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2025年01月28日

聴覚障害者が「美術館・科学館・博物館など」に求める情報保障とは?

ミライロ・コネクト

目次

はじめに
聴覚障害者への情報保障に関するアンケート結果
企業に求められる、情報保障対応とは?
まとめ

はじめに

情報保障に関する企業の対応について、業界別にお届けします。聴覚障害者へのアンケート結果とともにお伝えしますので、どのように情報保障を取り入れたらよいのかお悩みの方や検討されている方は、ぜひご一読ください。

第4回では「美術館・科学館・博物館など」での情報保障についてご紹介します。

第1回記事「聴覚障害者を取り巻く状況の変化と、企業に求められること」
第2回記事「水族館・動物園など」に求める情報保障
第3回記事「旅行・交通など」に求める情報保障

以下は、116名の聴覚障害者に聞いたアンケート結果です。

 

聴覚障害者への情報保障に関するアンケートの結果

Q聴覚障害者に「美術館・科学館・博物館など」への情報保障(例:ワークショップ・専門員による解説など)があれば、どう思いますか?

(円グラフ)とても嬉しい37.93%、やや嬉しい13.79%、どちらともいえない23.28%、必要ではない7.76%、「美術館・科学館・博物館など」自体に興味・関心がない1.72%

上記のように半数以上の約52%の聴覚障害者が、情報保障があれば嬉しいと答えています。美しい絵を見てみたい、科学についてもっと知りたい、珍しい展示を見てみたいと考えて美術館等に足を運ぶ聴覚障害者はたくさんいます。
では、どのような場でどのような情報保障を求めているのでしょうか。

Qどのような情報保障があると嬉しいと思いますか?

美術館によくあるヘッドホン付き音声解説(音声ガイド)が利用できない。 自分たちも同じように知りたい。

音声解説(音声ガイド)の代わりに、資料をもらったことがあるが、暗いところで小さい文字を読むのは大変。タブレットやスマホで見られるとうれしい。

音声解説(音声ガイド)の代わりに、資料をもらったことがあるが、文字を読むより手話での説明の方がわかりやすい。見どころなど手話で説明をしてほしい。

絵画や画家への理解が深まるようなレクチャーをしてほしい。手話通訳がついていればうれしい。

情報保障は必須。美術館などは何度も聞き返したりできない雰囲気があるので。

科学館は興味があるものの、情報保障がないのでわからないだろうと諦めていた。情報保障があれば嬉しい。

展示物の横にQRコードがあり説明を聞けるようだが、これは外国語のみが多い。 それと同じように、QRコードを読み取って、手話ガイドがあると嬉しい。

事前に申し込めば手話通訳の準備をすると言われても、それはそれで面倒。いつでも自由に行って、内容がわかるようになればうれしい。

プラネタリウムにも説明があるらしいが、音声だけなのでまったくわからない。文字情報があればと思うが、同時にあちこち見れないのでタイミングよく出してもらえるとうれしい。

 

企業に求められる、情報保障対応とは?

聴覚障害者にとって美術館や博物館などで困る場面としては、音声ガイドが多く挙げられました。企業が自社として取り組めることをまとめてみます。

●音声ガイドの代わりに、文字情報を提供する(タブレットやスマホ対応)。

●コミュニケーションボードのような指差しでわかる方法を、受付で用意。

●スタッフがいつでも筆談に応じられるように、準備をする。


ここで、CODA(CODA, Children of Deaf Adults:きこえない・きこえにくい親をもつ聞こえる子どものことを指す)の社員が実際に耳が聞こえない両親と一緒に美術館に行った時のエピソードをご紹介します。

その美術館では、施設の歴史に関する動画が字幕テロップ付きで繰り返し流れていました。動画の内容を手話通訳してみたところ、「え、そのような意味だったの?」と非常にびっくりされたという経験があったそうです。これは、第一言語が手話の聴覚障害者にとっては、日本語が第二言語の位置づけとなるからです。聴覚障害者への対応は筆談や音声認識などの文字で十分に通じると社会的に思われていますが、実際はそうではありません。第一言語が手話の聴覚障害者には、文字ではなく手話で情報保障を届けることが重要なのです。
実際に、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines:ウェブコンテンツのアクセシビリティに関するガイドライン)では、障害のある人を含め、誰もがウェブコンテンツを平等に利用できるように、「聴覚障害者向け:動画コンテンツへの字幕・手話通訳提供」が具体的な対策として挙げられています。

では、聴覚障害者への情報保障の方法としてどのようなことができるのかご紹介します。

●音声ガイドを手話通訳し、動画にして来場者へ提供する。

●館内の説明や施設案内動画を手話言語で作成する。

●手話通訳付きのツアーやワークショップなどのイベントを実施する。

●窓口などで遠隔による手話通訳システムの導入する。

●音声を文字化する機器やシステムの導入する。

●スタッフへの簡単な手話講座の開催する。

まとめ

以上のように、視覚優位で見る力に長けている聴覚障害者は、美術品・写真などに興味を持っている方も多くいます。ただ、作品や作者の解説や作品展にかける主催者の思いなどを知る機会には、なかなか恵まれていません。最近では、ワークショップや学芸員のレクチャーなど、各美術館・博物館で独自の企画を工夫して開催しているところも増えています。一部の来館者だけでなく、みなさんに楽しんでもらえるような合理的配慮についてぜひご検討ください。

今回のアンケートの結果からも、聴覚障害があるお客さまからの情報保障へのニーズは高いことがわかります。加えて、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法によって民間事業者の障害者への合理的配慮提供が法的義務化されました。このような背景により、各企業・民間事業者から、現地または遠隔による手話通訳や文字通訳のご依頼、業務上使える手話講座のご相談を頂く機会が増えています。

ミライロ・コネクトでは引き続き、さまざまな場面において手話でコミュニケーションがとれる社会を目指します。手話講座をご希望の方はどうぞお気軽にご相談ください。

お問い合わせ先

ミライロ・コネクト事業 
メール:connect@mirairo.co.jp

 

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