目次
・はじめに
・聴覚障害者への情報保障に関するアンケート結果
・企業に求められる、情報保障対応とは?
・まとめ
はじめに
情報保障に関する企業の対応について、業界別にお届けします。聴覚障害者へのアンケート結果とともにお伝えしますので、どのように情報保障を取り入れたらよいのかお悩みの方や検討されている方は、ぜひご一読ください。
第5回では「イベント」への情報保障 (例:お祭り・企業主催のイベント・展示会など)での情報保障についてご紹介します。
※第1回記事「聴覚障害者を取り巻く状況の変化と、企業に求められること」
※第2回記事「水族館・動物園など」に求める情報保障
※第3回記事「旅行・交通など」に求める情報保障
※第4回記事「美術館・科学館・博物館など」に求める情報保障
以下は、116名の聴覚障害者に聞いたアンケート結果です。
聴覚障害者への情報保障に関するアンケートの結果
Q聴覚障害者に「イベント」への情報保障 (例:お祭り・企業主催のイベント・展示会など)があれば、どう思いますか?
上記のように、68%の人が、情報保障があれば嬉しいと答えています。つまり、興味があって参加したイベントや、家族や仲間と一緒に楽しむため参加したお祭りなどで、情報が不足している、もっと知りたい、もっと楽しみたいと感じている方が多いということです。
では、どのような場でどのような情報保障を求めているのでしょうか。
Qどのような情報保障があると嬉しいと思いますか?
イベント
ステージのMC、講演やトークショー、ビンゴゲームでのアナウンスなどに即時字幕が表示される設備や手話通訳があるとうれしい。
フェスのイベント(ゲームイベント)、ブースなどで必要な時に手話通訳や文字での情報がほしい。
イベント会場での誘導やお得情報なども文字情報があるとうれしい。
物品販売の際に物品に関する質問等が気軽にできたら嬉しい。
大好きな芸人が出演されるイベントによく足を運ぶが、肝心のステージの内容がわからず皆と一緒に笑ったり盛り上がれないので寂しい。
スマホの音声認識アプリはキャッチできる音源に限界があるので、マイクの音声を拾うのは難しく、結局わからなくて残念。
トークショー、ファン感謝デー(プロ野球)に行っても、何を話しているかわからないので他の人と同じように知りたい。
マイクを使っての音声案内が多いので、見てわかる案内や看板などがあるとうれしい。
パレードの出発式などには、聞こえない方がいなくても手話通訳を設置した方が市民への理解が高まるのではないかとおもう。
お祭り
お祭り内で何かアナウンスをしている場合は、その内容を知りたい。
サンバカーニバルでも、どんなチームでどのようなテーマで踊っているのかというアナウンスがあるらしいので知りたい。
音声認識アプリを使用しているが、盗聴盗撮と勘違いされることがあるので、文字情報もみんなが見れる形で情報保障をしてほしい。
客席とやりとりをするようなところはわからないので、手話通訳等の情報保障がほしい。
イベントを主催される側は、皆さんに楽しんでいただきたいと思っていても、聴覚障害者への配慮については、まだまだ改善の余地がありそうです。
企業に求められる、情報保障対応とは?
あるイベントでのエピソードをご紹介します。
ある聴覚障害者が、歌やパフォーマンスがあちこちで披露されるイベントに行きました。歩いていると人だかりがあり覗いてみると、大道芸のようなパフォーマンスをしていました。パフォーマーがお客さんに何かを言うと、みんな笑っています。が、聞こえないため何を言っているのかわからず、素通りするしかなかったとのことでした。
その後、聞こえる友達と合流し一緒にその路上ライブを見ました。そこでパフォーマーは「これから見せるパフォーマンスは難しくて、1,000回に1回しか成功しません。成功するかどうかは、みなさんからの応援パワー次第です!」と話していることがわかりました。ちょっとしたことですが、何を話しているのかがわかるとその場の雰囲気も周りの人と共有でき、楽しめる度合いが大きく変わってくるのです。
また、市民祭りでのパレードでは、最近、パレードのチーム紹介をアナウンスすることも増えてきました。チーム名やメンバー数、どんなメンバー構成なのかなどの特徴、チームが参加しようと思ったきっかけなど、チームの個性がわかる紹介です。
聞こえない人だけで見に行ったときにはわからなかったのですが、聞こえる人と行ったときにそれを教えてもらい、そんな情報があるのかとびっくりしたそうです。
それから、それぞれのチームを見る目が変わり、自分たちも参加できるのではないかと、翌年は聴覚障害者と手話サークルの合同チームでパレードに参加したそうです。
このように、情報があればより楽しめる度合いが高まり、より興味もわき、そして、その後の行動も変わってくることがあるのです。イベントを楽しんでもらえるために、主催者側も参加者も、何かできることはないでしょうか。
まずは、自社でできる工夫について
「混んでいます」「こちらに並んでください」などの案内は、頭以上の高さでどこからでも見える大きな文字で表示をする。
受付などでは、コミュニケーションボードのような指差しでわかる方法を用意する。
各スタッフがいつでも筆談に応じられるように準備をする。
事前に読み上げ資料があれば、希望する聴覚障害者には配布できるようにする。
ただ、上記の対応のみで、聴覚障害者が満足できるかというと十分ではないかと思います。イベント自体を聴者と同じように楽しんでいただくための方法をご紹介します。
ステージのあるイベントでは、手話通訳や文字通訳を配置する
スクリーンやスマホなどの端末で文字情報を確認できるような音声を文字化する機器やシステムを導入する
イベント会場内の売り場や窓口などでの遠隔による手話通訳システムを導入する
まとめ
障害者へ合理的配慮を提供することは、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法をもって民間事業者も法的義務化されました。企業や主催者に限界があっても、外部と連携をしてできることがあります。
上記の「自社でできる工夫」は、簡単なことを記載していますが、これは聴覚障害者のためだけではなく、参加される子ども・高齢者・外国籍の方にも便利になる方法といえるのではないでしょうか。現場をご存じの方なら、他にも様々な工夫をすでに実践されていることと思います。イベントの規模や目的、参加者を想定する中で、自社だけではできないけれど、上記のような合理的配慮を提供してみたいとお考えになられたら、ぜひ一度ご相談ください。
今回のアンケートの結果からもわかるように、聴覚障害者のお客さまからの情報保障へのニーズは高く、2024年4月の改正障害者差別解消法施行をふまえて各企業から、現地または遠隔による手話通訳や文字通訳のご依頼、業務上使える手話講座のご相談を頂く機会が増えています。
ミライロ・コネクトでは引き続き、さまざまな場面において手話でコミュニケーションがとれる社会を目指します。手話講座をご希望の方はどうぞお気軽にご相談ください。
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