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2025年01月27日

聴覚障害者が「旅行・交通など」に求める情報保障とは?

ミライロ・コネクト

目次

はじめに
聴覚障害者への情報保障に関するアンケート結果
企業に求められる、情報保障対応とは?
まとめ

はじめに

情報保障に関する企業の対応について、業界別にお届けします。聴覚障害者へのアンケート結果とともにお伝えしますので、どのように情報保障を取り入れたらよいのかお悩みの方や検討されている方は、ぜひご一読ください。

第3回では「旅行・交通など」での情報保障についてご紹介します。

第1回記事「聴覚障害者を取り巻く状況の変化と、企業に求められること」
第2回記事「水族館・動物園など」に求める情報保障

以下は、116名の聴覚障害者に聞いたアンケート結果です。

 

聴覚障害者への情報保障に関するアンケートの結果

Q聴覚障害者に「旅行・交通など」のシーンで情報保障 (例:バスツアーのガイド・ロープウェイや観光船の音声案内・駅の窓口など)があれば、どう思いますか?

(円グラフ)とても嬉しい68.97%、やや嬉しい17.24%、どちらともいえない9.48%、必要ではない2.59%、「旅行や交通」自体に興味・関心がない1.72%

結果は上記のように、他の業界のアンケートも含めて一番多い86%を超える人が情報保障があったら「嬉しい」と答えました。つまり、ほとんどの聴覚障害者が、交通機関を普段利用する際、また、旅行に行った際に、聞こえないことで不便さや物足りなさを感じているという結果でした。
では、どのような時にどのような情報保障を望む声があるのでしょうか?

Qどのような情報保障があると嬉しいと思いますか?

交通機関

列車が来なかったり、遅れる際にはアナウンスはあるようだが、文字でも表示してほしい。

文字変換アプリを使用しても音源となるアナウンスが明瞭でなければ、声を拾えなくて文字表示ができない。そのため、ハッキリとわかるようなアナウンスだとうれしい。

都会ではホームや電車の中の電光掲示などで字幕やテロップがつくようになってきたが、地方ではまだまだ少ない。駅名がわからず慌てて降りて間違ってしまうこともある。全国どこでも文字情報があると安心して乗車できるので嬉しい。

車内の電光掲示は、ずっと次の駅を表示しておいてほしい。タイミングを逃すと、すぐにはわからないので困る。

駅の窓口やみどりの窓口も減ってしまい不便なうえに、筆談でも通じにくい。ちゃんと対応してほしい。

電車内に、乗換案内、近場の見所案内、運行スケジュールの電光掲示文字盤があるとうれしい。

飛行場などでの乗り場(ゲート)や時間の変更が、音声アナウンスだけだったのでわからなかった。視覚的に見てわかる方法があればうれしい。

飛行機内でパイロットのアナウンスがあるようだが、運航情報だけでなく、個人的な話(「定年退職のため、これがラストフライトです」など)の内容がわかると聴者と同様に一緒に楽しめるのにと残念に思う。

タクシーや駅など移動手段でコミュニケーションがスムーズにとれず、お互いがイライラすることがある。

緊急時の放送や呼びかけ、事故が起きたときの対応などリアルタイムで情報もらえるのか心配。不安なく日常の公共交通を利用したい。


旅行・観光

有名な観光スポットなどでの説明やガイドは音声案内のみが多いため、手話通訳や文字情報があればうれしい。

ツアーガイドの話は、音声のみなのでわからない。ゲームなどのレクリエーションの時間は寝たふりをする。手話通訳がついていたら喜んで参加したい。

ホテルなどで受付や設備などの説明は、うんうんとわかったふりをしてしまう。本当は、文字情報や手話での案内があればうれしい。

フロントへの電話ができないので、聞きたいことなどわざわざフロントまで行かなくてはいけない。他の方法があればうれしい。

温泉宿などで、館内の案内や温泉源や効用、食事などその宿ならではのこだわりなどを直接聞いてみたい。

旅先では、出会った人とのコミュニケーションも醍醐味の一つなので、聴者と同じように知らない人と何気ない会話を楽しんでみたい。

特に具体例は無いが、周りの人と同じ経験がしたい。

 

企業に求められる、情報保障対応とは?

交通に関するあるエピソードについてご紹介します。

とある駅で1人の聴覚障害者が電車を待っていました。その時、電車が遅延しているというアナウンスが流れたのですが、その駅には電光掲示板もなく、聴覚障害者はどうして電車が来ないのかがわからず戸惑っていたそうです。その時、1人の高校生が放送で流れてきたアナウンスをスマホで文字を打って見せてくれたことがあったそうです。

聴覚障害者にとっては、音声情報が聞こえないため、音声の代わりに文字や手話による情報保障が必要となるケースが多くあります。このエピソードの高校生のように、個人の判断で機転を利かして対応できる場面もありますが、他に企業が自社として取り組めることをまとめております。

QRコードを読み取ると案内表示が出てくるが、外国語だけでなく日本語でも準備をする。

観光ガイドは、各名所の案内など話をする原稿を事前にお渡ししておく。

筆談を求められた際には、ご本人が納得されるまで筆談に応じる。

宿や食事のこだわりなど、聴覚障害者もわかりやすいような案内パンフレットを作成する(イラストや写真が多め、できれば分かりやすく短い文章にする)。


ただ、聴覚障害者が感じるバリアは、耳が聞こえる聴者とのコミュニケーションで発生することが多くあります。
では、そのコミュニケーションを円滑にするための方法としてどのようなことができるのかご紹介をさせていただきます。

●窓口などでの遠隔による手話通訳システムの導入

●音声を文字化する機器やシステムの導入

●スタッフへの簡単な手話講座の開催

●遅延情報などを手話で説明する案内動画を作成

●コミュニケーションボードの作成

●手話通訳付きのツアーなどのイベント開催

まとめ

見てわかる情報がほしいというのは、聴覚障害者の一致した意見です。
「おはようございます」「ありがとうございます」といった簡単な手話での挨拶を目を合わせてできるようになるだけで、聴覚障害のお客さまには安心していただけます。その安心があれば、信頼にもつながりやすくなります。

そのためにも、まず基本的な手話を学んでみてはいかがでしょうか。込み入った話は遠隔による手話通訳、繰り返しの案内には手話動画などを利用する方法もあります。

また、音声認識アプリの使用方法や筆談のポイント、対応の心構えなども一度学んでおくと、いざという時にスムーズな対応につながります。少しずつでも取り入れていただき、一人でも多くのお客さまが、より安心して楽しめる旅行・交通利用ができるように、会社や個人でできる合理的配慮をご検討ください。

今回のアンケートの結果から、聴覚障害のお客さまからの情報保障へのニーズは高いことがわかります。加えて、2024年4月に改正障害者差別解消法が施行されました。民間事業者による障害者への合理的配慮の提供が法的義務化されたことをふまえて、各企業から、現地または遠隔による手話通訳や文字通訳のご依頼、業務上使える手話講座のご相談をいただく機会が増えています。

ミライロ・コネクトでは引き続き、さまざまな場面において手話でコミュニケーションがとれる社会を目指します。手話講座をご希望の方はどうぞお気軽にご相談ください。

お問い合わせ先

ミライロ・コネクト事業 
メール:connect@mirairo.co.jp

 

手話や文字に関する情報保障にお困りの方