目次
・はじめに
・聴覚障害者への情報保障に関するアンケート結果
・企業に求められる、情報保障対応とは?
・まとめ
はじめに
情報保障に関する企業の対応について、業界別にお届けします。聴覚障害者へのアンケート結果とともにお伝えしますので、どのように情報保障を取り入れたらよいのかお悩みの方や検討されている方は、ぜひご一読ください。
第7回ではテーマパークや遊園地への情報保障についてご紹介します。
※第1回記事「聴覚障害者を取り巻く状況の変化と、企業に求められること」
※第2回記事「水族館・動物園など」に求める情報保障
※第3回記事「旅行・交通など」に求める情報保障
※第4回記事「美術館・科学館・博物館など」に求める情報保障
※第5回記事「イベントなど」に求める情報保障
※第6回記事「エンタメ分野など」に求める情報保障
以下は、116名の聴覚障害者に聞いたアンケート結果です。
聴覚障害者への情報保障に関するアンケートの結果
Q聴覚障害者に「テーマパークや遊園地」への情報保障 (例:キャラクターショー・パレード・アトラクションなど)があれば、どう思いますか?
上記のように、約半数の50.86%の人が、情報保障があれば嬉しいと答えています。その一方で、興味がないと答えている方が約2割(18.97%)もおられました。
回答の中には、「アトラクションでスタッフがお話ししてて観客が笑ってる、 そういうところがいや」と、耳が聞こえないために自分だけ話がわからなくて参加ができないことに寂しさや苛立ちを感じておられる方もいるのです。
そのような方を一人でも減らして、笑顔で楽しんでいただくために、どのようなことができるのでしょうか。
Qどのような情報保障があると嬉しいと思いますか?
流れてくるアナウンスや説明が何を言ってるか分からず困る事がしばしばあるので、文字起こしができる機器を貸出してくれれば嬉しい。
ステージは多少アドリブなどもあるが、毎回ほぼ同じ内容なので字幕表示されるスクリーンの設置などがあればうれしい。 (同時に英語などの翻訳もできれば海外の方にも便利)
アトラクションが中止になりましたという放送を文字でもあってほしい。
キャラクターやキャストの話していることが分かると嬉しい。
入口でスマホをかざすと説明等がわかる手話動画や文字案内があれば良い。
スマホでガイドの話す内容が分かるようになってほしい。
緊急時の避難なども、文字情報などがあるとわかっていれば安心できる。
テーマパークや遊園地において求められる、情報保障対応とは?
あるテーマパークでのエピソードをご紹介します。
テーマパークに家族と行った時のことです。キャスト(テーマパークなどで説明や導入部分の話をする案内人)が笑顔で話しかけてきました。
でも、なにを言っているのかがわかりません。聴覚障害のある両親と姉は、聞こえる妹(小学生)を見ます。すると、妹が手話で家族にその内容を伝えます。
次に、アトラクションの入口でもキャストが話しかけてきました。家族は、また妹を見つめます。妹は「私が伝えないといけない」と通訳をします。そうした場面が重なり、妹の表情から段々と笑顔が減っていきました。聴覚障害の親は、そんな娘に対してありがたいと思う反面、申し訳ない気持ちになったといいます。
この話を聞いて、どう思われますか?
聴覚障害の家族がいるのだから聞こえる家族が伝えればいいという問題なのでしょうか。でも、妹はまだ小学生です。本来は、家族と一緒にただ楽しく過ごしたいだけなのに、自然と通訳を求められてしまっているのです。こうした課題は、個人だけの責任で解決をしていくのではなく、社会全体で取り組んでいくことが求められます。
まずは、自社でできる工夫について
現場でのアナウンスは、できるだけ文字に書いて表示することも併せて行う。
受付では、コミュニケーションボードなど、指差しで確認ができるものを用意する。
いつでも筆談ができるように準備物を携帯する。
ただ、上記の対応のみで、聴覚障害者が満足できるかというと十分ではないかと思います。聴者と同じように楽しんでいただくための方法をご紹介させていただきます。
お客さまとのコミュニケーション力を高めるために、手話講座を開催する。
ショーなどでは、文字情報を確認できるような音声を文字化する機器やシステムを導入する。
コミュニケーションボードや筆談、音声認識アプリ、遠隔による手話通訳サービスなどの準備を行い、リアルタイムでコミュニケーションをとれるようにする。
アトラクションの注意や楽しみ方の説明に、手話による説明動画を作成する。
手話通訳付きのツアーなどのイベントを実施する。
まとめ
聴覚障害のある方への対応について考えることは、実はより広い視点での「誰もが楽しめる空間づくり」にもつながります。
たとえば、耳が少し聞こえにくくなった方にはどうだろうか?ご高齢の方や、小さなお子様にはわかりやすいだろうか?外国から訪れるお客様にも、十分に伝わっているだろうか?
こうした多様なお客さまへの配慮に思い至ることができれば、より多くの方にとってやさしい、インクルーシブな場所づくりが可能になります。
テーマパークや遊園地は、お客さまが家族や友人と楽しい思い出を作り、笑顔になっていただきたいと願っている場所だと思います。だからこそ、スタッフが用意したアトラクションやおもてなしの心が、誰にとっても届くように、「伝わる配慮」を私たち自身も一緒に考えていくことが大切ではないでしょうか。
また、災害時などの緊急アナウンスは、どうしても聞こえる人が早く情報をキャッチすることになります。東日本大震災の際、ある自治体では職員が防災無線で、「周りに聞こえない方や聞こえにくい方がおられたら、情報が届いていないことが考えられます。ぜひ、知らせてあげてください」と呼びかけたそうです。これは、その職員の自主的な配慮によるものでした。このような「ソフト面での配慮」は、特別な設備がなくても、今すぐに始めることができます。気づき、声をかける。その一歩が、誰かの安心と笑顔につながります。
今回のアンケートの結果からもわかるように、聴覚障害のあるお客さまからの情報保障のニーズは高く、2024年4月のからの改正障害者差別解消法施行をふまえて各企業から、現地または遠隔による手話通訳や文字通訳のご依頼、業務上使える手話講座のご相談をいただく機会が増えています。
ミライロ・コネクトでは引き続き、さまざまな場面において手話でコミュニケーションがとれる社会を目指します。テーマパークなどでの文字による情報保障をご希望の方はどうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせ先
ミライロ・コネクト事業
メール:connect@mirairo.co.jp