚障害者)の方から評価をしていただけた時はとても嬉しかったです。

例えば、緊急時の連絡をしっかりと通訳し、利用者の方から感謝の言葉をいただいたり、SNSなどで「ミライロの手話通訳者さんの対応が素晴らしかった」といったことを書いてくださっているのを見ると、良かったなといつも思います。

神保

そうした言葉をいただけるのも、普段からスキルアップや雰囲気づくりを意識されているからこそだと思うので、なおさら嬉しいですね!

 

業務において気を付けていること

 

神保

では、最後に、おふたりが日ごろの業務で気を付けていること、大切にしている考え方について教えてください。高内さんはいかがですか?

高内

聴覚障害者と聞える方とが相互に安心して、充分な情報保障を受けられるようなサービスを提供することを一番大切にしています。そのためにも、手話通訳者が働きやすい環境を整えることを目指しています。

前者について少し具体的に言うと、たとえば電話リレーサービスに関しては、「クレームであれば、クレームとして電話をかける」ということ。先ほども言いましたが、電話リレーサービスは利用者と通訳者とかけ先がそれぞれ違う場所にいるので、例えば利用者が怒っていたとしても、それがかけ先には一切見えない状況、また逆も然りです。

ですので、かけ先にも利用者にも、お互いの感情や雰囲気、状況もちゃんと伝わるような形で通訳をして、言外の情報からそれぞれのことを理解できるように気を付けています。

どの通訳現場も、その1回が大切なのですが、電話リレーサービスは特に「一期一会の通訳」だと思っています。言語通訳とプラスアルファの言語化されない部分も、しっかりと読み取って臨機応変に通訳できるようにという感じでしょうか。

神保

一期一会の通訳、本当にそうですよね。遠くにいる、初対面かもしれない方たちのやり取りを、手話通訳者がつないでいくのですね。全国各地の聞えない方から、数多くの電話がかかってくると聞いています!

高内

そうですね、そのためにも話が戻ってしまいますが、通訳者同士、メンバー同士が気軽に相談し、スキルアップをしていけるような雰囲気作りをしています。また、アルバイトと社員をペアでシフトを組むことで、すぐにフォローができる体制作りも意識しています。

今はコロナの影響を受けて在宅で対応するケースもありますが、タブレットで繋がっておくなどして体制を整えています。

神保

ミライロ・コネクトのメンバーが仲がいいのは、きっと皆さんが同じ意識で仕事をしているからなんだなと、今日改めて感じました。

では最後に、福島さんが気をつけていることはなんですか?

福島

私は企業との面談の際は、「中立の立場」を常に意識しています。聴覚障害者側の視点に立つと、「こうするべき」という回答はもちろんあるんですが、企業側にもできない理由や状況もあるので、そこもちゃんと汲み取った上で、間を取り持つような形を意識しています。

また、聴覚障害者といっても聞こえにくさや性格はそれぞれで、答えは必ずしも一つではないので、当事者の選択肢を増やすことも大切にしています。

なので、面談時も「サービスを売る」というよりは、「企業のお悩み相談」のスタンスで、企業と聴覚障害者の架橋になれればいいなと思っています。

神保

「選択肢を増やす」というのはまさにミライロですね!聴覚障害に限らず、人はそれぞれ求めていることが違うので、「決めつけではなく選択肢を」というのは普段からミライロが伝えていることですね!

今回のおふたりの話を通じて、ミライロ・コネクトの仕事の内容や雰囲気を少しでもお伝えできたのではないかと思います。

また、おふたりが前編でミライロに入社した理由として「こんな仕事がしたい」「こんな社会を作りたい」と話されていたことが、少しずつですが普段の仕事を通じて、達成できているように感じました。

 


 

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