パリ2024大会の開幕から早くも11か月が経ち、現在は大阪にて大阪・関西万博が開催されています。オリンピック・パラリンピック、そして大阪・関西万博のような国際的なイベントの舞台裏では、多くのボランティアが活躍しています。
パリ2024大会にボランティアとして参加された方へ、インタビューを行いました!
目次
・はじめに
・きっかけは、父の存在
・チャレンジすることの意義
・あくまでも裏方として選手を支える
(写真)競泳などが行われたパリ・ラ・デファンス・アリーナ近くにて
はじめに
ーー本日はインタビューのお時間をいただきありがとうございます。自己紹介をお願いします。
私は、大学卒業後、2005年に渡仏し、現在はパリでファイナンシャル・アナリストとして勤務しています。フランス人の夫と今年12歳になる娘と3人でパリ郊外に暮らしています。趣味は海外旅行とスポーツで、これまでアジア・ヨーロッパ、北米を中心に30カ国以上を旅行し、2017年より毎年パリ・フルマラソンに参加しています。
きっかけは、父の存在
ーーパリオリンピック・パラリンピックのボランティアに参加をしようと思ったきっかけを教えてください。
1964年の東京オリンピックの開会式、閉会式で父がプラカードを持って参加したことがあり、オリンピック・パラリンピックにはとても思い入れがありました。特に父が、ここ数年闘病生活を送っていたため、私がボランティアとして親子2代でオリンピック・パラリンピックに参加すれば、少しでも父の励みになるのではないかと思い、参加することにしました。また、私自身もスポーツが好きで、これまで大会に参加した際にはたくさんのボランティアに支えられ、今回は自身がボランティアとして、アスリートや観客また運営陣の助けになりたいと考えました。
チャレンジすることの意義
ーー今大会のボランティアの選考はとても倍率が高かったと聞きました。それでも応募しようと思ったのは何故ですか?
まずは、チャレンジをしたことに意義があると思い、応募を決めました。選考では、履歴書、志望動機書に加え心理テストなど、思ったより応募の際に用意するものが多く、オンラインでの面接もありました。結果的に選ばれて、とても嬉しかったです。
ーーボランティア活動はどんな内容ですか?
オリンピックとパラリンピックの2回の大会で活動をしました。
オリンピックでは、開会式前日から閉会式まで1日平均約8時間で3日従事し2日休暇というシフトで活動しました。オリンピック関係者の付き添いもさせていただき、パリ市内の色々な会場を回ることもでき、とても良い機会をいただきました。
パラリンピックは開会式のみの参加でしたが、2日の予行練習を含む3日間のみの活動で、光栄なことに、日本選手団と共に開会式会場に入場するという役割をいただきました。とても良い思い出となりました。
あくまでも裏方として選手を支える
ーー活動の前にインプットされたことや、研修など受けましたか?差し支えのない範囲で、内容を教えてください。
ボランティアが始まる前に、オンラインでの研修がいくつかありました。また、大会が始まる前に1日パリ市内での研修がありました。
オリンピックでは、オリンピック関係者の付き添いだったので、その方のバックグラウンドや、彼らが観戦するスポーツのルール、またその競技に参加する選手などを事前に調べて参加をしました。
ーーボランティアを通じて、何か気づいたことはありますか?
ボランティアの研修で、「あくまでもオリンピック・パラリンピックでのスターは選手たちであり、私達は裏方として彼らを支えることが活動の目的」という話がありました。まさにその通りで、いかにオリンピック・パラリンピックのスターたちを支えられるかに集中しました。ボランティアたちは出身国を問わず同じ考え方で活動に携わる人達が多く、言葉や文化的背景は違えど、すぐに仲良くなり同志として活動できたことは、何にも代えがたい経験となりました。多人種国家のフランスで生活しており、文化的背景による違いで新たな発見などは特に感じなかったのですが、逆に、各国から集まったアスリート、観客、ボランティアを含む関係者がオリンピック・パラリンピックという舞台において文化、宗教、制度的な違いを超え一つになっている様子が、とても新鮮で感動的でした。
ーー活動の中で、どのようにサポートしたら良いか迷うことはありましたか?
関係者のために予約してあったはずのハイヤーが来ず運転手との連絡もつかないなど、予想しないハプニングもたくさんありました。フランスは、日本のように事前に用意周到に準備するという習慣があまりなく、行き当たりばったりのところもあるので、戸惑う海外の参加者も多かったように思います。とにかく一人で抱えず、周囲とコミュニケーションを取り、最善と思われる解決策をその場で決めていきました。ボランティアの多くは、その点コミュニケーション能力が高く、とにかく誰かを助けることに積極的なので、お互いサポートし合って対応する姿勢は大変勉強になりました。
ーー今大会での心に残っている、思い出やエピソードなどあれば教えてください。
私もこれまでにマラソン大会などで健常者と障害者が一緒に走る場面を経験しており、障害のある方々が悠々と私を追い越していくのをみて、健常者が勝手に障害者の活動できる範囲を狭めるべきではないと身をもって感じています。しかしながら、どこまでサポートできるのか、どこをサポートすべきかといったところは、障害のある方によって異なりますし、ボランティアをする側にとっても判断は難しいところです。
パラリンピックの開会式での出来事ですが、今回の行動を共にしていた旗手サポートのボランティアだったフランス人女性は、旗手のアスリートへ負担を軽くする腰のベルトを付けなくて大丈夫かと何度も確認し、旗手のお二人は何度も穏やかにベルトの必要がないことを説明されていました。直接的ではありますが、終始お互いの優しさを感じさせるやり取りで、印象的でした。
日本では、交通機関での席の譲り合いやベビーカー、車いすに関する痛ましいトラブルのニュースを耳にしますが、このエピソードをみて、サポートする側もサポートされる側も何ができるか、何が必要かを遠慮なく口にできる心の余裕と環境が大切なのだろうと痛感させられました。
ーーまた同様の機会に参加したいと思われますか。また、その理由を教えてください。
ぜひまた参加したい気持ちと、この素晴らしい経験をまだ体験していない人にチャンスを譲りたい気持ちが入り混じっています。
ボランティア活動は、お祭りに参加するようないつも楽しい状況ばかりではありません。しかし、この経験は何にも代えがたい、そして可能であれば少なくとも人生で一度は経験しておくべき貴重な体験です。人生の貴重な1ページとなることは間違いありません。
パラリンピック開会式でのエピソードを伺い、「何が必要かを遠慮なく口にできる心の余裕と環境が大切」というフレーズが印象的でした。同様のことが、私たちの日常やほかの場面においても言えると思います。
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!